ゲームを始めたはずの私は、なぜか異世界で勇者《最弱職》になりました

二章 ダンジョン探索は冒険者のロマンでしょ？

ダンジョンドラーズ、ハラハラドキドキ探索！ 46

　声から判断するに、女の人で間違いない。
　なんとも言えない恐怖が、不安が、私の心を襲う。
　そして、その感情はだんだんと増大し、最終的に感情が麻痺する。

「あら、どうしました？　私はただ話しかけてみただけなのですけど……。せめて、こちらの方を見ていただけませんか？」

　とても、冷え切った声がする。
　怖い。殺されそうな気がして、そっちを見ることができない。
　どうして、話しかけてくるの。なんで、私のところに来たの。
　いや、その理由は話してたな。
　待ちくたびれたから。
　それじゃ、部屋の中のことと関係がある？　それなら、私は氷漬けにされるってこと？

「私を見てくれなくてもいいですけど、せめてお話ぐらいしてくれませんか？」

　まだ諦めてない様子で、意思疎通をとろうとしてくる。
　どうして私なのさ。いや、私しかいないからか。
　そんなことを思ってると、急に寒気がする。
　いや、寒気というより、冷気が私の肌まで近づいてきてる。
　それはきっと、彼女の手で間違いない。
　そして、それは私の手に──。

「冷たっ！」

「よかった。意識はあるのですね。さて、私と話せますよね」

　少し手が凍ったのではないかと思うぐらい、それは冷たかった。

「はあ、また黙だんまりですか？」

　短いため息が聞こえてきた。

「いい加減にしろよ」

　それには苛立ちを感じた。