上 下
102 / 115

二人の王子と仏蘭西(フランス)の王宮

しおりを挟む
此方はフランスの王宮
「では父王はご無事で過ごされているのでしょうか?」
「父上‥厳しい取り調べとか、まさか拷問とか」
二人のまだ幼い王子が涙を浮かべて 安否を問うた。

「‥‥」交渉の中心人物のフランソワの母ルイーズ皇后は沈黙したままである。

「いえ、御心配には及びません スペイン王であり神聖ローマ皇帝カール5世陛下は
フランク王国から続く フランス王国
高貴なヴァロア朝の王 フランソワ陛下を乱暴に扱う事はありませんゆえに」
リラダン総長がやんわりと断言する。

「しかし、厳しい詰問などは‥」
と此処で何故か吟遊詩人であるシオンはぽつりと漏らす

「住まいなどのお暮しは不自由されておられませんでしょうか?
それにお食事など もしや、実は普段は石牢屋などに?」
涙を浮かべて貴婦人たちが言う
「ああ、敵に囲まれ、どんなにか‥」これまた貴婦人

悪運が強く、世渡りが上手い王の事を知る家臣たちは
何とも言えぬ顔をしている
「スペイン王宮で貴婦人や貴族をたぶらかすなどのいつも悪さを‥」
「間違いない」「貢ぎ物・・いや贈り物を貰っているとも商人から聞いたが」

「そうですね 確かに取り調べは‥」シオン
「まああ、なんて事でしょう!」涙を流す貴婦人の一人

「シオン」リラダン総長 
「正確には『取り調べ』という『茶会』に『遠乗り』でしたが‥」シオン

「国務の為にもフランソワ陛下には戻って頂かないと」家臣

「大事な父王の為に 身代わりの人質ですね」震える声で王子の一人
「……」涙を浮かべ 震える幼い王子たち 
父と同じ名を持つ長子フランソワと次男アンリ

王の解放 その為に二人の王子はスペイン側の人質となるという

「身の安全は保障されます 扱いも王族として相応しく」

今度は家臣や貴婦人たちが長子のフランソワ王子たちを取り囲み、慰めの言葉を口々にしている
次男の王子には忘れられたように誰もいないように思えたが‥

そこに金の髪をした妖精のように綺麗な女性
うら若いそれは美しい貴婦人が
次男のアンリ王子を心配して涙を流しながら抱きしめる
「王子さま」「あ、あ‥あの」

後には次男アンリがアンリ2世となり、この時の年上の美しい貴婦人
彼の生涯で深く愛したデイアーヌ・ポワテイエを愛妾にするのは後々の話であり
アンリ2世の妃にはカトリーヌ・ド・メデイシス(メデイチ)となる事もまた‥
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遠き道を -儒者 林鳳岡の風景-

深川ひろみ
歴史・時代
「僧と共に先聖先師の前には立てぬ」  林鳳岡が少年の日に出会った儒者は、厳しい口調でそう言った。京から下ってきたばかりのその男の名は、山崎闇斎。初夏の日射しが地に落とす影にも似た、くっきりと鮮やかなその姿が、幕府に仕える林家の在り方を当たり前のものとしてきた少年の内に疑念を目覚めさせる。  創作歴史小説。舞台は江戸初期、明暦年間から始まります。時の将軍は四代目徳川家綱。祖父羅山、父鵞峰の跡を継ぎ、林家三代目として、後に幕府が命じる初めての大学頭となる林鳳岡の物語。 【主な登場人物】 林春勝  林羅山の息子。鵞峰と号する。羅山の跡を継ぎ、幕府の儒臣となる。 林春常  春勝の次男。後に信篤と名乗る。鳳岡と号する。 林春信  春勝の長男。梅洞と号する。春常より一歳年長。 林守勝  春勝の六歳年少の同母弟。読耕斎と号する。 山崎闇斎 京から江戸へ下ってきた儒者。春勝と同年生まれの儒者。後にその門流は崎門といわれた。 「小説家になろう」にも投稿済みです。

中の御所奮闘記~大賢者が異世界転生

小狐丸
ファンタジー
 高校の歴史教師だった男が、生徒達と異世界召喚されてしまう。だが、彼は生徒達の巻き添え召喚だった。それでも勇者である生徒をサポートする為、彼は奮闘する。異世界を生き抜き、やがて大賢者と呼ばれる様になった男は、大往生で寿命を終える。日本に帰ることを最後まで夢みて。  次に男が目を覚ますと、彼は日本で赤ちゃんとして生まれ変わっていた。ただ平成日本ではなく、天文年間であったが…… ※作者の創作を多分に含みます。史実を忠実に描いている訳ではありません。

日本国を支配しようとした者の末路

kudamonokozou
歴史・時代
平治の乱で捕まった源頼朝は不思議なことに命を助けられ、伊豆の流人として34歳まで悠々自適に暮らす。 その後、数百騎で挙兵して初戦を大敗した頼朝だが、上総広常の2万人の大軍を得て関東に勢力を得る。 その後は、反平家の御家人たちが続々と頼朝の下に集まり、源範頼と源義経の働きにより平家は滅亡する。 自らは戦わず日本の支配者となった頼朝は、奥州の金を手中に納めようとする。 頼朝は奥州に戦を仕掛け、黄金の都市と呼ばれた平泉を奥州藤原氏もろとも滅ぼしてしまう。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

楽将伝

九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語 織田信長の親衛隊は 気楽な稼業と きたもんだ(嘘) 戦国史上、最もブラックな職場 「織田信長の親衛隊」 そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた 金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか) 天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

尾張名古屋の夢をみる

神尾 宥人
歴史・時代
天正十三年、日の本を突如襲った巨大地震によって、飛州白川帰雲城は山津波に呑まれ、大名内ヶ島家は一夜にして滅びた。家老山下時慶の子・半三郎氏勝は荻町城にあり難を逃れたが、主家金森家の裏切りによって父を殺され、自身も雪の中に姿を消す。 そして時は流れて天正十八年、半三郎の身は伊豆国・山中城、太閤秀吉による北条征伐の陣中にあった。心に乾いた風の吹き抜ける荒野を抱えたまま。おのれが何のために生きているのかもわからぬまま。その道行きの先に運命の出会いと、波乱に満ちた生涯が待ち受けていることなど露とも知らずに。 家康の九男・義直の傅役(もりやく)として辣腕を揮い、尾張徳川家二百六十年の礎を築き、また新府・名古屋建設を主導した男、山下大和守氏勝。歴史に埋もれた哀しき才人の、煌めくばかりに幸福な生涯を描く、長編歴史小説。

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

処理中です...