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4これ、浮気になるのかな?
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柔らかくて温かい……!
シンヤは目の前のユリアムの顔を見つめて、必死に両手で彼の胸を押すが、びくともしない。
息ができずに苦しむシンヤに、ようやく気づいてくれたらしいユリアムが、やっと唇を離してくれたら、盛大に噎せてしまう。
「ぷはあっごほっごほっ」
ユリアムが申し訳なさそうに背中をさする。
「すまないな。ついシンヤが可愛くて……!」
「……ごほっ、い、いや、なんでこんな、き、キスなんて」
舌まで入れられなくてよかったと、内心で震えながら、涙が滲む視界でユリアムを見つめた。
ユリアムは口では謝ってはいるが、頬は赤くなり、目は爛々として、態度は全く反省していない。
シンヤはユリアムにまだ腰を抱かれていると気づいて、慌てて叫んだ。
「もうっ離してくださいってば!!」
「恥ずかしがりやなんだな。ブライアンとは、どこまでしてるんだ? 深い仲ではないのか?」
離されるどころか、額をくっつけられて、すごまれる。
ユリアムの綺麗な顔がじっくり見れる状況で、シンヤは心臓が高鳴るのを感じて困惑した。
――あわわわわっヤバイヤバイ!!
良い香りがするし、このままではユリアムに、本当に伴侶にされてしまう。
自分はブライアンと結婚してるのに。
――あれ、これ浮気になるのか??
王子に攫われる形で城に連れて来られて、伴侶にするだとか言われてキスまでされて。
それで、自分がブライアンに浮気したと責められたら、なんとも理不尽な話じゃないか。
シンヤはユリアムから距離を取り、ソファーの後ろに身を隠す。
「何をしている?」
「もう俺には触らないでくださいっ」
「は?」
「お、俺、ブライアン様に浮気したって怒られます!!」
「浮気? お前は、ブライアンを好いているのか?」
「え……」
改めて問われると……どうなのかと悩んだ。
ブライアンの勘違いから始まった結婚生活だけれど、シンヤはそれなりに幸せだ。
いきなり寝台に寝ていた怪しい男子を快く受け入れてくれた人だ。
感謝はしている。
――嫌いじゃないんだよ。
だけど、まともな恋愛経験もない自分には、恋や愛が理解できていないのだ。
このまま流されて、結婚生活を送るのは、ブライアンに失礼じゃないだろうか。
沈黙したシンヤに、ユリアムが笑いながら話す。
「悩むくらいならば、お前は僕がもらう!」
「だ、だから、俺の気持ちは!?」
「僕とのキスは気持ち悪かったか?」
訊かれて口を手で押さえた。
別に気持ち悪いとは感じていない。
シンヤはため息交じりに答えた。
「今日は、帰らせて下さい……ブライアン様には話しませんから!」
「やれやれ」
ユリアムは呆れたように息を吐くと、明日また迎えに行くといって、シンヤをブライアンの屋敷まで送ってくれた。
シンヤはカイルに事情を説明する。
「また王子が迎えに来るって」
「ブライアン様に気づかれたら、どうなるか……シンヤ様を溺愛されておりますし、私も、また冷たいブライアン様に戻ってしまわれたら、悲しいです」
「冷たい?」
カイルが用意してくれた紅茶を飲みつつ、耳を傾ければ、憂いの顔つきで話された。
「ブライアン様は、ご家族と不仲ですし、恋人も今までいらっしゃいませんでした。近づいてくるのは卑しいものばかりだと、交流を避けられておりましたし」
「そう、なんだ」
――ブライアン様……俺と似てる。
「シンヤ様が現れた時、神からの贈り物だと、子供のように喜ばれておりました。ですから、万が一、シンヤ様が、離れてしまわれたら……」
シンヤはカップをテーブルに置いて、声を張り上げる。
「どこにもいかないから!」
「シンヤ様、ありがとうございます」
深々と頭を下げるカイルに、焦った。
「面倒みてもらってるのは、俺なんだから、お礼なんて言わないでよ」
「……シンヤ様、王太子にはどうか慎重に対応をされて下さい。種の件はこの国にとって、重要なのです」
「……」
種について聞き出したかったが、疲労感に襲われてしまい、その後は軽食を食べてすぐに寝た。
翌朝、ブライアンが帰ってきて、頬にキスをされて目をさました。
銀髪の美青年が、微笑んでいる。
――綺麗だなあ。
ぼんやりした頭で声をあげた。
「お帰りなさい、ブライアンさま」
「ただいま、私も少し眠りたい」
ブライアンはシンヤを抱きしめると、寝台に身を沈めた。
その逞しい肉体と温もりに安心して、シンヤはまた意識を沈ませた。
ブライアンの指が、指輪をいじっていたのが、少し気になった。
シンヤは目の前のユリアムの顔を見つめて、必死に両手で彼の胸を押すが、びくともしない。
息ができずに苦しむシンヤに、ようやく気づいてくれたらしいユリアムが、やっと唇を離してくれたら、盛大に噎せてしまう。
「ぷはあっごほっごほっ」
ユリアムが申し訳なさそうに背中をさする。
「すまないな。ついシンヤが可愛くて……!」
「……ごほっ、い、いや、なんでこんな、き、キスなんて」
舌まで入れられなくてよかったと、内心で震えながら、涙が滲む視界でユリアムを見つめた。
ユリアムは口では謝ってはいるが、頬は赤くなり、目は爛々として、態度は全く反省していない。
シンヤはユリアムにまだ腰を抱かれていると気づいて、慌てて叫んだ。
「もうっ離してくださいってば!!」
「恥ずかしがりやなんだな。ブライアンとは、どこまでしてるんだ? 深い仲ではないのか?」
離されるどころか、額をくっつけられて、すごまれる。
ユリアムの綺麗な顔がじっくり見れる状況で、シンヤは心臓が高鳴るのを感じて困惑した。
――あわわわわっヤバイヤバイ!!
良い香りがするし、このままではユリアムに、本当に伴侶にされてしまう。
自分はブライアンと結婚してるのに。
――あれ、これ浮気になるのか??
王子に攫われる形で城に連れて来られて、伴侶にするだとか言われてキスまでされて。
それで、自分がブライアンに浮気したと責められたら、なんとも理不尽な話じゃないか。
シンヤはユリアムから距離を取り、ソファーの後ろに身を隠す。
「何をしている?」
「もう俺には触らないでくださいっ」
「は?」
「お、俺、ブライアン様に浮気したって怒られます!!」
「浮気? お前は、ブライアンを好いているのか?」
「え……」
改めて問われると……どうなのかと悩んだ。
ブライアンの勘違いから始まった結婚生活だけれど、シンヤはそれなりに幸せだ。
いきなり寝台に寝ていた怪しい男子を快く受け入れてくれた人だ。
感謝はしている。
――嫌いじゃないんだよ。
だけど、まともな恋愛経験もない自分には、恋や愛が理解できていないのだ。
このまま流されて、結婚生活を送るのは、ブライアンに失礼じゃないだろうか。
沈黙したシンヤに、ユリアムが笑いながら話す。
「悩むくらいならば、お前は僕がもらう!」
「だ、だから、俺の気持ちは!?」
「僕とのキスは気持ち悪かったか?」
訊かれて口を手で押さえた。
別に気持ち悪いとは感じていない。
シンヤはため息交じりに答えた。
「今日は、帰らせて下さい……ブライアン様には話しませんから!」
「やれやれ」
ユリアムは呆れたように息を吐くと、明日また迎えに行くといって、シンヤをブライアンの屋敷まで送ってくれた。
シンヤはカイルに事情を説明する。
「また王子が迎えに来るって」
「ブライアン様に気づかれたら、どうなるか……シンヤ様を溺愛されておりますし、私も、また冷たいブライアン様に戻ってしまわれたら、悲しいです」
「冷たい?」
カイルが用意してくれた紅茶を飲みつつ、耳を傾ければ、憂いの顔つきで話された。
「ブライアン様は、ご家族と不仲ですし、恋人も今までいらっしゃいませんでした。近づいてくるのは卑しいものばかりだと、交流を避けられておりましたし」
「そう、なんだ」
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「シンヤ様が現れた時、神からの贈り物だと、子供のように喜ばれておりました。ですから、万が一、シンヤ様が、離れてしまわれたら……」
シンヤはカップをテーブルに置いて、声を張り上げる。
「どこにもいかないから!」
「シンヤ様、ありがとうございます」
深々と頭を下げるカイルに、焦った。
「面倒みてもらってるのは、俺なんだから、お礼なんて言わないでよ」
「……シンヤ様、王太子にはどうか慎重に対応をされて下さい。種の件はこの国にとって、重要なのです」
「……」
種について聞き出したかったが、疲労感に襲われてしまい、その後は軽食を食べてすぐに寝た。
翌朝、ブライアンが帰ってきて、頬にキスをされて目をさました。
銀髪の美青年が、微笑んでいる。
――綺麗だなあ。
ぼんやりした頭で声をあげた。
「お帰りなさい、ブライアンさま」
「ただいま、私も少し眠りたい」
ブライアンはシンヤを抱きしめると、寝台に身を沈めた。
その逞しい肉体と温もりに安心して、シンヤはまた意識を沈ませた。
ブライアンの指が、指輪をいじっていたのが、少し気になった。
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