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24騎士団長様と王子様の和解?

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 長いキスは、突然身体を引っ張られて終わった。
 乱暴に抱きしめてくるのは、ブライアンだ。
 シンヤは焦って声を上げる。

「ブライアン様!」
「なぜ、ユリアム様がこちらに?」
「そんなの想像つくだろ?」

 腕を組み、鼻を鳴らすユリアムに、ブライアンはシンヤを後ろに隠しながら口を尖らせた。

「父に教えられたのですか」
「さあな」
「今は、私とシンヤの二人だけの時間です、どうかお引取りを」
「……ブライアン! 騎士団長らしからぬ数々のあるまじき行為を、父上がどれほどお怒りか理解できているのか!?」

 ユリアムは剣を鞘抜くと、ブライアンに切っさきを向けた。

 シンヤは、ブライアンの背中から、顔を出して様子を伺う。

 ――まずい! ユリアム様が剣を!

 案の定、ユリアムはブライアンに戦えと挑発している。
 このままでは、二人が怪我をしてしまう。
 シンヤはブライアンから離れて、二人の間に割って入って叫んだ。


「二人共だめです! ちゃんと話しあって下さい!」
「シンヤ!?」 

 今まさに窓から飛び出でようとしていたブライアンが、シンヤに阻まれてよろける。
 抱きしめあう形になった二人を見て、ユリアムが激高して剣を振り回した。

「見せつけるみたいにいちゃつくな!!」

 どうにかユリアムを宥めて、中に入れてソファーに座らせる。
 紅茶を淹れてあげると大人しく口にした。


 シンヤとブライアンは、ユリアムの前に佇み、目を合わせる。
 ブライアンは苦々しい表情になるも、話すべき事は分かっている様子だ。

 頷くと、ユリアムに向かって口を開いた。

「ユリアム様、私は父と話しました。シンヤと子をなして下さい」
「……いいのか。では、結婚も解消すると?」
「いいえ。胎は修復可能ですし、結婚も解消しません」
「何だと!?」
「ユリアム様! 落ちついてください! 僕の話も聞いて下さい!」

 咄嗟にユリアムの隣に座り、手を握って話し始める。

「俺、この世界に来たときブライアン様の寝台で寝てたんです。ブライアン様に求婚されて、勢いで結婚しちゃったけど、後悔してなくて……」

 二人は静かに続きを待つ。
 シンヤはユリアムとブライアンに視線を交互に流しながら、言葉を続けた。

「それは、ユリアム様との結婚も同じです。流されるままに、妃になっちゃったけど、後悔はしてません。むしろ、異世界人である俺にとっては感謝すべき事で……どちらかを選ぶなんてできません」

 まともな恋愛をしていない、陰キャな自分が、今精一杯伝えられる言葉だ。
 ユリアムもブライアンも、瞳を揺らして黙り込む。
 ユリアムがシンヤを抱きしめる。

「ユリアム様?」
「……そうだな。僕達がお前を振り回してきたんだ……お前の気持ちを受け止めよう」
「ユリアム様、では、私達を認めてくださるのですね」

 ブライアンの言葉に、ユリアムは微笑して頷いた。
 シンヤは嬉しくて、ユリアムに抱きつき返す。

「ありがとうございます!」
「ああ! 僕はお前の夫だからな!」
「これからは、二人で協力して、シンヤを大切に、愛していきましょう」
「ああ。でも、騎士団長としての認識を改めなければ、罰を与えるからな? 謹慎だって、破ったんだからな!」
「はい」

 頭を垂れるブライアンは、膝をついて、忠誠を誓う意思を示した。


 ――良かったあ。

 安心感に包まれたシンヤだったが、翌日に城からの使者が訪ねて来て、騒動となり、やはりまだまだ気を抜けないのだと実感する事となった。


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