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第1部 婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて今はとっても幸せです
これからもいつでも笑みを心に太陽を
しおりを挟むそれから数年後。
プレモロジータ家ではいろいろ考えた結果、爵位をヒューお兄様に譲ることを国王陛下に申し入れ、これが受理された。
お父様がご健在なのに自分が伯爵なんてと、お兄様自身もちょっぴり持て余しているけれど。お姉様がなんとかなりますわよ、といっていつも明るく支えてくれている。
「髭も生やさないのに伯爵なんて名乗っていいのかなぁ」
「お髭をふさふさにするのは、お髪がつるつるになってからでなければ承知できませんわ」
「君は本当につるつるが好きだねぇ! はははっ、髪がつるつるって、相当先だよ!」
「ふふふっ、では顎もしばらくつるつるですわね!」
おふたりならなんとかなりそうに思えるから不思議ですわ。
お父様とお母様はサーフォネス伯爵家としてセントライト王国にお戻りになられた。
今は祖国の復興と先祖の供養、そしてこれまでに失われた魂の慰霊に務めている。
「お前たちは新しい世代として先を行くがいい。過去のことは私たちに任せなさい」
「私は心配していませんよ。ヒューも、ミラも素晴らしい人生の伴侶を見つけたのだから」
はい、お父様、お母様。
離れるのはさみしいけれど、それぞれに使命を果たせるよう、それぞれの場所で頑張りますわ。
プレモロジータ家もサーフォネス家も、私たち一族にとってはどちらも大切な家。
お父様とお母様はお兄様とお姉様の間に生まれた二番目の男の子を、将来サーフォネス家の跡継ぎにと考えている。
もしかすれば、その子が、あるいはその子孫が……。
セントライト王国に真心の光をもたらしてくれる日が訪れるかもしれませんわ。
そして、今日は――。
王宮の大広間では、今まさにヴァレンティーノ様が私たちの『誓い』を戴こうとしている。
王家婚礼の儀の正装に身を包んだヴァレンティーノ様。
私は純白のドレスでその隣に立ち、手を組んだ。
静かに膝をつき『誓い』を唱える。
「我ミラ・ラ―ラ・プレモロジータは、絶対王を生涯の主として忠誠を誓う。
我が真心は、人を愛し思いやる心。
この心を持って身を捧ぐは、この国の平穏のため。
絶対王は永久に人を愛し思いやる心を失わず、この国の主としてあり続けるだろう」
それと同時に、ヴァレンティーノ様の胸がふわっと光り輝く。
私が捧げた真心が、ヴァレンティーノ様の心に今もあるということの証。
ヴァレンティーノ様の微笑みに私も笑みを返した。
続いて、私たちの前に膝をついて並んだ四人。
バルトロメーオから始まった。
「我バルトロメーオ・ジュスティッツィアは、絶対王を生涯の主として忠誠を誓う。
我が真心は、正義の心。
この心を持って身を捧ぐは、この国の平穏のため。
絶対王は永久に正義の心を失わず、この国の主としてあり続けるだろう」
「我アルベルティーナ・コルテジアは、絶対王を生涯の主として忠誠を誓う。
我が真心は、礼節。
この心を持って身を捧ぐは、この国の平穏のため。
絶対王は永久に礼節を失わず、この国の主としてあり続けるだろう」
「我ジュスティーナ・サジェッツアは、絶対王を生涯の主として忠誠を誓う。
我が真心は、智慧。
この心を持って身を捧ぐは、この国の平穏のため。
絶対王は永久に智慧を失わず、この国の主としてあり続けるだろう」
「我カロージェロ・シンチェリタは、絶対王を生涯の主として忠誠を誓う。
我が真心は、人を誠実に思う心。
この心を持って身を捧ぐは、この国の平穏のため。
絶対王は永久に人を誠実に思う心を失わず、この国の主としてあり続けるだろう」
それぞれの『誓い』が終わると同時に、光が溢れ、その光のひとつひとつが、ヴァレンティーノ様の胸に吸い込まれていった。
儀式に参加を許された人々は、深遠な気持ちでそれを見つめる。
あるものは涙を流し、あるものは微笑みを浮かべ、あるものは頭を垂れた。
ベルナルディーノ国王陛下が高らかにうたう。
「ここに宣言する! 我がメゾシニシスタ王国に、初めての絶対王が誕生した!
五大伯爵家から捧げられし、五つの美徳を持って、この国に末永き平穏をもたらさんことを!」
わあっ、と観衆の声が割れんばかりに響いた。
バルトロメーオ、アルベルティーナ、ジュスティーナ、カロージェロ。
みんなの誇らしげな顔。
ヴァレンティーノ様。
自信と威厳に満ちた、凛々しいお顔。
これが、我が国の絶対王のお姿。
私の魂の主……!
「ミラ」
ヴァレンティーノ様が私の手を取る。
優しい温もりがじんわりと指先から広がっていく。
喝采がやみ、辺りが静まり返った。
「メゾシニシスタ王国の絶対王として、ミラ・ラーラ・プレモロジータ、そなたを我妻に迎える。
我とともに、この国の導き手として、永久に共にあらんことを」
「謹んでお受けいたします」
再び、わっと歓声が溢れ、拍手で空気が揺れた。
花びらが舞い、祝いのファンファーレが響き出す。
――きゃっ!?
突然、視線が高くなった。
ヴァレンティーノ様に腰から抱き上げられたのだ。
私を見上げるヴァレンティーノ様。
なんてうれしそうに笑っていらっしゃるの……!
「ミラ、美しいぞ……!」
「ヴァレンティーノ様もご立派ですわ……!」
あら、お耳が真っ赤に……。
「おめでとう、ミラ!」
「ミラ、きれいよ! おめでとう!」
「ヴァレンティーノ様、ミラ様、おめでとうございます!」
「う、うぅっ……、とっても、素敵だよ……!」
みなさん、ありがとう……!
参列に並ぶお父様とお母様、お兄様とお姉様が涙しながら拍手を送ってくださっているわ。
一度目の人生ではお見せできなかったこの姿。
神様が下さった二度目の人生で叶いました。本当に私は幸せです……!
お父様とお母様、お兄様とお姉様。
これまでずっと私を守り慈しみ、愛し育てて下さって本当にありがとうございます……。
お姉様がパチッとウインクを送って下さった。
ふふっ、すっかりお上手ですわ……!
今はお兄様とお姉様の間に立っている二人の小さな息子が揃って一生懸命、お姉様のまねをしようとしている。
……くすっ!
ふたりとも、両目をつぶってしまってますわ。可愛い……!
視線を移した先には、リサとラルフ陛下。
リサが大粒の涙をこぼしながら唇を震わせている。
大きくハンカチを振っているのは、言葉にならない祝福の代わり。
そのリサのお腹はふっくらと丸く張り出している。
もうすぐ臨月。
身重なのに、お式に参列してくれて、本当にうれしい……!
きっと望めないとあきらめていたリサが、もうすぐ母親。
今から本当に楽しみですわ……!
ヴァレンティーノ様に抱かれながら、大広間からベルコ二ーへ。
顎下には、私たちのために集まってくれた、メゾシニシスタ王国の人々。
すごい数……!
こんなにたくさんの人たちが、私たちを祝福してくれるなんて。
どこからともなく始まった声が、次第にひとつになって、辺りに波のように響く。
「絶対王、バンザーイ! ミラ様、バンザーイ!」
まあ……。
みなさんの心が合わさって、こんなに温かな声援になるなんて。
こんな素晴らしい祝福を戴けるなんて、本当に、本当に、私は幸せ者ですわ……。
ヴァレンティーノ様が私を見上げて楽しげにおっしゃる。
「ミラ、手を振ってごらん」
言われたとおりにすると、わあっと歓声と拍手が鳴り響いた。
まあ、すごい……。みなさんが次々に手を振り返してくれる……。
「我妻は絶大なる人気があるのだ。我が国の思いやりの心そのものだからな」
まあ……。それがこんなにだとは、知りませんでしたわ。
けれど、私の真心が国民のみなさんの心にも届いたのだと思うと、こんなにうれしいことはありませんわ。
日に照らされて一心に喜びを表してくれる人々の姿。
この光景、私は一生忘れません……!
「ヴァレンティーノ様、ここにいるすべての人のために、この身を尽くしますわ」
「ミラ……」
あら、またお耳が……。
ヴァレンティーノ様が私をゆっくりと床に下ろす。
少しもそらさずに、優しいまなざしで私を見つめてくれる……。
暖かなその瞳に、吸い寄せられるかように、私も視線を離すことができないの。
お互いに微笑みを交わす。
そして、ゆっくりと優しいキスが降ってくるのを迎える……。
触れるといつも熱くて、しっとりと柔らかな感触。
胸にじんわりと、いつも太陽のようなぬくもりを育んでくれる。
何にも代えられないわ。
この離れがたい愛おしさ……。
甘いキスの終わりに、そっと瞳を開けると……。
そこには、優しく微笑むヴァレンティーノ様。
その微笑みに包まれると……。
なんだか、私もうれしくなって、顔が勝手に緩んでしまうの。
令嬢は、いつでも笑みを。
心に太陽を。
ヴァレンティーノ様。
あなたと一緒にいると……。
自然とそうなってしまうみたいですわ……!
ご愛読ありがとうございました!
ミラと一緒に同じ時を過ごし、共に泣き笑いしてくださった読者の皆様に心から感謝申し上げます。お手間でなければ、10いいね(各話10回押せます)、感想、お気に入り、エール(動画再生3回できます)、シェアで、応援ぜひよろしくお願いします! 読者様からの反応があると、執筆活動の励みになります!
このあとは、あとがき・用語・登場人物です。
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