異世界転移した男子高校生だけど、騎士団長と王子に溺愛されて板挟みになってます

彩月野生

文字の大きさ
上 下
12 / 29

12俺をどれだけ愛しているのかを試すって!?

しおりを挟む
 鏡を通して会議を見守っていると、想像通りの展開となってしまい、シンヤは心配でたまらなくなる。

 やはり、ユリアムとブライアンは口論となったのだ。
 今にも殴り合うような雰囲気で、立ち上がり、顔を突きつけあっている。

『ユリアム様! ブライアン殿! 落ちつかれよ!』

 大臣の制止の声に少しも耳を傾むけず、二人の喧嘩は激しくなるばかりだ。

『だいたい騎士団長のお前が悪いんだ!! 団長の癖に頭を花畑にしてるから、騎士も兵士もすっかり腑抜けになった!』
『そんな事はありません! 私は愛するシンヤがいるからこそ、さらに騎士としての意識を高め、職務に力を入れる事ができております! ユリアム様こそ、シンヤばかり構って、すっかりお立場を忘れているのでは?』
『無礼な!!』

 めちゃくちゃな難癖をつけて大臣達を困らせている。
 シンヤは頭を抱えて項垂れた。

 ――どうしよう! 俺が攫われたせいで!

 落ち込むシンヤを、リードルフがなだめるように声をかけてくる。

「お前はくつろいで奴らを待っていれば良い」
「え?」

 何を言い出すんだと文句を言おうとしたら、リードルフがいきなり大声で鏡に向かって叫ぶ。

「お前達聴け! 俺は、ダークエルフの王、リードルフだ!」
『なんだと!?』

 ブライアン達の反応からするに、声がとどいてるようだ。
 二人はキョロキョロして主を探している。
 姿までは見えないらしい。
 シンヤは固唾をのんで見守る。

「いいかよくきけ! シンヤは丁重に扱っている。返してほしくば、俺のもとに二人だけで来い!」
『ふたりきりだって!?』
『私の妻に傷一つつけたら赦さないぞ!! 私は一人で行っても構わない!!』
『ぼ、僕だって行く!!』

 承知する二人に、大臣達は口々にわめくが、やはり二人は言うことを聞かない。
 リードルフは突然大笑いした。

「ハハハハッ良い反応だ!!」
「なっ」
(お前は喋るな)

 口を手で塞がれて、シンヤはもがいたが、今は大人しくするしかないと考えて、静かにする。

 リードルフは声を張り上げて、二人に尚も言い放つ。 

「俺の王の間に入るには、お前達の愛が試される! お前達がシンヤを本当に愛していて、シンヤがお前達を愛していれば、扉は開く。開いたなら、シンヤを返してやるが……」

 そこで一旦、言葉を切った。
 シンヤは生唾を飲み込む。

「お前達の愛が本物じゃなけりゃ、シンヤは俺が頂く!!」

 ブライアンとユリアムが、息をのむ声がした。
 一瞬の静けさの後に、嵐のような怒声が上がり、リードルフは鏡から顔を背け、指を鳴らす。
 鏡は消え去り、代りに成り行きを観察していたセレンが、進み出てくる。

「リードルフ様、本気ですか」
「ああ」
「俺達の愛を試すってこと!?」
「そうだ。あいつ等、お前をどれだけ愛してるのかを、どうやって証明するかな」
「悪趣味すぎる!!」

 リードルフの膝の上でジタバタしたら、落ちそうになって、逞しい腕に抱きとめられた。
 ブライアンやユリアムとも違う、厚い胸板を服越しに感じて頬が熱くなる。

 ――や、やばい!!

「いっそ俺に乗り換えるか?」
「は、はあ!?」
「お前、奴らを愛してるのか?」
「……そ、それは」

 何回も自問自答しているが、未だにはっきり答えがでないのだ。
 困り果ててしまう。

「リードルフ様、扉を開けないのは嘘ですよね」
「あのなあ、セレン。白けるから口を挟むな。まあ、少しは譲歩してやろう」

 その言葉にシンヤは少しだけ安心した。
 二人はいつ来てくれるのだろう。

 そわそわしながら待ち、一晩経つと、二人が森に入ってきたと、セレンから告げられた。

 二人の行動力と想いに感動する気持ちと、罪悪感に苛まれながらも、シンヤはリードルフの傍で二人がやって来るのを待つ。

 ――ど、どんな顔をすれば良いのかわからない!!

 ついに二人が城の中へと招かれ、王の間の扉の前にやってきた。

「ダークエルフの王! 僕は、レイグスの王太子ユリアムだ! 妃を返してもらうぞ!!」
「私は騎士団、団長ブライアンだ! 我が妻を返して貰う!!」

 ――ブライアン様、ユリアム様!

「入れ」

 まさかあっさり扉を開けるだなんて、と驚くシンヤに、リードルフはほくそ笑んだ。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる

琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。 落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。 異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。 そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ハーバルお兄さん~転生したら、イケおじ辺境伯と魔王の子息を魅了ヒーリングしちゃいました~

沼田桃弥
BL
 三国誠は退職後、ハーバリストとして独立し、充実した日々を過ごしていた。そんなある日、誠は庭の草むしりをしていた時、勢い余って後頭部を強打し、帰らぬ人となる。  それを哀れに思った大地の女神が彼を異世界転生させたが、誤って人間界と魔界の間にある廃村へ転生させてしまい……。 ※濡れ場は★つけています

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

処理中です...