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出逢いからの恋
side 凪 side真紀 side未優
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side 凪
森末の事件があってから橘はどんどん憔悴していった。食事を運んでいるがあまり手をつけていないようだ。
俺に何か出来ないかと考えているが、保健室へ連れていくことしか思いつかない。このままでは橘まで倒れてしまう。なんとかしなければ……。
あれから関根は森末の世話をしているようだ。まだ教えてもらってないが、関根は森末が好きなんだろう。あんなに必死になって森末を探していた関根の姿は今までの付き合いの中では知らない姿だった。
関根はおおらかでなんでも受け止めることが出来る度量の大きな奴だ。そんな関根に思われる森末はきっと幸せになれるはず。って俺が考えることではないな。
不甲斐ない俺は、橘に何が出来る?
授業は全く頭に入らないまま時間だけが過ぎていく。
昼食におにぎりを買って保健室まで届けた。すると橘は眠っていた。
「菜々子先生、これ、橘の昼食を持って来ました」
「あら、ありがとう。橘くんも喜ぶわ。きっと」
「橘はあれからずっと眠ってるんですか?」
「ええ、お薬を飲んだから、もうしばらくは眠っていると思うわ」
「そうですか。良かったです。眠られないようだったから。また、放課後にきます」
「そう?それまでには起きていると思うから、橘くんには伝えておくわね」
「はい。じゃあまた」
良かった眠れていて。薬の力は偉大だな。
side 未優
薬のおかげで眠ることができた。目覚めたのは5時限目があと少しで終わる頃だった。
薬を出してもらえたのも、全てこの聖高峰学園だからできることだ。
通常、保険医には医師が配属されることは程んどないらしい。それをこの学園は要所要所に医師を置いている。寮監も医師の資格を持つ人たちだ。
その上菜々子先生は薬剤師の資格も持っている。
「朝比奈くんが放課後迎えに来てくれるって伝言受けているわよ」
「えっ。もしかしてあれからまた来てくれたんですか?」
「えぇ、お昼休みに昼食を持って来てくれたわよ。はい、これ」
おにぎりが二つそこにはあった。
ぽっと心が温まった。
「朝比奈くんって素敵な子ね」
「はい、素敵な人です」
「あら~、惚気られたわ」
くすくす笑っている菜々子先生に僕の気持ちも綻んでいた。
放課後になって伝言の通り朝比奈くんが迎えに来てくれた。クラブは大丈夫なのかなぁ?部屋まで送ってくれるつもりなんだろうか?もうすぐ部屋に着くというところで僕は挙動不審になっていた。
「うん?どうした?」
「あの、えっと、クラブはどうしたの?行かなくていいの?」
「あぁ、ちゃんと許可はとってるから大丈夫だ。関根も許可をとって森末の世話をしてるぞ」
「え、そうなの?だから、世話は必要ないって真紀が言ってたのか」
意外な話を聞いて僕はびっくりだった。あれから、手は足りているから来なくて良いって言われていて、そんなに僕に会いたくないのかと思っていたら違ったようだ。僕は真紀のところに顔を出そうと心に決めた。邪魔になるかもしれないけど、僕も真紀の顔を見たかったし、助けになりたい。
「あの、真紀のところに行きたいんだけど良いかな?」
「あぁ、もちろん。そこまで送って行くよ」
「え、いいよ。1人で行けるよ」
「そっか、じゃあ、あとで夕食を届けるから、ちゃんと食べろよ」
「え、えっと、朝比奈くん良かったら一緒に夕食を食べない?」
「良いのか?」
「うん」
僕のことを気遣ってくれる朝比奈くんに報いたい。僕なんかにここまでしてくれる優しい人。優しい人なのは知っていた。でも、まさかここまでしてくれるなんて思ってもいなかった。そして、僕の言葉に朝比奈くんはとても眩しい笑顔を見せてくれた。僕の胸がドキドキとときめいた。
「6時30分か7時どちらが良い?」
「じゃあ、7時で」
「森末の部屋まで行こうか?」
「えっと、食堂の入り口で待ち合わせしたいな」
「了解、じゃあ、あとでな」
颯爽と左手を挙げて朝比奈くんは去っていった。その姿に僕の頬はほてったままだ。ちょっと深呼吸をして僕も歩き出した。まずは真紀の部屋に行こう。そこにある自販機で真紀の好きなジュースを買ってお土産にしよう。
side 真紀
今回は痛い目にあったなぁ~。
一応犯人は関根が捕まえてくれたらしいけど、真犯人が見つかってないらしいから油断は出来ないと担任の曽根崎と寮監の牧野と渡辺から言われた。保健室に向けて歩いていると、いきなり後ろから口を塞がれたことしか俺も分からない。
心当たりはないのかと言われたが全くない。
ピンポーン
また関根が来たのか?
恥ずかしいけれど来てくれるのは嬉しい。
「は~い。今開けます。よっと、はい、どうぞ」
「ありがとう、大丈夫なの?真紀。てっきり同室の土居くんが出てくれるのかと思った」
「み、未優。うん、まだ痛みはあるけど寝てばかりじゃ、怠けちゃうし、3日もあれから経ったからね」
「はい、お土産。手伝いにくるなったいうから嫌われたのかと思ってた……」
「バカなこと言うな、そんなことある訳ないだろ~。それにはいろいろあって……とにかくジュースありがとう」
「関根くんがお世話しに来てくれてるんでしょ?」
「な、なんで知ってるの~」
「朝比奈くんが教えてくれた。僕も朝比奈くんにいろいろ世話になってて」
「えっ、それってなに?」
その言葉に頬を染めている未優に3日ほど会ったり出来なかったけれど、心配はいらなかったかと胸を撫で下ろした。これからは朝比奈もいてくれるなんて、これほど心強いことはない。
「あの、食事を持って来てもらったり、保健室に連れて行ってもらったり……」
「ふ~ん、良い感じじゃん。そのまま、告白しちゃいなよ~」
「え、え~、む無理、無理、無理、無理」
「そんなこと言わずに言っちゃえ」
ピンポーン
やば、関根がきた。
「あっ、もしかして関根くんかな?じゃあ、僕部屋に戻るよ。7時に朝比奈くんと食堂行くから」
「え、ちょっと、その話も詳しく今度聞かせてよ~」
「じゃあね、はい、どうぞ」
「あ、橘、来てたのか」
「うん、でも、これで失礼するね。じゃあね、真紀」
「未優、またね~」
さて、これから食事をして、湿布を張り替えてもらおう。恥ずかしいけどこんなことも悪くない。さあ、関根との時間を楽しもう。
side 凪
橘は眠ることが出来たおかげか、顔色も良くなっていて安心した。睡眠は偉大だと思わずには言われない。保健室に連れて来て本当に良かった。
部屋に戻るとソファに座り込んだ。
約束の7時までには時間がある。汗を流してこよう。
好きな人に会うなら、清潔で会いたい。少しでも良く思われたいのが恋する男の心情と言うものだろう。いつも付けているコロンも付け直して鏡の前で笑顔の練習。
なんだか前にもこんな事あったなぁ~。
「やべっ!」
呑気にしていたら時間が迫っていた。
慌ててジーパンと白のTシャツに長袖の薄いブルーのシャツを羽織って部屋をと飛び出した。
食堂の入り口に橘はすでに到着していた。
ベージュのフリースツイルパンツに長袖の白ベースに黄緑のボーダーのカットソーの姿は可愛いくて鼻血が出るかと思った。
「ごめん、待ったか?」
「ううん、待ってないよまだ約束の時間じゃないし。僕が早かったんだ」
そう言ってはにかむ姿は思いっきり抱きしめたくなった。ダメだしっかり思考を保たなければ。
「じゃ、入ろうか」
「うん」
「何を食べる?先に席を取っておいてくれないか?」
「うん、わかった。じゃあ、キツネうどんをお願いします」
「それだけで良いのか?」
「うん。少ないかな?」
「おう、少ないぞ。おにぎりでも付けてくるよ」
「うん、ありがとう」
橘が席を取りに行くのを確認して俺は食事を取りに向かった。
日替わりと橘の希望のうどんとおにぎりを取ると、橘の待つ席に向かった。
森末の事件があってから橘はどんどん憔悴していった。食事を運んでいるがあまり手をつけていないようだ。
俺に何か出来ないかと考えているが、保健室へ連れていくことしか思いつかない。このままでは橘まで倒れてしまう。なんとかしなければ……。
あれから関根は森末の世話をしているようだ。まだ教えてもらってないが、関根は森末が好きなんだろう。あんなに必死になって森末を探していた関根の姿は今までの付き合いの中では知らない姿だった。
関根はおおらかでなんでも受け止めることが出来る度量の大きな奴だ。そんな関根に思われる森末はきっと幸せになれるはず。って俺が考えることではないな。
不甲斐ない俺は、橘に何が出来る?
授業は全く頭に入らないまま時間だけが過ぎていく。
昼食におにぎりを買って保健室まで届けた。すると橘は眠っていた。
「菜々子先生、これ、橘の昼食を持って来ました」
「あら、ありがとう。橘くんも喜ぶわ。きっと」
「橘はあれからずっと眠ってるんですか?」
「ええ、お薬を飲んだから、もうしばらくは眠っていると思うわ」
「そうですか。良かったです。眠られないようだったから。また、放課後にきます」
「そう?それまでには起きていると思うから、橘くんには伝えておくわね」
「はい。じゃあまた」
良かった眠れていて。薬の力は偉大だな。
side 未優
薬のおかげで眠ることができた。目覚めたのは5時限目があと少しで終わる頃だった。
薬を出してもらえたのも、全てこの聖高峰学園だからできることだ。
通常、保険医には医師が配属されることは程んどないらしい。それをこの学園は要所要所に医師を置いている。寮監も医師の資格を持つ人たちだ。
その上菜々子先生は薬剤師の資格も持っている。
「朝比奈くんが放課後迎えに来てくれるって伝言受けているわよ」
「えっ。もしかしてあれからまた来てくれたんですか?」
「えぇ、お昼休みに昼食を持って来てくれたわよ。はい、これ」
おにぎりが二つそこにはあった。
ぽっと心が温まった。
「朝比奈くんって素敵な子ね」
「はい、素敵な人です」
「あら~、惚気られたわ」
くすくす笑っている菜々子先生に僕の気持ちも綻んでいた。
放課後になって伝言の通り朝比奈くんが迎えに来てくれた。クラブは大丈夫なのかなぁ?部屋まで送ってくれるつもりなんだろうか?もうすぐ部屋に着くというところで僕は挙動不審になっていた。
「うん?どうした?」
「あの、えっと、クラブはどうしたの?行かなくていいの?」
「あぁ、ちゃんと許可はとってるから大丈夫だ。関根も許可をとって森末の世話をしてるぞ」
「え、そうなの?だから、世話は必要ないって真紀が言ってたのか」
意外な話を聞いて僕はびっくりだった。あれから、手は足りているから来なくて良いって言われていて、そんなに僕に会いたくないのかと思っていたら違ったようだ。僕は真紀のところに顔を出そうと心に決めた。邪魔になるかもしれないけど、僕も真紀の顔を見たかったし、助けになりたい。
「あの、真紀のところに行きたいんだけど良いかな?」
「あぁ、もちろん。そこまで送って行くよ」
「え、いいよ。1人で行けるよ」
「そっか、じゃあ、あとで夕食を届けるから、ちゃんと食べろよ」
「え、えっと、朝比奈くん良かったら一緒に夕食を食べない?」
「良いのか?」
「うん」
僕のことを気遣ってくれる朝比奈くんに報いたい。僕なんかにここまでしてくれる優しい人。優しい人なのは知っていた。でも、まさかここまでしてくれるなんて思ってもいなかった。そして、僕の言葉に朝比奈くんはとても眩しい笑顔を見せてくれた。僕の胸がドキドキとときめいた。
「6時30分か7時どちらが良い?」
「じゃあ、7時で」
「森末の部屋まで行こうか?」
「えっと、食堂の入り口で待ち合わせしたいな」
「了解、じゃあ、あとでな」
颯爽と左手を挙げて朝比奈くんは去っていった。その姿に僕の頬はほてったままだ。ちょっと深呼吸をして僕も歩き出した。まずは真紀の部屋に行こう。そこにある自販機で真紀の好きなジュースを買ってお土産にしよう。
side 真紀
今回は痛い目にあったなぁ~。
一応犯人は関根が捕まえてくれたらしいけど、真犯人が見つかってないらしいから油断は出来ないと担任の曽根崎と寮監の牧野と渡辺から言われた。保健室に向けて歩いていると、いきなり後ろから口を塞がれたことしか俺も分からない。
心当たりはないのかと言われたが全くない。
ピンポーン
また関根が来たのか?
恥ずかしいけれど来てくれるのは嬉しい。
「は~い。今開けます。よっと、はい、どうぞ」
「ありがとう、大丈夫なの?真紀。てっきり同室の土居くんが出てくれるのかと思った」
「み、未優。うん、まだ痛みはあるけど寝てばかりじゃ、怠けちゃうし、3日もあれから経ったからね」
「はい、お土産。手伝いにくるなったいうから嫌われたのかと思ってた……」
「バカなこと言うな、そんなことある訳ないだろ~。それにはいろいろあって……とにかくジュースありがとう」
「関根くんがお世話しに来てくれてるんでしょ?」
「な、なんで知ってるの~」
「朝比奈くんが教えてくれた。僕も朝比奈くんにいろいろ世話になってて」
「えっ、それってなに?」
その言葉に頬を染めている未優に3日ほど会ったり出来なかったけれど、心配はいらなかったかと胸を撫で下ろした。これからは朝比奈もいてくれるなんて、これほど心強いことはない。
「あの、食事を持って来てもらったり、保健室に連れて行ってもらったり……」
「ふ~ん、良い感じじゃん。そのまま、告白しちゃいなよ~」
「え、え~、む無理、無理、無理、無理」
「そんなこと言わずに言っちゃえ」
ピンポーン
やば、関根がきた。
「あっ、もしかして関根くんかな?じゃあ、僕部屋に戻るよ。7時に朝比奈くんと食堂行くから」
「え、ちょっと、その話も詳しく今度聞かせてよ~」
「じゃあね、はい、どうぞ」
「あ、橘、来てたのか」
「うん、でも、これで失礼するね。じゃあね、真紀」
「未優、またね~」
さて、これから食事をして、湿布を張り替えてもらおう。恥ずかしいけどこんなことも悪くない。さあ、関根との時間を楽しもう。
side 凪
橘は眠ることが出来たおかげか、顔色も良くなっていて安心した。睡眠は偉大だと思わずには言われない。保健室に連れて来て本当に良かった。
部屋に戻るとソファに座り込んだ。
約束の7時までには時間がある。汗を流してこよう。
好きな人に会うなら、清潔で会いたい。少しでも良く思われたいのが恋する男の心情と言うものだろう。いつも付けているコロンも付け直して鏡の前で笑顔の練習。
なんだか前にもこんな事あったなぁ~。
「やべっ!」
呑気にしていたら時間が迫っていた。
慌ててジーパンと白のTシャツに長袖の薄いブルーのシャツを羽織って部屋をと飛び出した。
食堂の入り口に橘はすでに到着していた。
ベージュのフリースツイルパンツに長袖の白ベースに黄緑のボーダーのカットソーの姿は可愛いくて鼻血が出るかと思った。
「ごめん、待ったか?」
「ううん、待ってないよまだ約束の時間じゃないし。僕が早かったんだ」
そう言ってはにかむ姿は思いっきり抱きしめたくなった。ダメだしっかり思考を保たなければ。
「じゃ、入ろうか」
「うん」
「何を食べる?先に席を取っておいてくれないか?」
「うん、わかった。じゃあ、キツネうどんをお願いします」
「それだけで良いのか?」
「うん。少ないかな?」
「おう、少ないぞ。おにぎりでも付けてくるよ」
「うん、ありがとう」
橘が席を取りに行くのを確認して俺は食事を取りに向かった。
日替わりと橘の希望のうどんとおにぎりを取ると、橘の待つ席に向かった。
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