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燃え盛る想い

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「陛下が好きなお酒です」

 玉座に座る王に盃を恭しく差し出せば、薄く笑み、受け取って下さる。
 ルシードはその姿を見られるだけで嬉しかった。
 二人きりで王の間にこもっていた。
 間もなく城の門の結界を、兵士と民が突き破り、悪意の塊となって襲い来るであろう。

 王は盃の中身を飲み干すと立ち上がり、ルシードに笑いかける。
 我が王の鎧姿は、まさに戦神のごとき気高さである。

 ルシードも鎧を纏っており、今だけは奴隷ではなく、王の立派な側近として傍らに在った。

「俺の魔力を込めた剣技ならば、どれほどの束になってかかって来ようが、蟻同然だ!!」
「はっ」
「ルシード、お前は、俺、の……!?」

 王の言葉はだんだんと辿々しくなり、ついには膝をついて蹲った。
 ルシードは背後で唇を噛み締め、王が静かになるのを待つ。
 やがて、王が動かなくなったのを確かめてから、そっと扉に歩み寄り、外で待機している者達に呼びかける。

「王を頼むぞ」
「……ルシードさま」

 彼らは、王を未だに擁護する少数派の者達であった。
 ルシードは皆に深く頷くと、担がれる王の耳元に囁いた。 

「どうか、お元気で……」

 溢れる想いが濁流のようにこみ上げてくるが、強き意思で抑え込み、拳を震わせる。
 ルシードの顔は歪み、悪魔のようだと彼らを怯えさせたであろう。
 遠ざかる彼らと王を見送り、扉を開けはなったまま、押し寄せる悪意達を迎え討つ。

「愚かな王よ!!」
「覚悟おおおっ!!」
「私は王ジェレンスの側近ルシードである!! 逃げも隠れもせん!! 来い!!」
「奴隷めが!!」

 罵詈雑言と怒声を浴びせられ、無数の男達が剣を振り上げて襲いかかってくる。
 ルシードは何度か剣身をぶつけ合うが、鎧越しに腹を勢い良く殴りつけられ、胃液を吐き出して悶絶した所を、殴られまくる。

「奴隷があっ!!」
「うぐっ」
「変態め!!」
「元はと言えば!! お前が元凶だあ!!」
「がはっ」

 鈍い音と共に殴られる四肢が、痛みに悲鳴をあげた。
 悪意は燃え盛る焔のようにルシードの身を焦がしていく。
 息も絶え絶えとなり、意識が朦朧としていたら、己はいつの間にか裸体をさらけだしているのだと知り、絶望的な気持ちに陥る。
 獣達は涎を垂れ流して、ルシードを見据えていた。

 ――ああ……欲情に支配された、愚者の目だ。

 誰かが、めちゃくちゃに犯してやるぞ、と叫び、それが合図となった。

 口と尻を肉穴として扱われ、ただの性処理道具と化す。
 凄まじい勢いで何本もの肉棒が、喉奥と腹奥をどつきまくり、熱い汚濁で満たし、体内を汚していく。

「あぶおっんぶぶっ……むぐぐうっ」
「ハッ見ろよ! 無理やりされてるのにおっ勃ててやがる!」
「流石あの性欲魔人の奴隷だなあ!!」
「イイ具合だぜえ!」

 ルシードは、獣達が嗤う声よりも、王の為だけの肉体だと、誓った想いを穢された事実に憤怒していた。

 ――私の……からだはあっ陛下のものだあ!!

 ブヂュリッ!!

「ぎゃああああっ」
「血が!!」
「こ、こいつ! チンポ噛みちぎりやがった!!」

 喚き散らす獣達に向かって、ルシードは怒気を込めて言い放った。

「私の身体はあっ陛下、だけのものだあ!! これ以上っ触れるのはっ赦さん!! さっさとっ私を殺せえ!!」 

 つい先程まで、蹂躙されるだけだった哀れな生贄が、怒りで息を吹き返した。
 獣達の目から欲望の色が消えて、わずかな恐怖の色が浮かび上がっていた。
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