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二人の秘め事~蜜月~
しおりを挟む囁かれる声は幻聴なのかと思った。
「愛してるぞ……かわいい俺の、リアム」
寝台の上、全身を指でいじられ、舌で嘗められながら愛の囁きを注がれる。
リアムは思考が回らなくてクロヴィスの腕の中で震えていた。
何が起こっているのか理解できないのだ。
――クロヴィスがおかしくなっちゃった……。
覗き込む赤い瞳には激しい情欲と支配欲の他に、慈しむような色も含まれているのが分かる。
いつもの見下したような視線は感じられず、恋い焦がれる相手に対しての態度を示されて戸惑う。
「や、やめて、どうしたのクロヴィス」
「戸惑ってる顔もかわいいな」
「ひやあう」
べろりと頬と唇を嘗められ、ついばむようなキスをされる。
くすぐったくてリアムは身もだえた。
普段ならクロヴィスはこんな言葉を吐かない。
愛しているだなんてあの時以来言われた事などなかった。
「あの、僕も、愛してます」
こんなにも愛を囁かれて、リアムも言葉を返したいと思い、たどたどしくも愛の言葉を伝えると、きつく抱きしめられる。
それからしばしの間、沈黙の刻が流れた。
暗くなった部屋の、四隅に備え付けられたランプに明かりが灯る。
クロヴィスが火を着けたのだ。
寝室には大きな窓があり、月明かりが降り注いでいる。
寄り添って寝転がり体をすり寄せる。
クロヴィスの心臓の鼓動が聞こえてきて、安心感を覚えて吐息を吐き出す。
「出会った頃よりも、随分しっかりした顔つきになったよな」
「え」
「子猫みたいに可愛かったのにな」
ふいにクロヴィスが初めてリアムと出会った頃の話を始めて、恥ずかしくなる。
視線を逸らして俯く。
「子猫って……」
「お前は俺が怖かったんだろ」
「ぼ、僕は」
「お前が初めてだったんだ、捕まえた神官どもの中で、俺が惹かれたのは」
その言葉にリアムはクロヴィスに確かめたいと思っている事を、思い切って尋ねてみた。
「あの、その、彼らはどうしてたの」
「ん?」
「あ、えっと」
リアムはどう伝えれば良いか迷う。
直接的な言葉で言い表すのも躊躇する。
「記憶を消して帰してやってた」
「!」
どうやらお見通しのようだ。
「そう、なんだ」
「意外だったか? ヤり殺してたとでも思ってたか」
「それは……」
口ごもると抱きしめてくる腕の力が強くなって呼吸が苦しくなる。
クロヴィスは楽しんでいる様子だった。
「俺もあいつらも、基本的には暴力はふるわねえ。例え性奴隷相手でもな。愛情を返してこない奴はすぐに判断できる」
「愛情?」
「魔族なんて輩は、根底が赤ん坊だからなあ」
「赤ちゃん?」
「寂しさ、苦しみ、劣等感。つまりは負の力で魂が燃えてるってわけだ」
それを抑え込む為に、魔力を増幅させ、鉄の心を持ち己を守ろうとする。
そんな魂を慰めてくれる存在を魔族は求め、性欲として消化させ、欲望を向ける相手を、自分だけの物にしようとする。
「俺も、あいつらも、お前の慈愛に感づいて喰らい尽くそうとして、お前の肉体を弄び、ひたすら快楽を与えて貪ったんだ」
「……っ」
耳元でそんな言葉を囁かれたら、また火照ってきてしまう。
リアムは慌てるがクロヴィスの言葉は止まらない。
「そうだ、今夜の事は誰にも言うなよ」
「え?」
どういう意味だと問うまでもなく答えられた。
「俺がお前を盲愛している事実をだ」
「も、もうあいって」
「魔族の主と呼ばれる俺が、性奴隷を盲愛しているだなんて知られたら、なめられて俺の権威が地に墜ちる」
「誰にも言わない」
「いい子だ」
「クロヴィスぅ」
リアムはクロヴィスの胸の突起にそっと吸い付いてみた。
そのまま舌でなめ回す。
一度こうして口で味わってみたかったのだ。
クロヴィスが笑って頭を撫でてくる。
「いいぜ、好きにしろ」
「んちゅうっ♡」
「うまいか」
「んっおいひぃ」
今夜の出来事は誰にも言わない。
――僕と、クロヴィスの、二人だけの秘密。
クロヴィスの上にまたがり、身体の奥に彼自身を埋めて、腰を激しく上下させて甲高い喘ぎ声を上げる。
「おほおっ♡ あひいいっ♡ クロヴィスぅっ」
「いいぞっ! もっと鳴けっ」
「ああっんほおおっ♡ クロヴィスさまあっ♡」
リアムは心底思った。
自分はなんて幸せなのだろうと。
身も心も支配され、快楽と激しい執着とも言える盲愛で満たされていく。
「く、クロヴィスさまあっ♡ キス、してぇ」
「いいぞ………んぅ」
「あむうっ♡」
――クロヴィスぅっ。
クロヴィスの熱い精液を身体の奥で受け止めて、リアムも絶頂してペニスから白濁をまき散らした。
「イっくうぅううっ! ほおおぉおおっ♡」
愛し合う悦びを魂で感じて、リアムは愛しい魔族の男に微笑んだ。
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わー!!ありがとうございます!
読ませて頂きます〜✨
作者様、最近は特に季節の変わり目なので、お体を大切ににお気をつけ下さいませ😊
bl 最高!!!
こちらこそありがとうございます!
楽しんで頂けたら嬉しいです😃
沼藤様もご自愛くださいね。
うわぁぁぁ…エグいエグい…
とか思いつつ読破致しました。
ビッチ受け最高おおおお!!!!!!
最後までお読み下さりありがとうございます❗
楽しんで頂けたようで何よりです❗
よろしければ下記にてリュカがメインの連載してますのでお読みください。
またシークレット作品についてメッセージにてご案内してますので、下記どちらかアカウントお持ちでしたらお知らせ下さい。
同人誌もよろしくお願いいたします☺️
https://www.pixiv.net/member.php?id=42439177
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