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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~

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 捜索隊が村を出発した。
 その一行を見つめながら、父と息子はただただノラの無事の帰りを祈るばかりだった。
 ふと、アルロが頭を巡らせて、父を振り返った。

「あの、父上、さっき、ヴェルハースト候が気になることをおっしゃっていましたが」
「なんだ」
「国境地帯の込み入った歴史とか……」
「ああ……。あの森の向こうは旧コリヤーレーン国だったことはお前も知っているな」
「はい。今はビリンバ国の属領ですが、二百年ほど前まではコリヤーレーン国王が治めていました」 
「そのコリヤーレーン国の歴史をさかのぼると、いくつかの小国家や部族が土地を分け合っていたのだよ。その種族や部族は、独自の文明や文化を持っていたといわれている。あるいは、隠された財宝があるとも」
「隠された財宝?」
「いや、今ではもうおとぎ話のようなものだよ。私もヴェルハースト候に言われるまで思い出しもしなかった」
「まさか、ヴェルハースト候はその財宝を目当てに?」
「さすがにそんなことはないと思うが、いかんせん、ヴェルハースト候はなにを考えているのかわからないお方だからな」
「ええ、あの方は……、ときどき敵なのか味方なのかわからなくなります」

 親子はぐんぐん遠くへ伸びていくそりの跡に、再び視線を送った。



***



 雪の降り続く森の中、ノラは一晩さ迷い歩いた。
 もはや正しい判断能力はノラにはなかった。
 ただ、動き続けていなければ、死ぬに違いないという思いだけで歩き続けていた。
 森の木々の間から新しい朝の光が差し込んできた。
 その光に導かれるように、ノラは腰まで雪に埋もれながらも、前に前にと進んでいた。
 氷の粒がノラの髪やまつげできらめいていた。
 手足はもはやただの木の棒のようだ。

(イサイアス……)

 それでも、ノラはときどき左手の指輪を確認した。
 赤イサイアスゴが目に入れば、ノラにはそれだけでどこからか力が湧いて出た。

(帰るわ、帰るわ、イサイアス……)
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