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【5 両思い (まこ)】
しおりを挟む「み、御木野さん、俺……」
さっきからなにかいいたげに私を見ている新田くん。
私はひやひやしながら鞄を握りしめていた。
八代くんが好きだといいながら、なんでH田K佑の本なんか借りてるの? なんていわれたらどうしよう……。
心変わりしたなんていったら、軽蔑されるかも……。
その一方で、もしかしたら、新田くんも私と同じことを考えているんじゃないかという期待が消せなくて……。
どうしよう、逃げたいような、でも、でも聞きたい……。
「俺……、御木野さんのことが好きだ」
……う、うそ……。
そういったとたん、新田くんの顔が急にかあっと真っ赤に染まった。
その表情を見ていたら、夢みたいにくらくらしてきて、体中どきどきが走り回って、それなのに、体はふわふわして……。
――ガタンッ!
突然バスが揺れて、私は座席から前のめりになった。
「御木野さんっ!」
掴んでいたはずの鞄が膝から滑り落ち、中の本がずらっと滑り出した。
あっ、やばっ……!
気がつくと新田くんが私を支えてくれていた。
間近に近づいた顔と顔。
新田くんの汗の匂い。
私の顔は熱湯でもかぶったように熱くなっていた。
「わ……わたしも……」
何も考えずに、ただそういっていた。
新田くんが、はっと息をのんだ。
ふたりで見つめあっていたら、同乗していた小学生が本を拾ってこちらを向いていた。
「落ちたよ」
「ごっ、ごめんね……!」
「あっ、ありがとうっ……!」
ふたりで本を受け取って、もう一度席についた。
ふたりの肩がぶつかる。
お互いに、すごく熱かった……。
*お知らせ*こちらもぜひお楽しみください!
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