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一章
妹からの手紙
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俺は家に帰ってくる。
今日はいつもよりも、なんか疲れたような気がする。それは、久しぶりの学校だったからなのか、体育があったからなのか、それは定かではない。
それでも、学校にいる間は、学校にいた間は、一人で家にいるよりも、ただただ引き籠もってるよりも、楽しかった。
そして、俺はふとそれに気づく。
家を出たとき、学校に行くときにはなかったその存在に。
玄関の郵便受けには、真っ白な封筒があった。
いったい誰から届いたものなんだろうなんて思いながら、それを取り出す。
そんなとき、ピトッと一粒の雫が手に触れる。
そして、ピトピトとそれは増えていく。
雨だ。雨粒だ。雨が降ってきた。だんだんと雨足は強まっていく。
そんなわけで、急いで家に逃げ込む。
真っ白な封筒は少しだけ濡れたけど、実質的な被害は出なかった。
とりあえず、弁当を洗ったり、荷物の片付けもそこそこに、俺は封筒を開けることにする。まさに、開封。
それにしても、これは誰からの手紙なのだろうか。封筒には名前も、宛先も、送られてきた住所も、何一つ書かれていなかった。情報の何一つもがなかった。
ちょっとだけ、少しだけ、不気味で、怪しいような気がする。
まあ、可能性としては、知り合いから送られてきた手紙と考えるのが無難であり、普通だろう。
とりあえず、とにもかくにも、中身を確認するべきだと思った。確認しなきゃいけないと思った。
そんなわけで、中から便箋を取り出す。
便箋は全部で二枚で、そこに書かれていた名前は、まごうことなき俺の妹である、柊彩華の名が書かれていた。
そしてそんなとき、外の世界の雨足はより強まっていく。家の中からでも、ザーザーと雨の降る音が聞こえてくる。
そんなわけで、俺は手紙を読み始めることにした。
そして、そこにはこんなことが書かれていた。
お兄ちゃんがこの手紙を読んでいるとき、私は記憶喪失してるでしょう。
私の記憶喪失には■■■■■が関わっていますが、その人ことは恨まないでください。このことは私が望んだことだから。全て私が望んだことだから。
そうだお兄ちゃん。
私ね、実は、お兄ちゃんのことが大好きでした。とっても大好きでした。お兄ちゃんにいつも当たってたのは、好きだったが故のことでした。ごめんなさい。
でも、お兄ちゃんのことが好きだったのは本当です。
それと、私の記憶喪失のことも少し話したいと思います。
私の記憶喪失は、一応一時的なものだと、■■■■■は言ってました。なので、たぶんそのうち記憶を取り戻すと思います。
だから、お兄ちゃん。今の私と仲良くしてね。喧嘩とか、しないでよ? 私のときと同じように接してあげて。お兄ちゃんらしく。
それと、今日のこと、ごめんなさい。私の勘違いだったんだよね。
途中途中、文字を黒く消されていて読めないところがあった。それでも、そこには美しい文字でそう書かれていた。
妹が、彩華が、俺のことを好きだなんて、にわかには信じられなかった。
けれど、そこに書かれてあったことは、本当に妹が書いたんだと、なんとなくそう思えた。なんの根拠もなしに。なんの理由もなしに。
ただただなんとなく、感覚的にそう思えた。
ふと、そんなときに、俺の目元から雫が流れ落ちた。家の中なのに雨でも降ってるのかな? なんて、馬鹿なことを思いながら上を見たけど、そこには天井だけがあった。
だから、否応なしにでも気づいてしまった。
これは雨でも、雫でもなく、涙だってことに。
俺は泣いていた。声一つ出さずに泣いていた。
その涙が嬉しさからなのか、悲しさからなのか、俺にはわからなかった。わからなかったけど、なんとなく両方のような気がした。
そして、そこでふと思い出す。
便箋は二枚あった。そんなわけで、もう一枚の便箋を見ると、それはただ真っ黒に塗られていた。
その日、俺はベッドに入ってもぼんやりと眠れなかった。けど、それでも嫌な気はしなかった。
今日はいつもよりも、なんか疲れたような気がする。それは、久しぶりの学校だったからなのか、体育があったからなのか、それは定かではない。
それでも、学校にいる間は、学校にいた間は、一人で家にいるよりも、ただただ引き籠もってるよりも、楽しかった。
そして、俺はふとそれに気づく。
家を出たとき、学校に行くときにはなかったその存在に。
玄関の郵便受けには、真っ白な封筒があった。
いったい誰から届いたものなんだろうなんて思いながら、それを取り出す。
そんなとき、ピトッと一粒の雫が手に触れる。
そして、ピトピトとそれは増えていく。
雨だ。雨粒だ。雨が降ってきた。だんだんと雨足は強まっていく。
そんなわけで、急いで家に逃げ込む。
真っ白な封筒は少しだけ濡れたけど、実質的な被害は出なかった。
とりあえず、弁当を洗ったり、荷物の片付けもそこそこに、俺は封筒を開けることにする。まさに、開封。
それにしても、これは誰からの手紙なのだろうか。封筒には名前も、宛先も、送られてきた住所も、何一つ書かれていなかった。情報の何一つもがなかった。
ちょっとだけ、少しだけ、不気味で、怪しいような気がする。
まあ、可能性としては、知り合いから送られてきた手紙と考えるのが無難であり、普通だろう。
とりあえず、とにもかくにも、中身を確認するべきだと思った。確認しなきゃいけないと思った。
そんなわけで、中から便箋を取り出す。
便箋は全部で二枚で、そこに書かれていた名前は、まごうことなき俺の妹である、柊彩華の名が書かれていた。
そしてそんなとき、外の世界の雨足はより強まっていく。家の中からでも、ザーザーと雨の降る音が聞こえてくる。
そんなわけで、俺は手紙を読み始めることにした。
そして、そこにはこんなことが書かれていた。
お兄ちゃんがこの手紙を読んでいるとき、私は記憶喪失してるでしょう。
私の記憶喪失には■■■■■が関わっていますが、その人ことは恨まないでください。このことは私が望んだことだから。全て私が望んだことだから。
そうだお兄ちゃん。
私ね、実は、お兄ちゃんのことが大好きでした。とっても大好きでした。お兄ちゃんにいつも当たってたのは、好きだったが故のことでした。ごめんなさい。
でも、お兄ちゃんのことが好きだったのは本当です。
それと、私の記憶喪失のことも少し話したいと思います。
私の記憶喪失は、一応一時的なものだと、■■■■■は言ってました。なので、たぶんそのうち記憶を取り戻すと思います。
だから、お兄ちゃん。今の私と仲良くしてね。喧嘩とか、しないでよ? 私のときと同じように接してあげて。お兄ちゃんらしく。
それと、今日のこと、ごめんなさい。私の勘違いだったんだよね。
途中途中、文字を黒く消されていて読めないところがあった。それでも、そこには美しい文字でそう書かれていた。
妹が、彩華が、俺のことを好きだなんて、にわかには信じられなかった。
けれど、そこに書かれてあったことは、本当に妹が書いたんだと、なんとなくそう思えた。なんの根拠もなしに。なんの理由もなしに。
ただただなんとなく、感覚的にそう思えた。
ふと、そんなときに、俺の目元から雫が流れ落ちた。家の中なのに雨でも降ってるのかな? なんて、馬鹿なことを思いながら上を見たけど、そこには天井だけがあった。
だから、否応なしにでも気づいてしまった。
これは雨でも、雫でもなく、涙だってことに。
俺は泣いていた。声一つ出さずに泣いていた。
その涙が嬉しさからなのか、悲しさからなのか、俺にはわからなかった。わからなかったけど、なんとなく両方のような気がした。
そして、そこでふと思い出す。
便箋は二枚あった。そんなわけで、もう一枚の便箋を見ると、それはただ真っ黒に塗られていた。
その日、俺はベッドに入ってもぼんやりと眠れなかった。けど、それでも嫌な気はしなかった。
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