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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~
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湿った空気と冷たい風だけが頬をなでる地の底。
三人はそれぞれに腕や手をすり、足踏みをしながら凍える体を温めようとした。
しかし、それもこの狭いゴンドラの中では互いにぶつかり合い、イライラは募るばかりだ。
「もういい、俺は出るぞ」
「だめです、王子」
「離せ。アルロ」
そんな押し問答をしていると、突如、テーンともターンとも言えない響きが上から降ってきた。
「あっ、音が近づいてきます」
アルロの差すほうを見ると、暗闇の中にかすかにうすぼんやりと光るものが毬のように落ちてくるのが分かった。
「あれは、白オオカミでは。パロスが降りてきたようですね」
「しかし、この闇の中、灯りもともさずに降りてくるとは……」
白い影はあっというまに崖をつたい、ゴンドラのそばへ降り立った。
白い大きなオオカミの背には、荷を背負ったパロスの黒い影が見えた。
「待たせた。今灯りをつける」
パロスがランプに火をともすと、イサイアスたちはようやくこの深い崖の底を見ることが出来た。
雪と氷と、黒々とした岩肌。見上げる限り続く、闇。天空にあったはずの星空はかすかにあの裂け目がそうだったはずだという程度にしかわからない。いや、それすらも定かではなかった。灯りがつけばほっとするかと思ったが、着いたがゆえに深い地の底にいるのだと思い知らされ、三人は言葉に出せない不安を飲み込んだ。
三人がゴンドラを下りると、パロスはランプで行く先を指した。
「ここから少し歩く。俺の後をついてきてくれ。脅かすわけじゃないが、あまり道をそれると、陥没したすき間や氷筍で怪我をする。チュレ、みんなの後ろに回れ」
パロスを先頭に、イサイアス、ヴェルハースト、アルロ、そしてチュレが続いた。
灯りがあるとはいえ、自然が作り出した荒々しい道を慣れない者が行くのは、なかなか困難な事だった。加えて、最も灯りから遠いアルロの足元はかなり暗く、気を付けていても岩の段差に何度も懸躓いてしまうのだった。
「うわっ」
何度目かの足のもつれに、アルロは思わずふらついた。
そのとき、身体を後ろから押すようにして、温かい毛皮がアルロの脇を支えた。
チュレのその鼻づらで、転ばないように手助けしてくれたのだ。
驚きながら、アルロはチュレを見つめた。
チュレは青く光る瞳でアルロを見つめたまま、アルロが進むのを見守っている。
「あ、ありがとう、チュレ……」
三人はそれぞれに腕や手をすり、足踏みをしながら凍える体を温めようとした。
しかし、それもこの狭いゴンドラの中では互いにぶつかり合い、イライラは募るばかりだ。
「もういい、俺は出るぞ」
「だめです、王子」
「離せ。アルロ」
そんな押し問答をしていると、突如、テーンともターンとも言えない響きが上から降ってきた。
「あっ、音が近づいてきます」
アルロの差すほうを見ると、暗闇の中にかすかにうすぼんやりと光るものが毬のように落ちてくるのが分かった。
「あれは、白オオカミでは。パロスが降りてきたようですね」
「しかし、この闇の中、灯りもともさずに降りてくるとは……」
白い影はあっというまに崖をつたい、ゴンドラのそばへ降り立った。
白い大きなオオカミの背には、荷を背負ったパロスの黒い影が見えた。
「待たせた。今灯りをつける」
パロスがランプに火をともすと、イサイアスたちはようやくこの深い崖の底を見ることが出来た。
雪と氷と、黒々とした岩肌。見上げる限り続く、闇。天空にあったはずの星空はかすかにあの裂け目がそうだったはずだという程度にしかわからない。いや、それすらも定かではなかった。灯りがつけばほっとするかと思ったが、着いたがゆえに深い地の底にいるのだと思い知らされ、三人は言葉に出せない不安を飲み込んだ。
三人がゴンドラを下りると、パロスはランプで行く先を指した。
「ここから少し歩く。俺の後をついてきてくれ。脅かすわけじゃないが、あまり道をそれると、陥没したすき間や氷筍で怪我をする。チュレ、みんなの後ろに回れ」
パロスを先頭に、イサイアス、ヴェルハースト、アルロ、そしてチュレが続いた。
灯りがあるとはいえ、自然が作り出した荒々しい道を慣れない者が行くのは、なかなか困難な事だった。加えて、最も灯りから遠いアルロの足元はかなり暗く、気を付けていても岩の段差に何度も懸躓いてしまうのだった。
「うわっ」
何度目かの足のもつれに、アルロは思わずふらついた。
そのとき、身体を後ろから押すようにして、温かい毛皮がアルロの脇を支えた。
チュレのその鼻づらで、転ばないように手助けしてくれたのだ。
驚きながら、アルロはチュレを見つめた。
チュレは青く光る瞳でアルロを見つめたまま、アルロが進むのを見守っている。
「あ、ありがとう、チュレ……」
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