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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~

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 三者はその速度に度肝を抜かれ、ゴンドラのへりと互いの腕を掴みあった。
 谷から吹き上げる湿った風が、落下の速度に伴って、体感温度を急激に下げる。
 蔦で編まれたゴンドラは決して簡単なつくりではなかったが、それでも、この速度で岩にでもぶつかれば、きっと無事では済まないだろうと予想できた。
 しかも、下に行くにしたがって、闇は濃くなっていき、あたりは何も見えない。



ただ、上を見上げると崖の淵に切り取られた星空がどんどん遠くなっていくのが見えた。

「これは、多少、速い、とは、言いま、せんよ……」

 ヴェルハーストが息するのも、やっとというように切れ切れに言った。

「いっそ、真っ暗でよかったかもな。真昼だったら、正気を保てたかどうか……」

 元来肝の座っているイサイアスは、早々に落下速度になれたらしく、腹の奥に力を入れて足を踏ん張ると、思ったよりはっきりとしゃべった。

「ひいいっ……」

 アルロは突き抜けるような冷たい空気から身を守るように縮こまり、ゴンドラのへりに自らも蔦のように絡みついている。

「ほんとうに、だいじょうぶなんですか……、いいい……、このまま、崖の下にたたきつけられるなんてことには……はわわわわ……」
「アルロ君、そうだと、しても、もはや、我々には、どうすることも、できま、せんよ……」

 イサイアスは暗闇に目を凝らしていった。

「なにがあろうと、俺は生き残る。ノラを取り戻すんだ」



 どれほどの時間がたったころだろう、突如ゴンドラが、がくんと跳ね上がった。

「うわああっ」
「ひいいいっ」
「くっ……!」

 その衝撃に、ゴンドラから飛び出してしまいそうになる身体を、互いにつなぎ止め、三人は荒い息をついた。

「くそっ、舌をかんだ」
「はあっ、はあっ……、お、落ちるかと思いました……!」
「ふう……、どうやら崖の底が近そうですね」

 ヴェルハーストの推測通り、その後、ゴンドラは速度を落としてゆっくり降りると、地面のある場所に降りたようだった。

「着いたのか?」
「待ってください、イサイアス王子。よく確かめてからでないと。まだ安心できません。アルロ君、火を」
「えっ、ヴェルハースト候がお持ちだったはずでは」

 三人は暗闇の中で顔を見あわせた。

「荷物はすべてパロスに預けてきたのでしたね……」
「なんだと、俺たちはパロスが来るまで、この狭いゴンドラの中で箱詰めでいろと言うのか」
「しかし、安全を期してかからなければ。ここは、天地の裂け目。いわば、地の底なんですよ、王子」
「くそっ」
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