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想い出 薔薇水とトプカプ宮殿

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ヴィクトリアンは微笑みながら 思い出し笑いをしていた。
手にある蜂蜜で甘くした薔薇水、それに同じく薔薇やハーブから作られた化粧水
「いい香りですこと うふふ」ヴィクトリアン

オスマン帝国、そのトプカプ宮殿に女官として潜入それから‥
頼まれた
化粧用の薔薇水に それとは別に飲み物用の薔薇水
菓子クルミ入りのバクラヴァなどを運ぶ

「あら?」柱の陰、エントランスの中庭に二人の人物
会話しながら小さなテーブルの薔薇水を飲む下すヒュレカム皇妃

大宰相のイブラヒムとスレイマン大帝の妃ヒュレカム その二人が話し込んでいた
実はヒュレカムは東欧のキエフ大公国かロシア方面から浚われて
奴隷として売られるはずだったが 
イブラヒムが彼女を引き取り大抵に献上したのだった。

「貴方はムスタファ皇子を皇帝に推すのですか?」「ヒュレカム妃さま」
「ムスタファ様は貴方様の子ではありませんが 
長男で優秀で軍部からも皆慕われていつのは確かです」

「貴方が私を後宮に送り込んだくせに 優しい言葉で何度も慰めておいて
跡継ぎ以外は殺されるかも知れないのに 私の大事な息子たち」

「血のつながった息子たちなら殺し合いは無いかもしれないのに
でもムスタファの場合ならば・・?」

ギリシャ系の整った顔立ち イブラヒムは愛想よくにこやかに微笑んだ
イブラヒム、彼もまた 元は奴隷の身分 ギリシャ方面から連れて来られたのだった

だが、あまりスレイマン大帝と変わらぬ年齢 
幼少期からスレイマン皇子だった頃から彼に傍仕え、小姓として仕えた
まるで仲の良い兄弟のように‥ 

くすくすと笑うビクトリアン

溺愛されて ただ一人
奴隷の身分から解放 初めての正式な結婚をした皇妃 ヒュレカム妃
もうヒュレカム様の存在は大きくなり イブラヒム様の手駒として使えない
それとも‥
子供時代から傍にいたスレイマン大帝さまを奪われたような気がするのかもね

・・息子たちはいずれ、殺し合うか殺される運命
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