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新たな道へ

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 ルナンはアンデルに寝台に引きずり込まれ、抱きついてくる彼に口づけをせがまれた。
 仕方なく大人しくしていると、唇をそっと重ねられた。
 柔らかく、あたたかな何かが身体中に流れ込むのがわかる。
 首輪が砕けたのが分かった。

 ――こ、れは……?

 力がみなぎる……ルナンは、己の生気だと直感して、目を見開き、アンデルを見据えた。
 アンデルは苦笑を浮かべている。

「……え、これは?」
「いくら誰かの生気を吸い尽くしたって、僕にはもう長く生きる力なんて残されてないさ」 

 ルナンは、アンデルの態度の豹変と言葉に息を呑み、寝台から身体を起こして問いかけた。

「どういう事!? き、君は俺の命を貰うって……っ」

 ルナンの質問に、アンデルは無言で首を横に振る。
 それを見たルナンは、慌ててヴァロゼを呼びに寝室から走り出たが、ヴァロゼを連れて寝室に戻った時には、彼は息を引き取っていた。


 後日、アンデルの遺体を火葬し、ルナンはヴァロゼと共に王の間に閉じこもった。

 おもむろにヴァロゼが、アンデルとの思い出を語り始め、ルナンは耳を傾ける。

「俺が一方的にあいつを愛していたのは、事実だ」
「……でも、俺にはアンデルがヴァロゼを愛していたように見えたけど」
「どうだろうなあ。結局、何も言わずに勝手にいきやがった」

 ルナンは、瞳を伏せて問いかけた。

「これからどうするのか、考えてるの」
「……お前は、ここにいろ。人間達の事は、考えてやる……」
「うん……?」

 肩を抱き寄せられ、額に口づけられる。
 ルナンはヴァロゼの背中に腕を回し、身を擦り寄せた。

 ――ああ……ヴァロゼの鼓動、心地良い……!

 ルナンは愛しい男の温もりを感じて、嗚咽を漏らした。

 魔族と人間は、魔族優位な状況ではあるが、共存の道を歩き始めた。

 ルナンは、ヴァロゼと一緒に、ヴェルターとラントを訪ねる為、城を後にした。

 エルレイルはトルステンとふたり暮らしを始めた為、心配ではあるが、しばらく放って置く事にした。

「ルナン、行くぞ」
「うん」

 伸ばされたヴァロゼの手を取り、ルナンは微笑んで頷く。

 これからの日々を想い、胸が熱くなった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

うめ
2021.04.16 うめ
ネタバレ含む
彩月野生
2021.04.18 彩月野生

お読みくださってありがとうございます(〃^ー^〃)
楽しんでいただけたようで大変嬉しいです!!
なかなか更新できてませんが、またお読み頂けますと嬉しいです!

解除

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