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姿を消した子供達

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シルヴィオに連れられて、しばし空を彷徨った後、辿り着いたのはとある小さな街だった。
付近には森があり、そのすぐ傍に屋敷が見える。
あの屋敷に、ジークの想い人が住んでいるのだと説明された。

シルヴィオが居場所を突き止めている事に、素直に驚きを伝えると、件の者の様子がおかしいらしい。
 
ふいに懐からシルヴィオが取り出した手鏡を見せられて、息を飲む。
そこにはぼんやりと椅子に座って、天井を眺めている男の姿が映し出されていたのだ。

「まさか」
「ああ、奴の部屋にある鏡に術をしこんだ」
「い、いつの間に?」
「……こいつは、数年前に家族をなくして今、一人だ」
「な!?」

なんでも儲け話に手を出して、敵対相手に標的にされた家族が襲われたという。
なんとも痛ましい話に、アダルは胸が痛むのを覚えた。
すでにその野蛮な輩はとらえ、処罰されていというのだが、彼の落ち込み様はひどく、このままでは廃人になってしまうのではと懸念する程だ。

シルヴィオとしては、彼とジークを会わせるべきか悩んできたのだが、アダルの意見も聞きたいと問いかけられた。

アダルとしては、今の彼の様子を見ると、新王に縋り付いて悪い影響しか与えないのではと心配になる旨を話した。

シルヴィオは納得した様子で頷くと、ひとまず家に帰る事にする。
 
帰宅した二人を待っていたのは、青ざめたフェリクスの姿だった。連絡をとりたかったが、生憎アダルは連絡手段を持ち合わせておらず、フェリクスは城に向かおうと考えていたのだという。

「子供達がいなくなった?」
「すみません! すみません!!」
「何か言ってなかったか?」

泣きながら謝るフェリクスに対し、冷静な言葉をかけるシルヴィオ。フェリクスは、子供達がアダルとシルヴィオを探し回っているに違いないと項垂れた。

アダルとシルヴィオは急遽城へ戻る事にして、フェリクスには、もしも子供達が戻ってきた時の為に、このまま家で待機して貰う事にする。

「ど、どどうしましょう! あの子達何かに巻き込まれなければよいのですが!」
「焦ってもしかたがない。ルシオはともかく、ルアは力を使えるし、まず何者かに襲われてもそう簡単には怪我を負うまい」
「ですが、まだまだ幼いのです!」
「大丈夫だ。俺達の子供だぞ」
「……っ!」

背中に腕を回されてさすられると、それだけで安心感が広がっていく。

「シルヴィオ様」
「とにかく城へ行こう」
「はい!」

こうして再び城へと向かったのだが、子供達の姿はなく、消息がつかめずにただ焦燥感が増すばかりだった。

ジークは相変わらず部屋に引っ込んだままで、何か手がかりを得られるとは思っておらず確認を怠った。

 *

「お前達の両親となら、ついさっき王間で話していたぞ」
「え、でもいないよお~?」
「俺の術で追いかけるからいこうぜルシオ!」
「う~」

ジークはアダルとシルヴィオの子供が幼いながらも、強い力を秘めていると感じ取り、特に注意もせずに見送る。

なによりもあの二人の顔を、今は見たくなかった。

二人がどれほど困っているかなど、心配する余裕もないくらい、気持ちは沈んでいたのだ。

  
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