ゲームを始めたはずの私は、なぜか異世界で勇者《最弱職》になりました

二章 ダンジョン探索は冒険者のロマンでしょ？

喫茶店に行ったはずの私は、なぜか現魔王と会いました18

「どうしようかしらね～」

「いや、助けてよ！私は困ってるんだよ！」

「ふ～ん」

　私は、まだ少し熱さの残る太ももをさする。

　私に紅茶をかけてしまった店員は、大急ぎで店の奥に引っ込んで、まだ出てこない。

「シズ、私の頼みを一つ聞いてくれたら、シズのお願いも聞いてあげるわよ？」

　今の状況をしっかりと理解していないマギアは、私に交換条件のようなものを出してくる。

「へー、マギアって、そういうことするんだ」

　私は一言だけそう言って、マギアの方を見て、ニコリと微笑む。
　そんな私に、マギアはわけがわからないという反応をみせた。

　そんなことをしていると、奥に引っ込んでいた店員さんが、上司と思われる店員さんと一緒に出てきた。

「この度は、申し訳御座いませんでした......！洋服の方は──」

「別に、構いませんよ。だって、わざとじゃないでしょ？それじゃ、しょうがないですよ」

「本当ですか......！」

「そのかわり、あの子とお話させていただけませんか？」

　一瞬、相手はよくわからないというような反応を見せるが、その程度のことでいいならと思ったのか承諾してくれた。
　その話を、隣で怯えるようにして、失態をおかした店員さんは見ていた。

　だから、私は柔らかな優しい笑みで、彼女に微笑んだ。