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月下の誓い
しおりを挟む今日は朝から屋敷の中を片付けている。
いるものといらないものを選別する作業が主だけど、ゼルフォン様の部屋を一緒に片付けていると、いかがわしい玩具を見つけて思わず声をあげてほっぽり投げた。
「うわあ!」
「ラハンどうした?」
「あ、あのあれって!」
「ああ! ダラスから譲り受けたんだ」
「……絶対高値で買いましたよね?」
「どうだったかな~」
「ゼルフォン様!?」
玩具を荷物に入れたのを見て注意するも、無視される。
あれで遊ぶ気満々なんだなあ……。
呆れと期待が混ざった感情がこみ上げて顔を振った。
いかんいかん! さっさと荷物をまとめないと、せっかく馬車を用意してもらってるんだから王様に悪いぞ!
それにしても、急な話でびっくりした。
ゼルフォン様の持つ聖剣が、その力を失っていたなんて。
聖剣の力を戻す為、国の外れにある神殿に行く事になったのだ。
全ては巫女の力とゼルフォン様が、再び聖騎士として認められるかにかかっているので、いつ頃帰ってこれるかは分からない。
その為、俺は特別に同行を許された。
本当は結婚式を挙げてからの予定だったけど、やむを得ず後回しにした。
ゼルフォン様は少し元気がない。
己の素行を反省しているらしく、俺に触れようともしないのだ。
それが寂しいと思った。
出立の前に、俺はゼルフォン様に手料理を振る舞う事にした。
まあ、正確には思いっきり甘やかしたいって思ったんだけど。
一応俺が年上なんだし、たまにはお兄さん面をしたいなって。
屋敷の庭に用意した、夕食の席にゼルフォン様を招待すると、顔を綻ばせてお礼を言われた。
「忙しい中、ありがとう」
「い、いえ! それより……」
向かいあって座ったゼルフォン様に、口をあけるように促して、スープをスプーンですくうと、息を吹きかけて口元に運ぶ。
ゼルフォン様は戸惑う事もなく、自然に口に迎え入れてくれたのでほっとした。
「味、大丈夫ですか?」
「ああ……おいしい」
「良かった」
「……」
するりとゼルフォン様の手が、ふとももを撫でてくる。
こんな、食事の場で……って思うけど、拒否する気持ちはおきない。
布越しに中心をさわられると、もう濡れて腰を振ってしまう。
「君を調教したかいがあったな、こんなに素直になってくれて嬉しいよ……このまま食事を続けようか」
「い、意地悪」
性器をさわられながら、食事を楽しむ。
異常な状況なのに、ゼルフォン様になら何をされても嬉しいと感じるのは、やっぱり調教されたのが原因なのだろう。
どうにか無事に食事を終えて、一息ついていると、突然ゼルフォン様に抱き抱えられて驚いた。
「え、な、なんですか!?」
「月がとても綺麗だよ、見てごらん」
「あ」
煌々と輝く月。月を見ると、ゼルフォン様と初めて会った時を思い出す。
好き勝手されたな、とか王様に向かって爆弾発言されたなとか……。
「ラハン」
「はい?」
「本当に私と生涯を共にしてれるのか? 君はいいのかそれで?」
そんな戸惑うような目で、心配そうに見つめないで欲しい。
改めて思うけど、この人本当に天然だよな。
その顔に唇を寄せて頬に口づけてみた。
「今更ですよ」
「……ラハン!」
きつく抱きしめられて、呼吸が止まりそうになって笑ってしまう。
「そんなに不安にならないでください! 俺は、ゼルフォン様にずっとついていきますから」
ゼルフォン様は無言で暫く俺を抱きしめていた。
俺はこれから二人で旅ができることが嬉しくて仕方ない。
ゼルフォン様と出会って、縛られる喜びもあのだと知れたから。
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