隷属神官の快楽記録

彩月野生

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本当の悪夢の始まり

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明日の出発の準備にリアムも荷物の整理を言い付けられ、サンドロ達の手伝いをしていた。

質素な薄地の衣服を身に纏うリアムは、久しぶりにまともに服を着ているなあと瞳を細める。
食料となる乾物を袋に詰めながら、卓上の木箱に視線を向けていた。

今、この部屋には誰もいない。
リアムはそっと木箱の置いてある机に近づいた。


その数分後、リアムは屋敷の中を全力で走っていた。
物陰に身を隠しながら周囲に人がないか確認しつつ足早に進んでいく。
どこからか「結界に亀裂が入った!」「あの野郎どこだ」という怒声が聞こえてきて、恐怖に身を竦めるが勇気を振り絞り目的の場所を目指す。
とはいえ、目的の場所は屋敷の外だ、窓を割って出ようと考えてはいたが、どこの窓から出られるかは思考が追いつかない。

「おい」

いつの間にか食堂に入ってしまっていたようで、料理係に見つかってしまった。
リアムは足がすくんで硬直して動かない。
料理係の男は仏頂面で顎で何かを示す。
その視線を追うと、壁に小さな窓がある。
料理係の顔色をうかがいつつも、手に力を込めて窓を押す。するとなんなく外開きに開いた。
まさか味方がいるなんて。リアムは焦燥感からぎこちない仕草ながらも、どうにか窓から脱出することに成功し、安堵する暇もなく目的である馬小屋へと向かっていく。

その馬小屋だけは特別で、屋敷の門近くにある。
立派な鬣を持つ黒い馬だ。何度かクロヴィスと共にこの馬で散歩に連れて行かれた事があった。
馬はリアムを認識している様子で顔をすり寄せてくる。
一度この馬の上で痴態をさらしてしまったので複雑な心境に陥るが、今はかまっていられない。

「ごめんね、力を貸して」

ここから逃げ切るには、一番足の速いクロヴィスの馬を使うしかないと判断した。
馬の乗り方は祖国で覚えているし、この馬の扱い方ならクロヴィスの態度を見ていたのでどうにかなる筈と踏んでいた。
どうにか馬に乗ると、空を見上げた。
雲が渦を巻いており、屋敷の門の前が歪んでいる。
結界が崩れた証なのだろう。

「ハッ!」

リアムは馬に鞭を打ちつけ、馬は駆けだした。
弱くなりそうな己の心を叱咤するように、力強く声を張り上げ、馬は俊足で結界の隙間を駆け抜けていく。

「はあはあはあっ」

どれくらい走っただろうか。
馬がリアムの意図を察したかのように森を抜けて広い道へと飛び出す。
クロヴィスの馬がこうもリアムの意思通りに動くのは不安だったが、せっかくここまで逃げ出せたのだ。
リアムはここで馬車を拾うことにした。
馬は通常処分するか捨てていくーーリアムは馬を優しく撫でて囁いた。

「ありがとう。お戻り」

馬が高らかに鳴いて森を戻っていくのを眺め、気を引き締める為に息をはく。

――こうもうまく行くのはおかしい。

流石にリアムも理解していた。これはきっと罠なのだと。
このまま陛下の元へ向かうのは利口なやり方ではない。

――あの人なら何か知っているかも。

リアムは先方からやってきた大きな馬車に必死に手を振って止めた。
中から顔を出したのは数人の男で、その身なりからすると祖国の隣国の商人だと思われた。
それならば迷わず帰れると、リアムは商人達に乗せてもらえるようにお願いした。
リアムが友好国の神官だとわかると、彼らは喜んで受け入れてくれて馬車に乗せて貰えた。

「へえ。神官様は捕まっていたので?」
「はい、彼らは祖国へ危害を加えようとしています。一刻も早く陛下にお伝えしなければならないのです!」

お礼は何でもします、と付け加えると三人の商人は「では、国についたら宝石でも」と言いかけたのだが、一番若い男がふらふらと身体を揺らし初めてリアムに顔を寄せてくる。

「え?」

リアムは驚いて馬車の端へと背を押しつけた。
男はうっとりした表情で呟いた。

「甘い香りがするなあ。俺、礼は神官様がいいなあ」
「お、おい!」

二人の商人が止めに入るがリアムは覆い被さってくる男の背に腕を回す。
ぎょっとする二人にリアムは困ったように笑った。

「神官様?」
「私は魔族達に捕まっていたんです、蹂躙されたのでその"気"が彼を狂わせてしまったのでしょう」

口をぱくぱくさせている男二人に、リアムはこのまま馬車を走らせてもらうようお願いし、荷物の一部をまとめたその隙間で興奮する男を引き寄せた。
ふうふうと荒い呼吸を繰り返す男の背中をさすり、その耳元で囁く。

「大丈夫です。いま、鎮めてあげるから」

自分でも驚くほどに見知らぬ男との性交を受け入れようとしているが、それは本能で男を欲していたからだと自覚していた。
乱暴に開発された肉体には、男に蹂躙された快楽の悦びが刻まれている。

――それに、僕も、あそこに欲しい……。

リアムの身体が薄い紫色に包まれその目も潤むが、気にせずに肌に吸い付いてきた男に身を委ねた。



揺れる馬車の中でリアムは背中を押しつけられ、開いた足を男の肩に乗せて猛った男根を奥で受け止めて、もう何度目かも分からない注がれる迸りに恍惚とした。

「んんうっ! んふうっ♡」
「しんかんさまあ、しんかんさまあっっっ」
 
男の興奮はまだ落ち着かず腰を乱暴に突き上げ、その都度リアムの四肢も揺さぶられる。
やがて馬車がとまり声をかけられた。

「着きましたぜ!」

リアムは朦朧とした意識の中でまだ自分を犯し続けている男が、二人の商人によって引き剥がされるのを見つめていた。
ようやく中から出ていったイチモツの感触にビクンと震えながらも、二人にお礼をいう。


「あ、りがとう、ございます」
「神官様だいじょうぶですかい」
「どろどろだ」
「……なんかいも、だされちゃった」

どろりと後孔から精液が流れ出る。
太ももを伝い足を汚していく。
二人が唾を飲み込む音がして、リアムは男達に笑いかけた。

「お相手しましょうか?」


祖国の入り口付近に止められた馬車の中で、リアムは結局三人同時に相手をすることになり、一晩馬車の中で過ごす事にする。
人間の男に抱かれるのは初めてだったが、やはり性器や肉体の形や硬さは違うな、となんとなく物足りなさを感じてしまい、罪悪感に胸が痛む。

一段落ついて男達に身体を拭いて貰っていると、いたたまれなくて言葉をかけた。

「すみません、お手間をかけてしまって」

三人がびくりとしてリアムから目をそらしながら、リアムの身体を綺麗にしていく。

「い、いえ、しかし神官様の香りはなんなんですかね、つい、その欲情しちまうっていうか」
「だろ? 俺もその香りにあてられてついっ」
「うるせえ! お前は乱暴にしすぎなんだよ!」
「おれたちも何回も神官様の中に出しちまったよな」
「うっ」

声につまった一番年上の男にリアムは微笑む。
彼らは他に望むものはないというので、リアムは改めてお礼を述べて馬車から降りた。

久しぶりの祖国だ。空気が懐かしく感じる。
訝しむ門番に名を名乗るとすんなり通してくれた。

――引っ越しをされてなければ、いらっしゃる筈。

リアムの脳裏に金糸の長い髪を持つ美しい男性が浮かぶ。
整った顔には翡翠の瞳が揺れている。
彼は先輩の神官であり、幼い頃からかわいがってくれた兄のような存在だった。
リアムが神官になって二年ほどは会っていない。
変わっていないといいなと思いながら、リアムは彼の住処である城下街外れの屋敷へと向かった。



屋敷の外観に変わった様子はなく、荘厳な扉は彼の地位の高さを物語る。
固く閉ざされた門には途方にくれてしまう。
普通は使用人が気付く筈なのだが、気配がないのだ。

――留守なのかな。

仕方ないと踵を返そうとした時、柔らかな声音が耳を震わせた。

「リアム? リアムなのですか?」
「……あ」

神官の白い正装に身を包む彼が佇んでいた。
懐かしい顔を見て、リアムは急激に身体から力が抜けていくのを感じると、その場にしゃがみこんでしまった。
立ちくらみがして心臓も早い。

「あれ、ぼく」
「リアム! 誰か彼を運んで下さい!」

――リュカ、さま。

彼の名前を呼び、リアムの意識は途切れた。

気付くとリアムは部屋に運ばれており、誰かに手を握られていた。
顔を上げると、リュカが心配そうに両手でリアムの手を握り込んでいる。
胸に安堵が広がり声をあげた。

「リュカ様」
「まだ眠っていた方が良いです」

リュカの目に戸惑うような色が見えた。
リアムは感づかれたかもしれないと落胆するが、リュカには全てを話すつもりだったので、覚悟はしている。

「落ち着いたらお風呂と食事にしましょうね」
「ありがとうございます」

それからリアムは久しぶりにゆっくりと人らしい時間を過ごす事ができた。
日が暮れた頃にはだいぶ精神も落ち着き、やっとリュカに何があったかを話す事ができた。
リュカは深刻な顔つきで黙り込んでいたが、やがて頷いてくれた。

「わかりました。よく頑張りましたね。陛下には私からお話します」
「……リュカ様」

涙を流すリュカを見つめてリアムの胸がずきりと痛む。
身体の細かい傷が癒えていたので、リアムが魔族に何をされたかは分かっていただろうけど、こうして直接言葉で説明するのが辛かった。

「リュカ様、僕はすっかり色欲に染まってしまいました」
「リアム?」
「もう僕には、神官の資格なんて……ないんです」

淡々と言葉を零すと、リュカが息を飲み優しい言葉をかけてくれる。

「魔族達の仕打ちに耐えて無事に帰ってきた自分を責めてはいけません、貴方のおかげでこの国は救われるのですから」
「でも」
「それに、貴方は彼らについて知りたいと考えているのです。その慈悲の心は神官たる者の思いですよ」
「それは、違います」
「リアム?」

リアムは漆黒の魔族の男を思い浮かべて顔を振った。
顔が熱くなって胸が締め付けられる。

「僕は本当に神官失格です、だって、自分を辱めた彼の事を……」
「それ以上は言わなくていいです」

はっとしてリュカを見ると優しく微笑まれる。

「私は最高神官になる身として、リアム、貴方を誇らしく思います」
「どうしてですか」
「人の心を失わない貴方の強さにです」
「リュカ様」

リアムはどう答えるべきか分からなくて俯いた。

「貴方の身体を調べさせて貰いましたが、特に術の痕跡はありませんでした」
「え、ほんとうですか」
「ええ」

一瞬、自分の身体から妙な気配を感じたのだが、リュカほどの神官がいうのであれば、問題ないのだろう。
追っ手が来てもリュカの屋敷には術が施されており、魔の者の侵入は容易にできない。

眠る時間となり、リュカは同じ部屋の隣の寝台で寝てくれた。
リアムはすっかり安心して眠りにおちかけたのだが――突如、猛烈な四肢の熱さにリアムは寝台の中で身もだえた。
これは、強烈な性欲。

「ふっ? ふう」

隣でリュカが寝ているというのに、自分で慰めるわけにもいかない。
たまらず起き上がろうとしたら、突然寝台の周囲が発光した。
驚いたリアムは声を上げる隙もなく、何かに身体を寝台の上に押さえつけられてしまう。
うごめくツタのようなものがリアムの身体を捕まえていた。

――しょ、触手!

それは見覚えのある忌むべき生物。甘い香りがリアムを包み込み、身体が反応してしまい、呼吸が苦しい。

「よお、淫乱神官殿」
「――っ」

その低い声音にリアムの心臓が大きく跳ねた。
かろうじて動かせる顔を声の方向へと向ける。そこには思った通りの男が立っていた。
黒衣をまとい魔族の主たる冷酷な空気を漂わせている。

「クロヴィス」

リアムは彼の名前を呼ぶと、切なく胸が疼くのを無視して叫んだ。

「やっぱり罠をっ」
「ああそうだよ、わかっていたくせに、本当に愚かな神官様だなあ」

クロヴィスは腕を組むと盛大に笑い声を上げた。

「こんなにすんなりとユーディアに入り込めるとは、リアム様には感謝だな」
「この国をどするつもりなんだ」
「さあて。それをお前に説明してやる筋合いはないなあ。それより、何やらお前が慕っているらしいあの野郎が今、どうなっているか気にならないのか?」
「え!?」

リアムの声と共に触手がうごめきリアムの身体を寝台の上に座らせた。
隣の寝台に眠っている筈のリュカが、屈強な魔族の男に押さえつけられていた。
魔族の男はリュカの身体を弄り、リュカは苦悶に満ちた表情でリアムを見つめた。

「り、リアム」
「リュカ様! リュカ様は関係ないのに!」
「あるさ」

リアムは恐怖に身をすくめる。目の前にやってきて、リアムの顔を手で掴むクロヴィスを見据える。
クロヴィスの赤い目には欲望の意思がギラついている。

「お前ら二人は国王との交渉に使わせて貰う」
「な、なにを」
「ここで徹底的に調教して見せしめにしてやるよ……始めろディラン」

クロヴィスの命令に、リュカを押さえつけている魔族が静かに「はい」と返事をすると、嗤い声をあげてリュカに囁く。

「こんな上玉を躾けられるなんて、犯しがいがある」
「……犯す? 私を? そ、そんな、けがされたら、わたしはもう、神官では……」
「や、やめろっ犯すなら僕にしろっ」
「ごちゃごちゃうるせえぞ神官」

ずるりと触手がリアムの性器を擦りあげリアムはつい甘い声を上げてしまう。
それでもリュカを助けようともがくが触手はびくともしない。
顔もがっちりと固定され、犯されるリュカが視界に入り込む。
クロヴィスが愉しそうに嗤って、リアムの背後に回り込み寝台の上に座る。
腕を回されて抱きしめられた。
こんな状況にも関わらず、リアムはクロヴィスの肉体の感触と匂いに悦びを感じてしまう。

――馬鹿だ僕は、リュカ様をこんな目に……。

「大切な人が無理矢理ヤられるのを見届けろ」
「……あ、ああ、そんな……」

幼い頃から自分を大切にしれくれた人が穢されてしまう。
衣服を引き裂かれ、全身をなめられながらもまだ状況を把握できず、受け入れられないリュカが虚ろな目で虚空を見つめている。小さな声で「やめて」と囁きすすり泣いている。

リアムは、リュカが昔から最高神官になる為に努力していたのを知っていた。
もう間もなくその夢が叶おうとしていた筈なのに、リアムの為にその身を穢され資格を失ってしまう。

この人だけはこんな目にあっちゃいけない。

リアムは絶叫した。

「嫌だっやめてええっこの人だけはっこの人だけはっ許してっ」
「おうおう、みっともなくわめくな、うるせえぞ!」
「なんでもしますっ僕が代わりになるからっ」
「だーかーらー、お前だけじゃ役不足なんだよ、あいつ最高神官になる身だったんだろう?」

リアムはクロヴィスが何故そんな事を知っているのかと驚愕して口を閉ざす。
クロヴィスは口端をつり上げてリアムの頬をなめた。

「ひっ♡」
「まあ、お前も楽しめ」

そして、リアムは男に犯されるリュカを見届ける事になった。


夜も深まる時刻。媚薬を飲まされたリュカがだんだんと甘い声を出し始めた。
さんざん舌と唇でその白い肌を弄ばれた後に、快楽を感じてきたらしい。
今では自分を犯す男に腕を回して口づけを受け入れている。
そんな姿にリアムは目を閉じる事もできず、つい凝視してしまう。

「あの野郎ほんとうに初めてなのか? 素質があったみてえだな」
「……リュカ様」

――かわいいなんて思うなんて。

リアムは甘く乱れるリュカの姿に魅了された。
両足を大きく開かれたリュカは、その後ろ孔に指を挿入されて身体を跳ねさせる。
甲高い声を上げて顔を振るが決して痛がってはいないようだった。

「そろそろか」

クロヴィスが呟くと声を張り上げる。

「どうせならこっちに向かせろ」
「あ、はい」

主の命令に従った魔族は、リュカを抱え上げて自分はあぐらをかくと、その上に、リュカの顔がリアム達に見えるように座らせた。
その時、リアムはリュカと視線があってしまい、リュカが目を見開き恥ずかしそうに顔を振った。

「リアムみないで」
「あ……」

せめて目を閉じていようとするが、次の瞬間リュカの張り上げた声によって閉じる事ができなかった。

「んほぉおおうっ♡」
「きっつ。力抜け」
「い、いひいっ♡」

ずっぽりと男根を奥まで挿れられて涙を流してその美しい顔を歪ませて泣き叫んでいる。
見たこともないリュカの痴態にリアムはどきどきしてしまう。
下半身まで反応してしまっていた。
クロヴィスがくすくす嗤ってリアムの頭を撫でる。

「ああ……リュカ様が」
「見ろよ、声が甘くなってきたぞ」
「あ」

リュカは突き上げられる度に「ほおっ♡ ほおおっ♡」という声を上げ、その顔は快楽に融けたようにだらしなく口をあけて、舌を覗かせている。

「りゅ、りゅかさま」
「りあむっみないでえ♡」
「クロヴィス様、こいつの中すげえいい具合です」

じゅぼじゅぼと尻穴を蹂躙され、甘い声をあげて悦がるリュカがかわいく見えてしまう。
リアムは腰を揺らしてしまい、クロヴィスに身を寄せようとするが、身動きがとれずに苦悩する。

クロヴィスがリアムの目を見据えながら言い放った。

「お前は俺が直々にたっぷり可愛がってやる、お前に刻んでおいた淫紋で遊んでやるよ」
「え? あ、ああああっ♡」

リアムの肉体に奇妙な模様が浮かび上がり、全身に広がると、再び強烈な欲情に支配されて叫び声を上げた。
模様が肉体を這いずり回り、そのあまりの快楽に絶頂して思考は真っ白になった。

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