四十路の元側近は王だった夫と息子に翻弄される

彩月野生

文字の大きさ
上 下
5 / 17

知らなければならない事

しおりを挟む


ため息を吐いたシルヴィオがアダルの頭を優しく撫でた。
顔をゆるく振ると強い口調で言い放つ。

「断じて何もない」
「私もそう信じたいです、しかし貴方は……以前は好き勝手に寝室に連れ込んでましたよね……」
「……」

図星であろう。かつで王であったシルヴィオの側近であったアダルは、シルヴィオが男女問わず、気に入った相手と床入りをしていたのは知っている。

シルヴィオに恋慕をしていたアダルは、当然やきもきさせられたし、伴侶となった今はなかった事になど到底できない。

肩を抱かれて引き寄せられ、身を寄せ合う。
シルヴィオの肉体の感触と温もりを感じて、頬がゆるむ。
視線を宙へと漂わせ、新王の真意を確かめようと疑問をぶつける。

「陛下は何故、シルヴィオ様と子供を望んだのですか」
「……あいつは、人間不信でな。王族の血も薄い。魔族の俺の血を王家に残したいようだ」
「それは、シルヴィオ様を好いているのでは?」
「そんな筈はない」
「何故ですか?」

断言するのも不思議に思う。
アダルにちょっかいを出したのを考えれば、奔放な性格なのかも知れないが、シルヴィオを見るジークの目は情熱的だったからだ。

「奴は、愛する者に裏切られてな」
「え!?」

一体どういう意味なのだろうか。
詳細を聞いても問題ないのか……話が長くなりそうなので、茶を煎れる事にする。

子供達はフェリクスが面倒をみているようだが、また暴れていないか心配だったが、この機会を逃してはならないと感じた。

卓に向かいあって座り、お茶をすすりながらシルヴィオの話に耳を傾ける。

愛し合っていた幼なじみに捨てられて、自暴自棄になっていた所にちょうどシルヴィオが訪ねたので、事情を知ったのだと。
精神的に不安定な時に、王として国を治めるよう話を持ちかけたので、シルヴィオに依存気味だという。

なかなか帰ってこれなかったのも、ジークの精神が落ち着かないせいだったのだと。

――だからと言って、伴侶のいる相手との子供を欲するなんて。


新王の性格には問題がある。民が知ったら不安になり、反対されるのではないだろうか。
そんな懸念が容易に想像できる――シルヴィオも困り果てた様子だ。

アダルはある強い衝動に駆られて、気付けば言葉にしていた。

「私と新王様の二人きりで、話し合う機会を頂けませんか」
「……なに? 本気か」

アダルの頑固さを知っているシルヴィオは、一度はやめるようにと言葉をかけてきたが、すぐに考えを改めて無茶をするなと苦言を呈して認めてくれた。

こうしてアダルは再び、城へと向かう事となる。




「また来たの? 存外暇なんだね?」
「突然の来訪、申し訳ございません」

深々と頭を垂れて王に挨拶をすると、王は臣下達を下がらせて王間にて二人きりとなった。
玉座から降りたジークがアダルの前に歩いてくると、顔を上げるように促す。

素直に顔を上げたアダルの頬に手を添えられる。
ひやりとした指で思わず手を握り返すと、目を丸くして驚いたような表情を見せた。

子供っぽい態度に笑ってしまいそうなのをこらえ、真剣な気持ちで話を切り出す。

「シルヴィオ様との子供をもうけたいとおっしゃられていた件について……お話を伺いたいのです」

ジークは訝しむように眉根を寄せた。
二人の間に沈黙が流れた。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

年下彼氏に愛されて最高に幸せです♡

真城詩
BL
短編読みきりです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...