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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~

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 目を輝かせたエチカが、早口にシタール語でなにか言った。それを通訳して、バロムウードがノラに伝えた。

「なんと優美であでやかな品の数々。この刺繍や細工も細やかで手が込んでいる。ユーフォニアムのドレスはあまり着たことはないが、とても素晴らしい。このような品を贈ってもらえて、とてもありがたい。あなたの好意に甘えて、使わせてもらう。ありがとう」
「よかったです、エチカ女王様」

 ノラが微笑むと、エチカはさっとノラの側により、手を取った。

「かんしゃ、する。ノラ」
「お力になれてなによりです」

 ノラは頭を下げた。
 それからふたりは、どちらともなくドレスの着方や刺繍や柄についてなど、女同士の話を始めた。
 言葉が通じないなりに、手ぶりや身振りで互いに意思を伝えあい、次第に打ち解けていった。
 初めはかたくなに見えたエチカの顔に、年相応の少女らしい明るい輝きが戻ってきたのを見て、ノラはうれしくなった。
 


 そのまま部屋を交換すると、ノラとシェラは二等室の小さな部屋で一晩明かした。

「あの真珠のネックレスまで差し上げることはなかったのに……。でも、まあ、エチカ皇女様がいずれシタール女王に即位された暁には、きっと今日の日のことは、両国のよき交流の話のタネとなるでしょう……。ふん、まあ、即位できればの話ですが……!」

 ノラの持ち物の金額をおおよそ把握しているシェラは、いつまでもぶつぶつとやっていたが、ノラはむしろ相応しい品物が相応しい人の元で使われることになったので、清々とした気持ちだった。

(正直、あんなに豪華な物を持っていくの、気が引けていたのよね。お母様には言い出せなかったけれど……。だって、わたしの身の丈に合わないんですもの。今度は初めから、控えめなものをお願いしよう。……でも、やっぱり、レキュリテお母様には悪いことをしたわよね。がっかりされるかしら……)

 実際、がっかりというより、がっくりするのは母より父の方かもしれなかった。
 ノラは一等室のものより荒いリネンのシーツの中で、そっと手を重ねてみた。
 指先に伝わる滑らかな感触に、ノラはゆっくり視線を移した。
 左手の薬指にはめられた、愛しい人との約束が、ノラの心に、ぽっと消えない灯りをともした。

(イサイアス王子、わたしが戻ったらがっかりするかしら、それとも、喜ぶかしら……?)

 ノラはくすっとひとりでに笑った。
 イサイアスの喜ぶ顔が浮かんだからだ。

(わたしも会いたいわ、イサイアス)

 瞼を閉じると、暗闇の中に愛しい人の姿がくっきり浮かんだ。



***
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