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■第1章 突然の異世界サバイバル!

021 異世界の洗礼(5)※

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※ お知らせ ※ このページには一部において暴力描写があります。気になる方や読みたくない方は、スルーして次のページへお進みください。このお話はフィクション(創作)です。現実の社会では、どのような場合であっても、暴力や犯罪行為は許されません。それをご理解いただける場合のみご覧ください。このお知らせの意味が分からない場合は、周りにいる頼れる大人に相談してみて下さい。


 不安な一夜が明けた、その朝。
 互いに無事だったことに安堵して、それぞれに食事をとった。少し距離はあるものの、ネルがナラのつくったスープを運んできてくれ、銀河と美怜はジルドたち一家と目線だけでやり取りしながら食事を終えた。

「みれちゃん、ジルドさんたちの血の付いた証拠だけど」
「うん、もうインベントリの中に入れてあるよ。森で私たちが襲われたときの、ダガーも一緒に」
「警察だったらこんな揺るぎない証拠があったら絶対逮捕だよね」
「うん。異世界って、本当に地球と常識が違うんだね。あっ、私たち、冒険者ギルドへ行く前に『ピスパーの宿と飯』にいって、ユリアさんに伝言をお願いした方がいいんじゃない?」
「そうだね! ユリアなら僕達の味方になって証言してくれるはずだ」
 
 ユリアと別れたのはたった一日前のはずだか、昨晩の騒動でせいでずいぶん前のように錯覚してしまいそうになる。まるで交通事故にでもあった翌日のような気分だ。昨日と今日とでは世界が一変している。これが異世界の洗礼なのだと思うと、スライムや巨大ミミズなど大したことがないような気がしてくる美怜だった。

「ギルドの人たち、話をわかってくれるといいね。訴えても、それでもギルドがあの三人を守ろうとしたらどうしたらいいんだろう」
「うーん……。ファンタジー映画とかでも出てくるけどさ、真実を映す鏡とか、記憶を引き出す魔法とか、そういう真偽をはっきりさせてくれるようなものがあるといいなと期待しているんだけど」
「ああ……確かに! そういうブーンズを生みだせないの?」
「できるだろうけど、僕のブーンズを見ず知らずの人たちが手放しに信じてくれるとは限らないよ」
「あ~そっか~」

 あれこれ作戦を練っていたそのとき、列の前方からザッザッと足音が近づいてきたのがわかった。目をやると十数名はいようかという傭兵……いや、冒険者らしき人たちが揃って歩いてきていた。

「あっ、あいつ!」

 その列の真ん前にいたのはあの小太り、三白眼、痩せ男だった。予想通り、一団は銀河たちの前で止まった。そこから先はまるで映画のワンシーンのようにノーストップモーションだった。まさか、白昼堂々と不条理な暴力と理不尽がまかり通るとは銀河も美怜も思っていなかったのだ。

「こっちのガキだ、連れて行け!」
「きゃっ、ぎ、銀ちゃん!」

 冒険者らしき男たちの動きは素早く、銀河の目の前で瞬く間に腕を引っ張られて美怜が捕まえられてしまった。銀河がカラコマをコールしようとした時には、すでに別の男の蹴りが銀河の目の前にあった。
 ――ドグッ!
 聞いたことのないくぐもった嫌な音が響いた。銀河は息もつけず、さっき食べたばかりのスープをすべて吐き出していた。痛みよりも、驚きと混乱、そして激しい目眩で世界が揺れる。

「……っかっ……はっ!」

 ようやく息つけたところで、さらにグボッと腹に衝撃が突き刺さった。

「やめてぇっ、銀ちゃんっ!! 銀ちゃん!!」
「……み……れ」

 ぐわんと視界がゆがんで、視界が真っ白の空に代わった。こんなの漫画や映画だけの話だと思っていた。頭の片隅にそんなことがわずかによぎったが、これが今、銀河のいる世界だった。

「銀ちゃん、銀ちゃん! 離してぇっ!」

 美怜の声が遠のいていく……。守ると誓ったその相手が、圧倒的な力の前に簡単に奪われていく。甘かった。ただただその後悔と悔しさだけが、銀河の意識が吹っ飛ぶのを許さなかった。

「おっ、おにいちゃぁん!」
「ギンガ!」
「あああっ、なんてこと!」
「どうしたんだい! ミレイはどこへ連れて行かれたんだい!」

 痛みに悶え、吐しゃ物でふさがる鼻と口で必死に息をする。勝手に流れ落ちる涙、歪んで定まらない視界。ぐにゃぐにゃに聞こえるジルドたちの声。全身で激しく危険信号を叫ぶ痛みが、思考を許さない。それでも苦痛に耐えながら、銀河の脳はたったひとつのことだけを考えていた。

(必ず、みれちゃんを取り戻す……!)

 下記について、イラスト付きの詳細情報がご覧いただけます! ブラウザご利用の場合は、フリースペースにある【※ 脚注 ※】からご覧いただけます。アプリをご利用の場合は、作者マイページに戻って「GREATEST BOONS+」からお楽しみください。
【※82】異世界の人びと …… 情報282 
【※83】異世界人種のランク(1) …… 情報284 
【※84】ステータス(1) …… 情報261
【※85】チョウロウとシルハ …… ブーンズ403
【※86】ギルド …… 情報28

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