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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~
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ノラは光指す方へ歩き続けた。
しばらく行くと、木々が開け、ぱっと空が広がった。
(ああ、雪が、やんでる……)
頬に感じる太陽の光と、下から吹き上げる風に、ノラの足が止まった。
良く見渡すと、どうやら崖の上に出たようだった。
(眺めがいいけれど、どこなのかしら)
ノラはもうろうとしながらも景色を見わたした。
残念ながら、村の姿かたちはなく、ただ静かな山の稜線が天地を分かち合っていた。
(ああ、ここから、どこへいけば、イサイアスの元へ帰れるのかしら……)
ノラはさらに景色を良く見ようと、一歩一歩と足を前に進めた。
しかし、その臨海地点を踏んだことにノラは気がつかなかったのだ。
声を立てる間もなく、雪がぱっくりと崩れ落ちた。
ノラは雪の塊と共に宙に投げ出された。
「あああっ!」
叫び、もがいた。天に向かって手を伸ばしたが、一瞬空が見えたきりで、あとから降ってくる雪の塊で視界は遮られた。
ノラの声は誰に届くこともなく、はるか崖の下へ真っ逆さまに落ちていった。
***
イサイアス一行は前回までの捜索地点まで来ると、専門家や訓練者の意見を聞きながら、次の行き先を検討していた。
「よし、旧コリヤーレーン国の王都カヴァキーニョを目指そう。人を隠すならやはり人がいる場所だ」
「イサイアス王子、それはシタールの刺客にとって、ノラの利用価値があればの話ですよ。わたしだったら、巻き込まれたのは不運だと思って死なせてやるでしょうね」
「その口をふさがなければ、俺がお前を今すぐ死なせてやる」
「気の済むようになさってください。王子がノラをあきらめるまで、お付き合いいたしますよ」
早速指示を出そうとした直後、遠くから声が聞こえた。
「待ってください、王子―……!」
しばらく行くと、木々が開け、ぱっと空が広がった。
(ああ、雪が、やんでる……)
頬に感じる太陽の光と、下から吹き上げる風に、ノラの足が止まった。
良く見渡すと、どうやら崖の上に出たようだった。
(眺めがいいけれど、どこなのかしら)
ノラはもうろうとしながらも景色を見わたした。
残念ながら、村の姿かたちはなく、ただ静かな山の稜線が天地を分かち合っていた。
(ああ、ここから、どこへいけば、イサイアスの元へ帰れるのかしら……)
ノラはさらに景色を良く見ようと、一歩一歩と足を前に進めた。
しかし、その臨海地点を踏んだことにノラは気がつかなかったのだ。
声を立てる間もなく、雪がぱっくりと崩れ落ちた。
ノラは雪の塊と共に宙に投げ出された。
「あああっ!」
叫び、もがいた。天に向かって手を伸ばしたが、一瞬空が見えたきりで、あとから降ってくる雪の塊で視界は遮られた。
ノラの声は誰に届くこともなく、はるか崖の下へ真っ逆さまに落ちていった。
***
イサイアス一行は前回までの捜索地点まで来ると、専門家や訓練者の意見を聞きながら、次の行き先を検討していた。
「よし、旧コリヤーレーン国の王都カヴァキーニョを目指そう。人を隠すならやはり人がいる場所だ」
「イサイアス王子、それはシタールの刺客にとって、ノラの利用価値があればの話ですよ。わたしだったら、巻き込まれたのは不運だと思って死なせてやるでしょうね」
「その口をふさがなければ、俺がお前を今すぐ死なせてやる」
「気の済むようになさってください。王子がノラをあきらめるまで、お付き合いいたしますよ」
早速指示を出そうとした直後、遠くから声が聞こえた。
「待ってください、王子―……!」
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