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9愛を受け止めると誓った日
しおりを挟むアラスタス、エグバート、イールを自ら求め、たっぷりと肉欲と快楽を満たしたヴァレオは、一人目を覚ますと、罪悪感に苛まれる胸の痛みを感じながら部屋を後にした。
大浴場には誰もいなかったので助かった。
身体を洗うと大きく息を吐いて胸元に両手を当ててみた。
――心臓が穏やかに脈つのを感じる。
ヴァレオは騎士としての正装に身を包み、大神官の元を訪ねる事にした。
大神官は通常国の端に設けられている神殿にて過ごしているが、ヴァレオ達を見守る為に城内に特別な居をあてがわれている。
陽光がよく降り注ぐ上階の東側の部屋の扉を叩くと、中から返答があり、そっと内側に開かれていく。
白いローブに身を包んだ初老の男が、頬を緩めるとヴァレオを招き入れてくれた。
「失礼致します」
「珍しいですな。ヴァレオ殿」
「はい。実はお話がございまして」
「ほう?」
部屋の中心に置かれた卓を挟み、向かい会って座ると、お茶に口をつけつつ話を切り出す。
「例の件ですが」
「ああ……確か、ヴァレオ殿は拒絶されたとか?」
「そ、それなのですが……私は先ほど、彼らを自ら求めてしまいました」
「ほう?」
「そ、それで……こんな事が赦されるのかと怖いのです」
言葉に紡いでみてようやく己の気持ちが分かった気がした。
つまり、ヴァレオはずっと罪悪感と恐怖に押し潰されそうだったという事だ。
こうして大神官の目を見て話していると、不思議と心が落ちついてくる。
大神官は口を開くと、この国の成り立ちについて話始めた。
淫魔と一人の青年が恋に落ちて、闇の存在から人々を守り抜き、この国を作り上げた物語を……その為、性に奔放なのはお国柄であり、一夫多妻制やその逆も認めているし、どんな愛の形も受け入れるのが正しいのだと民は信じているのだと。
昔習った国の歴史を改めて知ると、不思議な気持ちになってくる。
子供の頃は忌むべき国の汚点だと思い、騎士となって正さなければと考えていたのに……嫌悪感が消えていた。
ヴァレオはお茶を飲み干して、大神官に顔を向けて意志を伝える。
「私は、彼らの愛を受け入れようと思います」
「ほう」
「正直、まだ私の心が彼らを愛しているのかははっきりと分からないのですが、どうにも離れがたく……何よりも大切な人達なのです。ですが……」
「お世継ぎについてかな?」
「……はい」
やはり大神官も懸念しているのだろう。
男が子を成す方法があると噂で聞いたことはあったが、果たして事実であるのかは定かではない。
ふいに腰を上げた大神官が、ヴァレオの傍に歩み寄り、肩に手を置いて微笑んだ。
「私にお任せください」
「大神官様?」
「陛下に直接お話いたします」
どうやら術を知っている様子だ。
ヴァレオはまっすぐに大神官の目を見つめて頷いた。
その後、王間にてアラスタスと大神官が話し合う姿を、後方で見守っていたヴァレオは、話し終えた二人に手招きされて歩を進める。
アラスタスがヴァレオを見つめて、その青い瞳を湖面のように揺らす。
「本当にいいんだな?」
「はい。もう決めました」
「……そうか。嬉しいぞ」
「では、陛下」
「そうだな。早速準備を整えよう」
「はは」
大神官が頭を垂れて王間から出て行くと、アラスタスに抱きしめられて大きく息を吐き出す。
鎧越しでもアラスタスの温もりが伝わり、胸がきゅんとしめつけられた。
「陛下」
「お前と私の子を成せるのがとても嬉しい。しかしだな」
「はい」
ヴァレオはアラスタスの口から聞いた〝男が子を成す方法〟について驚愕して声を上げた。
その方法とは、特殊な触手によって体内に卵を植え付ける形なのだという。
だが、男が子を成せるのは一度きり。
今回相手が三人いるため、三人の子種と魂の情報、そしてヴァレオの肉体を使って一人の子を成す為、触手の寝台にて十分な量の三人のザーメンを浴びて、さらにそのザーメンを飲んだ触手と三日三晩まぐわい、ヴァレオの体内に卵を宿すというのだ。
命が脅かされるのではないかという疑問については、大神官によって守護の紋を施す為、ザーメンが栄養となり、食料や水分をとらなくても健康的に生きながらえるという。
だが、ヴァレオの疑問は尽きない。
「卵の中に宿るのは本当に人の子なのですか?」
「もともとは淫魔であった初代の妃が編み出した術式だが、記述によればどんな種族の子でも産み落とせたとある」
「……人間ではない可能性がありますね?」
「ま、まあ、オーガ王の子種と魂の情報も使うからな。仕方があるまい」
「陛下は、産まれてきた子がどんな姿形でも、愛せるという自信はおありですか?」
「もちろんだ! 産まれた子はオーガ王の子でもあるのだ。すなわち、我らの国とオーガの国は一つとなり、さらに国は発展する! まさに架け橋となる子なのだぞ?」
「確かに、そうですね」
「エグバートとイールにも伝えねばな」
「はい!」
触手との交わりについて不安は残るが、三人の愛を受け入れると決意したのだ。
子を成してみせると誓った。
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