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■第2章 冒険者の町の冒険者ギルド!

107 勉強を始めよう(3)

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 明くる日、ピスパーの宿と飯にマルコが小脇に荷物を抱えてやってきた。ロッテに呼ばれて食堂に降りてきた銀河は驚いた。包みの中に、立派な紋様入りのフードつきケープが入っていたからだ。

「マルコさん、これは……?」
「ギルマスからだ。防御と回復、耐性と回避、それから隠匿の付与がついている。宿を出るときにはこれを身につけていれば、まず安全だ」
「へえっ、すごいや!」

 まさに、冒険者や旅人がしていそうな丈の短い肩掛けマント。裾には鈍い銀色の植物のような魔法の紋様が付いており、背中にはなにかのエンブレムがある。

「このエンブレムはなんですか?」
「あ、ああ……。ギルマスの生まれた家の紋だそうだ。なんでも付与がつきやすいらしい」

 なるほど、と銀河は思った。わかりやすくふたりがギルマスの庇護下にあることを外部に知らしめたいらしい。冒険者ギルドのエンブレムを背負わせようとすれば断られると思ったのだろうか。とはいえ、この国でオージンと同じ家紋を背負えば、それと同じ効果があるだろうということは予想に固くない。

(うーん、どうしようかな……。でも、このケープがあればトラブル回避にはうってつけだろうし、実際スキャンで見てもちゃんと付与魔法がついている。今着てる中古の服にはなんの付与もないし、正直ありがたいのは確かだよな)

 先日からわかっていたことではあるが、冒険者ギルドが銀河と美怜を囲い込もうというのは必至らしい。ここまであからさまである以上、もはやギルド登録は避けられないだろう。

(もう少し時間をおこうと思っていたけど、まあいいか。いずれにしても、もともと僕は冒険者ギルドに入る予定だったし。みれちゃんもそれは承知してる。こうなったら、しっかりギルドの仕組みを知っておかないとな)

 気を失って倒れた美怜は今朝がた目を覚まし、銀河と美怜は互いに気を失っていた間の情報をすり合わせることができた。キネコのおかげもあって幸いDPも回復し、ここ数日食の細かった美怜は久しぶりにちゃんと食事をとれたのだった。 
 銀河はその時の会話を思い出す。

「……本当にごめんね、みれちゃん」
「ううん、もう大丈夫。……えっと、あと話してないこと、なかったかな。あっ、そうだ、あの木のブロックなんだけど……」
「マルコさんから聞いたよ、世界樹のブロックだったんだね」

 一通り情報交換を終えると、ほっとしたように美怜が息をついた。

「だけど、どうしよう、このままじゃ私も銀ちゃんも、ギルドに就職させられちゃいそうだよ……」
「もともと僕は冒険者ギルドに登録する予定だったからそれはまあいいとしても、みれちゃんはこのまま手伝いという立場のほうがいいよね。いつか工房ギルドに登録できるかもしれないし」
「うん、とりあえず物を売ることに関しては、商人ギルドに入らなくてもよくはなったし、最悪ギルドに入らなくても買取はしてもらえるしね」
「しばらくは冒険者ギルドの世話になって、この世界のことをいろいろ知って、でもそれからは僕達自由にこの世界を行き来したいよね。だからエンファのギルドに永久就職はまずないかな」
「……でもギルドマスターの圧がすごいよね」
「うん、半端ないね……。みれちゃん、よくひとりでギルマス相手に治療代や慰謝料の請求をしたよね」
「でも、銀貨十三枚なんて、どう考えても安すぎだよね。ごめんね……それが精いっぱいで……。ジルドさんとネルちゃんに渡しそびれちゃったし」
 
 ナラの乱心を知って美怜が困惑したのもわからなくない。だが、エクスポーションの効果がわかった今になれば、結果としてジルドたちが銀河にカタサマのポーションを飲ませてくれたおかげで確実に銀河が助かったのは間違いない。もし飲まされていなかったら、エクスポーション数十本を飲まされて高額請求されるか、あるいは今も正しい治療を受けられずに痛みに悶えていたかもしれない。それにタブレットや眼鏡を売り飛ばすことなく、銀河の元に戻してくれたことだけでも彼らの誠実な働きには感謝が大きい。

「身重な上に、小さな子や目の悪い家族を抱えていたら不安にもなるよ。でもナラさんは最後には僕を助けてくれた。生活が落ち着いたら、ジュッデの平小屋を訪ねてみよう」
「うん。ギルドマスターが全快するほどのポーションは銀十枚くらいって言ってたから、きっとムナさんの目が治るだけのポーションを買えるよね」
「銀十枚ってことは2000HPくらいか。……ふぅん、MPなしの一般人はだいたいそのくらいのステータスってことなんだろうな。ギルマスはほかにステータスに関わることなにか言ってた?」
「え、うーん……、どうだろう……」
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