ゲームを始めたはずの私は、なぜか異世界で勇者《最弱職》になりました

二章 ダンジョン探索は冒険者のロマンでしょ？

なぜか、喫茶店でバイトすることになりました6

「シズクさんですか？」

　マリアは振り返ることもなく、私であることを当てた。
　それに少し疑問を感じる。
　けど、この場所に来るのは、そこに誰かがいると思ってないと来ないような場所だから、きっと、それでわかったのかもしれない。

「私だってよくわかったね、マリア」

「この場所に気づけるのは、二人しかいないでしょうから。そうですよね、シズクさん」

「だね。宿にこんな場所があるとは思わないよ」

　そこは、月明かりも届かない、木々の生い茂る宿の裏。
　そこに、マリアはいた。
　けど、問題はそこじゃない。
　ここは、なんらかの魔法で隠されていた。
　それに、私ではなくうさちゃんが気づいた。
　そして、宿の女将さんと仲のいいマリアは、もちろんそれを知ってておかしくない。
　だから、私はマリアがここにいると思った。
　誰にも邪魔されない、この場所に。

「さきほど、すでにサティーさんが来ましたから」

「えっ……？サティーもこの場所に気づいたの？」

「先ほど、二人と言いましたよ～」

　確かに、そう言っていた。
　けど、その二人とは、私とうさちゃんの、二人を指しての言葉だと思ってた。
　だから、まさかサティーが、それに気づいているだなんて、思いもしてなかった。
　だから、私はその事実に驚いてしまった。