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【シリーズ2】白獣の末裔 ~古のシャータの実 白銀に消えたノラの足跡とイサイアスに立ちはだかる白い民の秘されし術~
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シェラはたった今見てきたことかいつまんで聞かせた。すっかり聞かされると、ノラは神妙に顔つきですっくと立ち、トランクのひとつを広げた。
「ノラ様、なにをなさるんです?」
「わたしたちはもう帰るだけだもの。こんなに荷物はいらないわ」
ノラはトランクを次々に開けると、中のものを検めた。
「し、しかし、どれもこれも、奥様が選んでくれた最高のお品ばかり……」
「お母様のセンスって本当に素敵。きっと、皇女様のお役に立つわ。見たところ、サイズもそれほど違わないから、ゆったりしたドレスなら十分着れると思うのよ。だけどうーん、これはさすがにアフタヌーンドレスはだめかしら。お直しすれば着れると思うんだけれど。ねえ、まだ使っていない下着や靴下なら、差し上げても失礼にならないわよね?」
「ノラ様……! そんな、奥様になんと申し上げたらいいのか!」
「レキュリテお母様には、帰ったらそのまま申し上げるわ。人のためになりなさい。相手を思いやりなさい。それがわたしのお母さん、ディアナお母さんの教えだもの」
「ああ、もう……! ふん、まあ、いいでしょう!」
一通り準備ができると、ノラはシェラに皇女を呼びに行かせた。
格下の部屋に泊まっていようが、皇女は皇女だ。呼びつけられてむっとしないわけではなかったが、お金を借りている手前、エチカとバロムウードは黙ってシェラについてきた。
シェラが部屋を開けると、ノラが頭を下げてエチカを迎えた。
「プリンセスエチカ。プリーズ、ユーズ、ディスルーム、アンド、オールクローズ」
ノラはシェラに習ったばかりのビリンバ語で説明した。
「わたしのもので恐縮ですが、もしよかったら、皇女様に使っていただきたいんです。ベーストン女学園は昔ながらの学校で、朝に晩にとても寒いところだと聞いています。そうでなくとも、道中の防寒にキルトやマフはきっと役に立ちます。それに、母お手製のジンジャーシロップ。とても体が温まられたでしょう? ドレスのサイズは少し合わないかもしれませんが……、お直しすれば差し支えないかと思うんです」
エチカは驚きのまなざしで、ノラを見、クローゼットやドレッサーに並べられたドレスや貴金属を見つめた。
さすがは、目の肥えたレキュリテがあつらえた装飾品の数々。冬用のコートが五枚、昼用のドレスが二十枚、夜用が三枚。帽子や手袋、コサージュや宝石……。おおよそ、学園に持ち込むにはふさわしくないような豪華なコレクションばかりだった。これは各国の名だたる子女が集まるベーストン女学園の中で、できる限り娘を優位な立場に置かせたいと願うレキュリテの母心の表れと、レノ家の見栄のためだった。
普段から最高級のものを見慣れているエチカだったが、この品々はそれに劣らないものばかりだった。
「ノラ様、なにをなさるんです?」
「わたしたちはもう帰るだけだもの。こんなに荷物はいらないわ」
ノラはトランクを次々に開けると、中のものを検めた。
「し、しかし、どれもこれも、奥様が選んでくれた最高のお品ばかり……」
「お母様のセンスって本当に素敵。きっと、皇女様のお役に立つわ。見たところ、サイズもそれほど違わないから、ゆったりしたドレスなら十分着れると思うのよ。だけどうーん、これはさすがにアフタヌーンドレスはだめかしら。お直しすれば着れると思うんだけれど。ねえ、まだ使っていない下着や靴下なら、差し上げても失礼にならないわよね?」
「ノラ様……! そんな、奥様になんと申し上げたらいいのか!」
「レキュリテお母様には、帰ったらそのまま申し上げるわ。人のためになりなさい。相手を思いやりなさい。それがわたしのお母さん、ディアナお母さんの教えだもの」
「ああ、もう……! ふん、まあ、いいでしょう!」
一通り準備ができると、ノラはシェラに皇女を呼びに行かせた。
格下の部屋に泊まっていようが、皇女は皇女だ。呼びつけられてむっとしないわけではなかったが、お金を借りている手前、エチカとバロムウードは黙ってシェラについてきた。
シェラが部屋を開けると、ノラが頭を下げてエチカを迎えた。
「プリンセスエチカ。プリーズ、ユーズ、ディスルーム、アンド、オールクローズ」
ノラはシェラに習ったばかりのビリンバ語で説明した。
「わたしのもので恐縮ですが、もしよかったら、皇女様に使っていただきたいんです。ベーストン女学園は昔ながらの学校で、朝に晩にとても寒いところだと聞いています。そうでなくとも、道中の防寒にキルトやマフはきっと役に立ちます。それに、母お手製のジンジャーシロップ。とても体が温まられたでしょう? ドレスのサイズは少し合わないかもしれませんが……、お直しすれば差し支えないかと思うんです」
エチカは驚きのまなざしで、ノラを見、クローゼットやドレッサーに並べられたドレスや貴金属を見つめた。
さすがは、目の肥えたレキュリテがあつらえた装飾品の数々。冬用のコートが五枚、昼用のドレスが二十枚、夜用が三枚。帽子や手袋、コサージュや宝石……。おおよそ、学園に持ち込むにはふさわしくないような豪華なコレクションばかりだった。これは各国の名だたる子女が集まるベーストン女学園の中で、できる限り娘を優位な立場に置かせたいと願うレキュリテの母心の表れと、レノ家の見栄のためだった。
普段から最高級のものを見慣れているエチカだったが、この品々はそれに劣らないものばかりだった。
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