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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~
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立ち尽くすイサイアスの隣に、アルロが駆け寄ってきた。
「王子……」
「ありえない……。信じがたい……。だが、ノラじゃなかった……」
「そ、そんな……」
「あれほど見つめあって、俺だと分からぬはずがない。あの娘の目は、俺をまったく知らなかった……」
アルロは言葉を失い、呆然自失の王子を見つめた。あれほど自信に満ちていたイサイアスが、今はただ魂を抜かれたように宙を眺めている。アルロは首をふった。
「そんなの、信じません! あれほど姿も声も同じ人が姉上でないなんて、そんなのありえません」
「だが、事実なのだ……」
「いいえ! 僕は信じません! 暗闇だったのでイサイアス王子だと分からなかったのです。今度は明るいところで、僕もよく顔を見せてみます。姉上が、王子や僕のことを忘れるはずがありません。あれは姉上です!」
かたくなに信じようとしないアルロをイサイアスは黙って見やった。
ヴェルハーストは顎に手をやり、なにかを考えているようにただ黙ってそれを見ていた。
それから二晩、イサイアスたちは旧王都の宿から出ることもせず、無為に時間を過ごした。
こういう時こそ、いつものヴェルハーストならなにか言いだしそうなものだったが、イサイアスやアルロを思いやってか、あるいは放っておくのがいいと思ったのか、部屋に姿を見せなかった。
アルロはイサイアスの部屋を訪ねた。ベッドに横たわったイサイアスは、体を起こしもしなかった。
「イサイアス王子……、これからその……、僕たちはどうしたらいいでしょうか……?」
「……ふん、あれは、他人の空似というものなのだろう。あれがノラでなかったからと言って大したことではない。ノラはこの近くで生きているだろうことには変わりがないのだ。明日には、別の町に行ってみよう。そうすればまた別の情報が聞けるかもしれん」
「そうですね……」
うなづきながらも、アルロは気づいていた。かつて満ちていた、ノラの生存に対する確信や自信が、今のイサイアスの言葉の節々から抜け落ちていた。あの少女とじかに対峙したイサイアスにとって、それは大きなショックに違いなかった。
「少し外の空気を吸って来ます」
アルロは部屋を後にした。
今、コートのポケットには、昨日書いたばかりの手紙が入っている。
父母あてに、これまでの経緯と現状をすべて記したものだったが、とても出せるだけの気力がわかなかった。
アルロはなにをするともなしに、街をぶらぶらと歩いた。
ときどき、年頃の茶色い髪の少女がいると、つい目で追ったが、結局徒労に終わるだけだった。
町の大通りを一周すると、元の宿のあたりまで戻ってきていた。
ふと、顔を上げると、あの青いそりが診療所の前に止まっているのが見えた。
(そうか、パロスは王子の銃で撃たれたんだった)
急いで診療所に向かった。
「王子……」
「ありえない……。信じがたい……。だが、ノラじゃなかった……」
「そ、そんな……」
「あれほど見つめあって、俺だと分からぬはずがない。あの娘の目は、俺をまったく知らなかった……」
アルロは言葉を失い、呆然自失の王子を見つめた。あれほど自信に満ちていたイサイアスが、今はただ魂を抜かれたように宙を眺めている。アルロは首をふった。
「そんなの、信じません! あれほど姿も声も同じ人が姉上でないなんて、そんなのありえません」
「だが、事実なのだ……」
「いいえ! 僕は信じません! 暗闇だったのでイサイアス王子だと分からなかったのです。今度は明るいところで、僕もよく顔を見せてみます。姉上が、王子や僕のことを忘れるはずがありません。あれは姉上です!」
かたくなに信じようとしないアルロをイサイアスは黙って見やった。
ヴェルハーストは顎に手をやり、なにかを考えているようにただ黙ってそれを見ていた。
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アルロはイサイアスの部屋を訪ねた。ベッドに横たわったイサイアスは、体を起こしもしなかった。
「イサイアス王子……、これからその……、僕たちはどうしたらいいでしょうか……?」
「……ふん、あれは、他人の空似というものなのだろう。あれがノラでなかったからと言って大したことではない。ノラはこの近くで生きているだろうことには変わりがないのだ。明日には、別の町に行ってみよう。そうすればまた別の情報が聞けるかもしれん」
「そうですね……」
うなづきながらも、アルロは気づいていた。かつて満ちていた、ノラの生存に対する確信や自信が、今のイサイアスの言葉の節々から抜け落ちていた。あの少女とじかに対峙したイサイアスにとって、それは大きなショックに違いなかった。
「少し外の空気を吸って来ます」
アルロは部屋を後にした。
今、コートのポケットには、昨日書いたばかりの手紙が入っている。
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アルロはなにをするともなしに、街をぶらぶらと歩いた。
ときどき、年頃の茶色い髪の少女がいると、つい目で追ったが、結局徒労に終わるだけだった。
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ふと、顔を上げると、あの青いそりが診療所の前に止まっているのが見えた。
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急いで診療所に向かった。
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