月夜の華

のの(まゆたん)

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贈り物と来訪者

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「見事な金の冠に 翡翠のかんざし 金銀の宝飾品ね
それに鮮やかで美しい絹の山」

「素晴らしい贈り物ですね 絹はどんな衣装に仕立てましょうか?」

「任せるわ 興味ない これは私へのご褒美かしら
それとも 私の身体にご満足したというより 体面かもね」

「大王が御嫌いですか?」

「・・・少々年寄りだけど 見目は悪くない 身体も兄上のように鍛えて整ってる」

「少し乱暴な処が好きじゃない あれだけの寵姫がいるのだから
別に私を当てにしなくても良くなくて?」


「それは 少々手厳しいかな 妃」

「大王!」「王様」

「いやなに まだ此処に慣れない若い王妃の事が気になってな

確かに 国の為に こうして慣れぬ寒い国に来たのだから
不機嫌なのも身体が思わしくないのも分かるのだが・・」

「こうしてご機嫌伺いに来たわけだ」

「・・・・・」

「そのように警戒しなくてもよい
何か他に欲しいものは?」

「・・・・・・」

「我が王妃? すでに契りは交わした

そなたは この後宮の唯一の妃 
前の妃は亡くなりただ一人なのだから・・」

「願いを叶えたからと言って
また無理強いはせぬ 好きにすれば良い」

「・・・面白い書物が読みたいですわ
それに故郷のように 庭園に沢山の花々が見たいです

それに・・蜜柑やすももなどの果実が沢山食べたい」

「ふむ 書物は竹簡(ちくかん)や木簡(もっかん)が王宮の書庫に多数ある
必要なら 幾らでも取り寄せよう

果実は南の国と取引のある商人達に申し付ける
ライチなどの珍しい果実も取り寄せよう 
もっと南 東南にも多数ある」

「花の庭園は 春になれば沢山の花々を植えさせよう
花の咲く木々も 春は一斉に花が咲く それは見事なものだ」

「・・・・・・」

「早く身体を癒すように 
ああ、風呂を好きなだけ入れるように 沢山のマキも届けさせよう」

「侍医に薬師どもに 
身体に良い薬に 寒さから守れるショウガなどの食材の調合
後で来させよう」

「・・・王妃に相応しい装いに 後宮の主としてのふるまいを
我は望むだけだ」

「では 我が王妃」
そう言ってそっと肩に手を置いて立ち去った

部屋の庭先へと降り立ち 軽々と塀を越えて立ち去った


すぐ後に バタバタと他の女官が来て

「すいません 王様が来られて 止める間もなく
お部屋に・・」

「いいのよ 今帰られたから」

「はい 今 お帰りになられました」月花
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