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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~

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 男たちが朝の茶をたしなむあいだ、レニーは手早く鍋に野菜とハーブとチーズを入れて煮込み、スープを仕上げた。
 昨日の鹿肉も美味しかったが、このクリーミーな野菜スープもほっこりと体と心を温めた。

「そろそろ出発しよう」

 パロスの言葉で男たちが各々装備を整え始めた。

「レニーはここで待て。夕食の前には戻ってくる」
「あら、パロス兄さん、わたしだけのけ者にするつもり?」

 レニーも毛皮の厚いコートを手に立ちあがった。

「しかし、レニー」
「はるばる見えたお客様に、干し肉とクオーシア酒しかふるまわないなんて、そんなことできないわ」
「そんなことはない……、むこうでなにか仕留めるつもりだ」
「だったら、私がそれを料理します」

 コートを着て帽子を被ったレニーは、食材などが入っていると思しき籠を手に、すっかり準備を整えていた。



 一行が洞穴を出ると、外は一面ほの青い光に照らされていた。

「こ、これは……!」

 まるで、氷の中の洞窟のようだ。

「冬の間は、雪と冷気で一面が氷の壁になるんだ。春は、フスム苔の黄色の壁。夏は、緑の壁。秋は、苔がオレンジ色に染まる」
「この氷の壁の中、紫色したなにかがキラキラしていますよ。これはなんですか?」

 アルロがどこか子どもっぽい好奇心の声を上げた。

「フムス苔の胞子の塊だ。その塊がないところは、苔の寿命が終わったところだ」

 ヴェルハーストは目に焼き付けるように景色を眺めた。

「クーオルトゥといい、この苔といい、ここには地上とは異なる生態系があるようですね……」
「昨日は真っ暗だったから、なにひとつわからなかったな。しかし、これはなかなかに美しい」

 イサイアスも珍しく感嘆を漏らした。
 そうこうしていると、パロスが口笛を吹いたらしく、はるか上から軽やかな音が響いてきた。
 チュレは真っ白の毛並みを光らせて、氷の壁と同じ色の瞳でパロスの前に現れた。

「チュレ、レニーを頼む」
「まあ、パロス兄さんたら、わたしは大丈夫よ。シャータの場までだって、ひとりで行ったことあるのよ」
「籠で手がふさがっている。転んだら危ないだろう」

 レニーがまだなにか言いたそうな顔をしている間に、チュレがレニーのそばにやってきた。
 チュレは甘えるようにレニーに鼻を摺り寄せた。
 レニーは籠からパンを取り出すとチュレに与え、チュレがうまそうに食べているのを眺めている間に、レニーは気を取り直したらしい。

「わかったわ。みんなのお昼ご飯を台無しにしできないもの」
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