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下される残酷な命令
しおりを挟むユーディアの城下町に連れ出されたリュカは、活気に満ちあふれた雰囲気に気圧されていた。
魔王との戦いが激化しているとはいえ、未だにこの国が侵略を許していないのは、民が一丸となって国を守る意志を貫いているのだと感心する。
すっかり周りに気を取られていたリュカだったが、腕を引っ張るディランの手に我に返った。
ローブのフードを目深に被らされてはいたが、かろうじて視界に彼の後ろ姿を捉える事はできた。
魔族である彼の後ろ姿を見つめ、改めて長身で逞しいと思うと心臓がうるさくなる。
――ディランは私をどうするつもりなのだろう。
言うことを聞かない家畜には仕置きが必要だ。
そんな意図を感じて気持ちが落ち着かない。
リュカはとうとう城内にまで連れて行かれ、現国王――魔族の主でもあるクロヴィスの前に突き出されてしまった。
寝室に堂々とやってきた部下を見て、王は寝台の上であぐらをかき、口端を釣り上げる。
その隣では白濁まみれの青年が虚ろな目で四肢を震わせていた。
王の妻であり性奴隷でもあるリアムだ。
リュカとは違い、その慈愛で神官の力を復活させ、汚れた肉体であるにも関わらず、神官である事を認められている。
先ほどまで激しく抱かれていたのであろう。
その表情は快楽にとけきっていた。
「どうした、俺の寝室まで押しかけてくるとは、そいつが何かしでかしたか」
「はい。こいつを躾けたいと思いまして」
「ほう?」
二人の会話にリュカは息を飲む。
どうやら王は興味津々の様子だ。
「で? 何をやりやがったんだリュカ」
「わ、私は何も」
「くろう゛ぃすう」
甘ったるい声を発したのは、王の肉体に四肢を絡ませて頬をすり寄せているリアムだった。
リュカを見て目を見開くとみるみるうちに頬を染めていく。
どうやら夢見心地から目を覚ました様子だ。
今更恥ずかしがる間柄でもないのに、リアムは王の背中に隠れようとしてその身を引っ込める。
「こ、こんな時にどうして会うの!?」
「ディランの野郎の目が血走ってやがったからなあ、お前の大切な神官様を調教したいらしいぞ」
「え?」
困惑した声を上げたリアムが、そっと王の背中から顔を出す。
その瞳と視線があってリュカは口角を少しだけ上向かせた。
リアムが何か言いたそうに口を開けた時、言葉を吐き出したのはディランだった。
「この男は神官でもなんでもありません。ただの淫乱な雄です」
「……っ」
やはりディランは怒っている。
リュカについて、自分が留守をしている間にオーク達を連れ込み、性交に耽った事を怒気がこもった声音で王に伝えた。
「なるほどなあ。お前嫉妬してるのか」
「そうじゃありません、こいつが俺の主人なんです、家畜が主人を裏切るような真似をしたとなれば、躾をするのは当然です」
静かな話し方だが、一つ一つの言葉に憎悪さえ含まれているのが感じ取れた。
彼と一番長くいるリュカだからこそ分かるのだ。
リュカは唇を噛むと視線を落とす。
――いったい、どうすれば。
彼を裏切るつもりなんてないのに。
「リュカ様」
リアムの心配そうな声に刺激を受け、リュカはそっと唇を開くと、勇気を振り絞って思うままに吐き出した。
「私は、ディランを……愛しています……ですから、彼を、裏切るつもりなんてありません」
「……ならば、何故他の男相手に身体を開き、悦がり狂うんだ」
「それは………」
リュカは顔を上げてディランの目をまっすぐに見つめる。
そうしなければ、信じて貰えないと思ったからだ。
だが、彼の目には怒りと憎しみが込められ、リュカの心を恐怖と悲しみで満たしていく。
「そんなの、この性奴隷の野郎だって同じだけどな? まあ、リュカ、お前は主にディランに蹂躙されたからなあ。ディラン、お前は気にくわねえか」
嗤い声を上げる王は、実に愉しそうに見えてリュカは嫌な予感に支配される。
「ならば、試せばいいじゃねえか」
「何を」
ディランの問いかけに王は不適に嗤う。
「こいつのお前への忠誠心と愛を」
「どういう意味です」
「兵士と戦士どもの相手をさせて、快楽漬けにされてもお前への愛を失わなければ、リュカを受け入れてやれ」
リュカは息を飲んで絶望的な気分に陥る。
――王は、何を考えて……。
「クロヴィス! そんなの駄目っほう!? ほおおおっ♡」
両足を大きく開かれ、ズンッ! という音がするくらいに、勢いよく王のイチモツを後孔に突き入れられ、リアムが四肢を踊らせて大きな喘ぎ声を上げた。
王は舌なめずりをして腰を激しく動かし、奴隷妻を犯し続ける。
「奥の部屋を使わせてやる、そこにリュカを監禁しろ……さっきまでさんざん突っ込んでやったってのに、すごい締め付けだな、リアム」
「ほおっんほおおっ♡ い、いまあっだめえっ♡ あおおおっ♡」
寝台が軋む音と二人が乱れる卑猥な声、呼吸音が部屋の温度を急激に高めていく。
「分かりました陛下」
「そ、そんな」
リュカは口元をおさえて混乱して頭痛を覚えた。
王の理不尽な命令に従う愛する男の言葉に、リュカは悲しみに打ちひしがれた。
「来いリュカ」
「いや、いやで……」
「今更もう遅い!」
胸ぐらを引っつかまれ、無理矢理王の寝室から引っ張り出され、廊下に放り出される。
膝ががくがくと震えだし、恐怖で身体が動けなくなった。
扉が重苦しい音を立てて閉められるが、中から二人が弄り合う音が聞こえてくる。
その声が二人が愛し合っているのだと実感させて、リュカは恐怖に怯えながらも、どこかうらやましいと感じていた。
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