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異母妹テイの身代わり、犠牲

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ゆっくり 首だけ左右に振り動かす・・そして また気を失いかけた時に

声がした・・テインタルの声・・また幻聴か・・ぼんやりと上を向く

目の前にいたのまテインタル王女 アムネジア・・

「・・テイ?」 幻覚かも知れない・・でも・・もしや

テインタルは涙を浮かべ流す・・

「なんて・・惨い・・アーシュ兄様」テインタル


「本当に・・テイか?」アーシュ

「そう 私・・ 今助けるわ!」テインタル

幾つもの呪文を試すテイ 「風のかまいたち!」 「大地の精霊!水晶を砕け!」

「・・無駄だ・・テイ・・」アーシュ

涙がテインタルの瞳に浮かぶ・・

「・・この頃 魔法が使えないの・・そのせいかしら・・

身体も弱り 時々 気が遠くなったり・・眩暈がしたり・・

えっ!・・アーシュ兄さまのその顔・・何か知っているのね・・」

「・・テイ・・」弱弱しくアーシュは言う・・

何も言わずにアーシュの顔に触れる・・

金色の瞳に変わるテインタル・・過去見の力を使う

「そう・・そうだったの・・」

再び 元の焔色の瞳に戻る・・

「・・何をしても 無駄だ・・テイ 俺を殺せ・・
このまま 嬲り殺しになるのは嫌だ・・」

「それに あの魔法使いが もう少しで蘇ってしまう・・俺の命と魔力と引き換えにして・・」

「・・そんな事はさせない・・それに 私の命を使っても 貴方を助けるわ」テインタル

「・・・戦は アルテイシアが大将となり 勝利をおさめたわ・・

8年前にね・・ その間 解放された私はアルテイシアの傍で 安らかな幸せな時間を持てた・・

こんな私を受け入れて 廻りの人達も優しく接してくれた・・

アーシュ兄様・・

リアン殿が 王となって・・今は 黒と白の国は 一つになり その国を治めてる・・」


「貴方を探し出すのに 8年かかった・・・

もうすぐリアン殿達が迎えにくるわ 私は一足先に飛んで来たの」

自分の服を少し脱ぎ 身体にしまってある 背中の漆黒の翼を広げて見せるテインタル

・・それから その翼を身体の中にしまい 再び自分の服を整える

「・・可哀そうに・・8年もの間 たった一人で・・

 こんな所で・・無数の水晶に貫かれ 一人で苦しんで・・」

「・・・愛してる 私のお兄様」 

「私の・・もう一人の火竜王(サラマンデイア)」瞳には涙


アーシュの顔を両手でそっと包み込み その唇に自分の唇を重ねるテインタル



「・・今 助ける」テインタル

今度は アーシュが金色の瞳に変わる ハッとする

 テインタルが何をしようとするのか 瞬時に知る

「やめろ!テイ 身代わりなどになるな! 俺を殺せ!テイ」

「・・・いずれにしろ この呪いの入れ墨のせいで 
数年内に私は死ぬのよ・・アーシュ兄様・・」

「魔法使いが死ぬ寸前にアーシュ兄様にそう言った・・」微笑むテインタル


テインタルは呪文を叫ぶように唱える

「私は火竜王(サラマンデイア) 先の黒の王・竜の王の娘!すべての精霊よ! 

 我 この身を もう一人の火竜王と入れ代えろ!」

ザックッザック!にぶい音を立てて 無数の水晶が一瞬にしてテインタルの身体を貫く!
「はうっ!!」

代わりにアーシュの身体を貫いていた パキン パキンと音を立てて 水晶が砕け散る

「テイ!」よろめきながらアーシュはテインタルのもとに行く・・

「キスして・・最後の願いよ・・そして とどめを・・

私の場合は あと2年かかる・・わかるの・・」口から血が滴る

今は金色の瞳のテインタル

はあ・・と息を吐くテインタル

「・・アーシュ兄様
この水晶に貫かれたこの痛みに 8年も よく耐えられたわね・・

私なら耐え切れずに舌を咬み切っていたと思う 可哀そうに」テインタル


「・・俺も耐え切れずに 何度か舌を咬み切りそうになった」アーシュ

テインタルの頬を優しく撫ぜる


「すまない・・テイ・・許してくれ」そっと唇を重ねる


そして・・アーシュは 痛みを感じなくさせる麻痺の呪文を唱えた・・

「・・優しいのね アーシュ兄様・・」微笑むテインタル


「・・本当にすまない・・」アーシュ

「私の愛しい もう一人の火竜王(サラマンデイア)・・」テインタル

「・・・いいの さよなら・・アーシュ兄様 愛してる」

「時の向こう側でエイルと一緒に待ってるわ」焔色の瞳で微笑む テインタル


短い呪文を唱え アーシュの左手に光の玉が出現する  それは光る小さなナイフになる 

それをテインタルの首筋にあて 一気に斬る

血が噴き出す

「ぐっ」そのまま事切れるテイ・・テインタル


「・・・・」沈黙して 目を閉じるアーシュ

遠くから声が響き聞こえてくる

アーシュはそのまま 気を失い倒れた・・
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