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商売仇に食われた日

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市場に行く俺を、ゼルフォン様はかなり心配していて、朝は引き留められて説得するのが大変だった。

それでも俺は商人だし、やりたい仕事なのだと真剣に話すと最後には理解してくれた。

少しの遅刻だが、開店までには間に合った。

ん?

自分の店の前にすでに人だかりが?
小走りに近づくとその正体にうんざりする。
ダラスが仲間を引き連れて、俺の店を占領していたのだ。
品はまだ預かってもらっているのが救いだった。

ダラス達に注意を促している人は、商会が雇っている傭兵である番人だ。
ダラスの雇う傭兵達とにらみ合い、今にも乱闘になりそうでピリピリした空気が流れている。

このままじゃ、客がよりつかないぞ!

「あのおっ番人さん、どうしました?」
「ラハンやっと来たか!」

番人より先に反応したダラスに舌打ちをする。
お前に用はないんだよ、いや、あるけど、ひとまずは険悪な空気を解消しないと商売にならない!

俺はダラスを無視して番人さんに耳打ちした。

番人さんはわかってくれたようで、ダラス達を店の裏側に誘導してくれた。
そこで俺は番人さんの前でダラス達と話し合い、これ以上騒ぎを起こしたら、二度と市場で店を出せないという忠告を受け入れる事で収まる。

番人さんが去ってからダラスは妙に優しい声で「まあ、話しでもしよう」とお茶に誘ってきた。
まあ、そこらじゅうに番人さんがいるから、安心感はある。

こいつが市場の中心に立てた巨大なテントに足を踏み入れた。

ダラスが様々な商品に手を出していたのは知っていたのだが、鎌や鉈、ギロチンなどの武器類はどうも苦手で顔が引きつってしまう。

テントの奥に設けられた、二人用の円卓の椅子に向かいあって座ると、使用人の華奢な男が、鮮やかな青い花が描かれた、陶器のカップに注がれているお茶を運んでくる。
上品な香りが鼻腔をゆるく刺激して瞳を細めた。
どこかで嗅いだことがあるような懐かしさを感じたが、思い出せない。

「まあ、飲め」

ダラスが茶を一口すするのを見て、俺も口に含んでみた。
渋味があるのはいいのだが、香りの強さの方が気になる。
花の香りだよな?

「なぜ、呼ばれたかわかるか」
「まあな」

もう十年以上の付き合いなので流石にわかっている。

「お前の商会に入れってやつだろ」
「わかっているなら、今日は必ず入ってもらうぞ」
「必ず?」

それは、俺が決めることだろう。

「何いって……?」

あれ、なんか腹が熱い?

ダラスを見るとその表情に驚いた。
――まるで、獲物を食らおうとしている獣のように、舌なめずりをしていたからだ。

ま、さか、もられた?

「おまえ、毒を」

この動悸の速さと体の熱さを考えると、毒を盛られたとしか思えない。
呼吸が苦しくなってきた。

「毒? ははっ違うな」
「じゃ、なんだ」
「媚薬だ」
「びやく?」

それは、女をその気にさせる、あの?

「な、なんで、おれに」
「俺はなあ、お前に惚れてから手を出すのを我慢して十年も追いかけて来たんだぞ。お前はガキで男だったからなあ」

ダラスが、俺を?

ガタリと立ち上がったダラスが、俺の隣まで移動してきて体をもちあげられてしまった。

「俺がいいというまで、お前たちは来るなよ」
「ど、うするきだ」

まさかのお姫様だっこに狼狽える余裕もなく、地下部屋へ連れ込まれた。
テントの下にこんなの作りやがって。

寝台に仰向けに転がされ、額をくっつけられた。
今にも唇が触れそうな程に顔が近い。
ダラスは四十路にしては若く見えるし、肉体も鍛えているようで、ほどよく筋肉がついていて、思わず胸元を衣服越しにさわってしまう。

やばい、これじゃ、誘ってるみたいだ!

「なんだ? 俺の身体に欲情したか? ん?」
「ち、ちがう!」
「翻弄された分、たっぷり楽しませてもらうぞ、あの媚薬は特別製だからな、お前は誰に抱かれても悦がり狂う淫乱になるんだ」
「い、いんらん?」

いよいよ頭がおかしくなったのかこいつは。
いや……あれはあの媚薬は……まさか。

「さんざん商売の邪魔をされた分、俺から逃げて振り回した分、さて、どれだけ堪えられるかなあ?」
「は、はなせよ!」
「もう遅い」

ダラスの朱色の目が細められ、視界が暗くなる。
肩すれすれまで伸ばされたこいつの黒髪が、肌にふれてくすぐったい。

くちゅっ

逃げ切れなかった。
唇に吸い付かれて舌を突きいれられて、舌の中心から全身に甘い痺れとなって広がっていく。

なんでゼルフォン様以外に感じてるんだ、俺。

「んんうっ♡ あむうっんんっ♡」

お互い目をあけたままだから、視線が重なる。 
ダラスも小さな声を吐き出して感じているようだ。

こいつの舌、熱くてねちっこいいっ

「あふっ♡ あふうううっ♡」

ビクビクんっ♡

プシャッ!

ちゅぽっ♡

「あ、ひいいいいっ♡」

唇が離れて甲高い声が出た。
てか、おれ、イっちゃったあっ♡

ぜるふぉんさまいがいの男に、キスだけでいかされたあっ

涎を手の甲で拭うダラスが口元を歪めた。

「キスでイくとは、淫乱の素質はあるらしいな?」
「ち、ちが、んなの、ない」
「とろけた顔で言い訳をしても説得力などないぞ? 自慢の口のうまさが役に立たんなあ、かわいそうに」

誰のせいだよ!

「クククッ」

精一杯睨みつけたつもりだが、逆に喜ばせてしまったみたいだ。

「その衣装はよく似合うな、何着めだからは知らんが、いつものお前の衣装で犯せるのは愉しいぞ」
「お、おかす」

ダラスは本気だ。
俺を女みたいにヤるつもりだ。

そうだ、ゼルフォン様はこんな風には俺を辱しめない。
嫌だ。

「いやだ」
「弱々しい声になったな、逃げられないのはわかっているのだろう」
「ふ、ふう」

……そうだ、強がりだ。
だって体が、動かない。

「覚悟しろ」




尻孔を性交用のスライムで掃除をされ解された後、気付けば俺は下半身だけ丸出しにされて、ダラスのイチモツを自ら尻の奥に埋めて腰をへこへこ動かしていた。

「おほおおおおっ♡ んおおおおおおおっ♡」

ギシギシと寝台が俺の下半身の動きにあわせて軋む音が響いている。

「良い乱れっぷりだなあ! そんなに気もちイイか俺のモノは!」
「あひいいいいっ♡ いいいいいんんっ♡」

目の前に見せつけられて頬にずりずりされたらもう我慢できなかった。
むしゃぶりついて口の中に一度出されたから、喉がひりついて渇いてしかたない。
まさかこいつのが、ゼルフォン様並におっきいなんて。

俺、びやくのせいじゃなくて、ほんとうにただの淫乱なのかなあ。

でも、なんで、おれなんかに……。
ひいあああああっ♡ だされるううううっ♡

どぶっ! ぶっしゅううっっ!

「んぎいいいいいいいいいっ♡」

おれのなかでダラスが膨らんで大量にザーメンを吐き出す。
あまりの勢いでおれの腰が浮いてがくがく身体が震えた。
あひゃああああああっ♡ ぎもぢいいいいいいいいっ♡

「いぎゅううううううっ♡」

腰も背中もびくびくするう。
びゅるびゅると俺は反り返ったペニスから白濁をとばしてしまう。

「いいぞ! もっと乱れろ! ずっとその姿が見たかったんだ! たっぷり見せろ!」
「あああっ♡ あああんっ♡ こひとまんにゃあああいいっ♡ ぜるふぉんしゃまあたすけひぇえええっ♡」
「がはははははっ無駄だ! 淫乱商人が!」

めのまえがちかちかすりゅうううっ♡
しゃせいおわんなああいいっ♡

じゅぼおっ♡

あうんっ♡

ダラスにイチモツを引っこ抜かれて、おれは背中から寝台に倒れ込んだ。

も、げんかい、だ……ダラスが愉悦にみちた目でおれを見下ろす。

「俺のモノになれ」

――だれが、おまえなんかに。

「いや」

拒絶するとダラスは口元を釣り上げた。

「ならば、裏の商売で存分にかわいがってやろう、聖騎士に関係をバラされたくなければ、大人しく言うことを聞け」

ゼルフォン様……いやだ、知られたくない。

「……泣くな」

言われて自分が泣いているのに気付く。

「こんなことになるなら、とっとと食っておけば良かったな、お前は絶対に俺のモノにしてみせる」
「うううっ」

俺を抱きしめるダラスは、そんな勝手なことを口走っていた。

これから俺はどうなるんだろう。
どんな顔をしてゼルフォン様と会えばいいのか、分からなかった。



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