見えない想いの行く末

花戸あみ

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出逢いからの恋

side凪

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side 凪

 俺の入寮の日、天気は晴天。陽気も上々。気分はハッピー。
 ワクワクで学園の門をくぐり、荷物はすでに寮に送っていて身の回りのいつもの鞄で寮に到着した。

「おはようございます。2年4組の朝比奈です。今日からよろしくお願いします」
「おはよう、寮監の渡辺です。もう1人、牧野というものもいますが、本日は席を外しています。よろしくお願いしますね。じゃあ、案内しますね。こちらから4階に行きましょう荷物はもう部屋に運んでいますから」

「はい、ありがとうございます」

 エレベーターで運ばれ部屋に到着すると、鍵や、部屋の説明を受けた俺は、想像よりも広い1人部屋にびっくりしていた。

「広いんですね」
「そうだね、衣食住を大切にするのがこの学校のポリシーだからね。うちの寮は恵まれていると思うよ。あ、それにこの部屋のベッドは前の子が体格の良い子でね。自腹でベッドを購入してくれてね、それを置いて行ったから長身の朝比奈くんもゆったり眠れると思うよ」

「すっごくありがたいです。食堂もあるし、これで寮費が月1万円は絶対安いですね」
「そう言ってもらえて、寮監としてありがたいよ。じゃ、また、わからないことがあったらいつでも聞いてくれる?」
「はい、わかりました。ありがとうございました」

 部屋で渡辺先生を見送って荷物の整理をしていると、関根から連絡が入った。

「お疲れ、片付けはどうだ?」
「順調だ、そんなことで電話か?」
「いや、昼でもどうかと思ってな」
「そういや、お腹も減ってきたな、案内よろしく頼むよ」
「おう、じゃあ、2階の食堂の入り口まで降りてこいよ。10分後に待ってるぞ」
「了解、サンキューな」

 部屋をぐるっと見回すと、自分の部屋って感じがしてきた。
 だけど、2人部屋に案内されると思っていたから、少し、拍子抜けもしていた。

「さて、お昼に行きますか」

 ちょっと凝った肩を解すために組んだ腕を天井に向かって伸びをした。そうして、部屋を施錠して約束の場所に向かった。

 食堂に向かってエレベーターで降りて歩いているとあるグループの噂話が耳に入ってきた。

ー2年4組の橘のやつ、昨日入院したらしいぞ。
ーそうなのか?
ーあぁ、昨日の夜、寮監の牧野に連れられて病院に入ったらしい。
ーだから、牧野のやついなかったんだ。
ーそうそう。

 今の話はいったいなんだ?
 入院?誰が入院した?橘が?
 聞いてないぞ!聞いてない!!!

 食堂の入り口にいる関根を見た瞬間、俺は関根の服の襟を締め上げていた。

「何、すんだ、お前」

 はっと、正気に戻って掴んでいた手を離した俺は関根の肩に手を乗せて、関根を揺さぶった。

「橘が入院したって本当なのか?どうなんだ?」
「あぁ、本当だ。夕べ運ばれた」
「知らなかった」

 腕をだらんと伸ばして、脱力した。分からない事ばかりでおたまがぐるぐるしていた。

「大丈夫が朝比奈?」
「夕べ何かあったのか?」
「いや、それは分からない。乾がいる時だったらしい」
「乾って、数学の乾か?」
「そうだ」
「なんで、乾が部屋に行くんだ?」
「それは、俺には分からない。すまない」

 2人で入り口で話し込んでいるとそこに森末が現れた。

「ごめんね、時間に遅れてしまった」
「いや、大丈夫だ」

 関根が森末に声をかけたようだ。2人はいつの間にか思った以上に仲良くなったようだ。

「どうしたの?」
「今、橘が入院した話をしていたんだ。森末は何か知ってるか?」
「乾先生から連絡が来て、明日には退院してくるって聞いたよ」
「そうなのか?でも、なんで乾から連絡が来るんだ?」
「あ、それは親戚なんだよ。2人は」
「親戚?そうなのか……。お見舞いには行けるのか?」
「それはどうだろう?僕にも分からないな~」
「とにかく、食堂に入るか?」
「いや、俺はこのまま部屋に戻るわ」
「そっか、分かった。ゆっくりして、未優の様子が分かったら連絡するから、番号の交換しない?」
「こっちこそ頼むよ」
「朝比奈、何かあったらいつでも連絡しろよ」
「おう、ありがとな。またな」

 俺は、混乱する頭を冷静にリセットするために部屋に戻った。
 乾が親戚で、橘の部屋に訪れているということ。寮に入ることでそれだけのことを知ることができた。

 今まで知らなかったことを知ることができた。でも、心が辛い。もっと近くに行きたい。近くにいればもっと何か手助けが出来るはず。もっと知りたい。近くに行けるように何が出来るかもっと考えよう。
 そうだ、前に進まなければ。
 起こったことに囚われず前に進もう……。
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