異世界転移した男子高校生だけど、騎士団長と王子に溺愛されて板挟みになってます

彩月野生

文字の大きさ
上 下
25 / 29

25騎士団長様の試練!

しおりを挟む
 ソファーで三人座って眠っていたら、嘶きに目を覚ます。
 寝ぼけ眼で起き上がったシンヤは、窓から庭を眺めて仰天する。

「き、騎士!?」

 騎士は兜を脱ぐと、頭を下げて挨拶をした。

「失礼致します! 私はニコラッドと申します!」
「え、あ……はあ……」

 茶髪の青年は、副団長であり、団長に言伝があると訴えている。
 シンヤはブライアンに呼びかけようとしたが、既に身なりを整えて、屋敷から庭へと出ていた。

「団長!」
「ああ。こんな所にまですまないな」
「いいえ。陛下のご命令をお伝えに……」

 ユリアムがブライアンの後方から姿を現すのを見て、ニコラッドは跪いて頭を垂れた。
 ユリアムは彼から話を訊いて、立つように命令した後、シンヤとブライアンに告げる。

「ブライアン、お前に父上が試練を与えるそうだ」
「はい」
「え」

 試練という単語に嫌なものを感じて、生唾を飲んだ。
 ユリアムがブライアンに話す試練の内容とは――胎の修復をする為に、特別な樹液が必要なので、ダークエルフ国の森の最奥から取ってこいというものであった。

 ブライアン父が用意するという進言を、王は受け入れなかったらしい。
 ブライアンは快諾すると、早速支度を整え始めてしまう。

 成功したら、シンヤと子を成すことを認めて、結婚の解消もしなくて良いというのだが、その樹木は魔獣が守っているというので、心配になる。

「ブライアン様」
「シンヤ、必ず樹液を手に入れて戻るよ」
「でも! 魔獣が……」

 頭を撫でられて、微笑まれ、口を閉じた。

 ――この人の性格なら、止めても行くよな。

 鎧を着込み、準備を整えたブライアンは、庭に出て、ペガサスに跨がる。
 皆に顔を向けて声を上げた。

「では!」
「気をつけて下さい! ブライアン様!」
「団長、お気をつけて!」
「ユリアム様、シンヤをお願い致します!」
「言われなくても!」

 ペガサスは嘶き、空高く舞い上がると、優雅に羽ばたいて瞬く間に遠ざかっていった。

 ――ブライアン様……!

 シンヤとユリアムは、この隠れ家に残り、ブライアンの帰還を待つことになった。

 ユリアムはシンヤにくっついて、健やかな寝息を立てている。
 どうやら、まだシンヤと子を成す為に、抱こうとはしない様子だ。

 シンヤはそっと寝台から抜け出す。
 やはり、ブライアンが心配だ。

 庭に出たが、ダークエルフ国にどうやって行けば良いかわからず、途方にくれる。

 ――リューイがいてくれればなあ。

 ウロウロしていたら、草を踏みしめる音がしたので振り返った。

「あ!」
「やあ。我が息子の妻よ」
「ブライアン様のお父さん!」

 ブライアン父が、満面の笑みで佇み、手を振っている。
 シンヤは駆け寄ると、頭を撫でられた。

「あ、あの」
「息子が心配なのは、私も一緒だ! さあ、行くぞ!」
「はい!」
「私の愛馬も飛べるんだ」

 シンヤは、ブライアン父に腕を引っ張られて、黒いペガサスに跨がった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる

琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。 落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。 異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。 そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ハーバルお兄さん~転生したら、イケおじ辺境伯と魔王の子息を魅了ヒーリングしちゃいました~

沼田桃弥
BL
 三国誠は退職後、ハーバリストとして独立し、充実した日々を過ごしていた。そんなある日、誠は庭の草むしりをしていた時、勢い余って後頭部を強打し、帰らぬ人となる。  それを哀れに思った大地の女神が彼を異世界転生させたが、誤って人間界と魔界の間にある廃村へ転生させてしまい……。 ※濡れ場は★つけています

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

処理中です...