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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~
(2)
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ノラは自分の最後を悟って、後ずさった。
(いや、いや、やめて……!)
ノラは必死で首をふった。脇から別の男がノラの体を封じこめた。ノラは必死に抵抗したが、全くかなう相手ではなかった。
きらっと刃がひらめいた。
(もうだめ、イサイアス……!)
ザクッという音がして、ノラは痛みが来るのを待った。
しかし、どこにも痛みはなく、そっと目を開けると、剣を持った男の逆の手には、ノラの髪が握られていた。
(か、髪を切ったの……?)
男は剣をしまい、その髪を懐の布袋にしまった。そして、ノラを洞穴に連れてくると、手足を縛っていた紐を解き、口輪を外した。
「え、なに……、なんだというの……?」
ノラの疑問など介しもせず、男たちはさっさと馬に乗り、ここを去る準備を始めた。
「まさか、ねえ、うそ……。お、置き去りにする気なの?」
ノラの呼びかけに、誰一人応えない。
洞穴の中に横たわった死体を、男が馬に乗せ、括り付けた。死体は連れて行くのに、ノラは連れて行かないつもりのようだ。
「わたし、どうすればいいの? ねえ……」
ノラはすぐそばの男に近寄った。しかし、男は面倒そうな視線を投げただけで、ふいっと顔をそむけてしまった。
「ダ・ハア!」
「ハア!」
馬にまたがった男たちは、掛け声を上げるとともに、一斉にその場を立ち去っていった。
「う、うそでしょう……」
ひとり置き去りにされたノラは、薄い寝間着の腕を抱え、素足の右足に左足を重ねた。
ひとつの恐怖が去り、もうひとつの恐怖がノラの胸に押し迫ってきた。
しばし途方に暮れたノラだったが、このままでは座して死ぬのを待つだけだということは明らかだった。
(ひとまず、明るいうちに、蹄の後を追ってみよう……。雪に降られたら、この道しるべさえもなくなってしまう)
気丈に一歩を踏み出したノラだったが、足に伝わる雪の冷たさとその固さにひるんだ。
(今は弱気になっちゃだめよ。千里の道も、この一歩からだわ)
(いや、いや、やめて……!)
ノラは必死で首をふった。脇から別の男がノラの体を封じこめた。ノラは必死に抵抗したが、全くかなう相手ではなかった。
きらっと刃がひらめいた。
(もうだめ、イサイアス……!)
ザクッという音がして、ノラは痛みが来るのを待った。
しかし、どこにも痛みはなく、そっと目を開けると、剣を持った男の逆の手には、ノラの髪が握られていた。
(か、髪を切ったの……?)
男は剣をしまい、その髪を懐の布袋にしまった。そして、ノラを洞穴に連れてくると、手足を縛っていた紐を解き、口輪を外した。
「え、なに……、なんだというの……?」
ノラの疑問など介しもせず、男たちはさっさと馬に乗り、ここを去る準備を始めた。
「まさか、ねえ、うそ……。お、置き去りにする気なの?」
ノラの呼びかけに、誰一人応えない。
洞穴の中に横たわった死体を、男が馬に乗せ、括り付けた。死体は連れて行くのに、ノラは連れて行かないつもりのようだ。
「わたし、どうすればいいの? ねえ……」
ノラはすぐそばの男に近寄った。しかし、男は面倒そうな視線を投げただけで、ふいっと顔をそむけてしまった。
「ダ・ハア!」
「ハア!」
馬にまたがった男たちは、掛け声を上げるとともに、一斉にその場を立ち去っていった。
「う、うそでしょう……」
ひとり置き去りにされたノラは、薄い寝間着の腕を抱え、素足の右足に左足を重ねた。
ひとつの恐怖が去り、もうひとつの恐怖がノラの胸に押し迫ってきた。
しばし途方に暮れたノラだったが、このままでは座して死ぬのを待つだけだということは明らかだった。
(ひとまず、明るいうちに、蹄の後を追ってみよう……。雪に降られたら、この道しるべさえもなくなってしまう)
気丈に一歩を踏み出したノラだったが、足に伝わる雪の冷たさとその固さにひるんだ。
(今は弱気になっちゃだめよ。千里の道も、この一歩からだわ)
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