【シリーズ1完】白獣の末裔 ～古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術～シリーズ2

【シリーズ2】白獣の末裔 ～古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術～

（7）

　こんなに厳しい環境の中では、人は動物の力を借りなくては到底生きていけないのだ。そう考えると、白オオカミのチュレはなんと頼もしい仲間なのだろうか。いつぞやは、恐怖の対象でしかなかった獣が、今は心強い味方になってくれている。
　これもすべて、パロスら白の民の、古の術というやつなのだろうか。アルロは不思議に思いながら、前に進んだ。



　暗い道を進んでいくと、一行の行く先に松明の灯りが見えた。
　遠目にはなにがあるのかわからなかったが、近づいてみると、そこは、洞穴のような横穴の入り口らしいことがわかった。
　穴の入り口は、厚い布のカーテンで閉ざされていた。

「レニー、戻ったぞ」

　パロスがコリヤーレーン語で声をかけると、カーテンの奥から物音がした。

「おかえりなさい！」

　カーテンをよけて出てきた少女の明るい目に、一瞬で、イサイアスは目を奪われた。

（ノラ……！）

　思わず、駆け寄って抱きしめたい衝動を、なんとかこらえた。

「王子、そのように熱心に見つめてはいけませんよ」

　ヴェルハーストのささやきに、はっとして、イサイアスはようやく目を伏せた。

「さあ、みなさん、寒かったでしょう。どうぞ、入ってください」

　レニーの招きに応じて横穴に入っていく三人を見やったあと、パロスはチュレに餌を与えて語りかけた。

「チュレ、お前はしばらく外だ。悪いな」

　チュレは少しばかり顎を引いてパロスを見たが、すぐに闇の中へ消えていった。