【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴

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■第1章 突然の異世界サバイバル!

0090 タカラコマ ヒシャラ!

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「きゃああっ、なにこれっ、やだぁっ!」

 美怜の声でまだ寝ていた銀河とブーンズが飛び起きた。ずり落ちた眼鏡をかけ直し、慌てて声のするほうを見る。視線の先では、美怜が必死に脚から枝でなにかを払っていた。そこには透明なゼリー状の塊がひとつ張り付いている。イコが慌てたように美怜の周りを素早くひらひらひらひらと動き回っていた。

「み、みれちゃんっ!」
「ミーッ!」
「ニーッ!」
「フルーッ!」

 銀河とマロカゲ、マチドリ、カタサマ、エコロ、ピッカランテッカランが一斉に駆け寄ろうとすると、ゼリーの塊が素早く美怜のスニーカーのすき間からその中に入り込んだ。そのままスポッとスニーカーを脱がせたかと思うと、そのゼリー状の体の中に包み込むようにして、高速で奪い去って行った。

「大丈夫、みれちゃん!?」
「……ぎ、銀ちゃぁん……、靴、盗られたぁ……!」

 枝を握りしめたまま小刻みに震え、美怜は今にも泣き出しそうだ。銀河はなだめながら急いで様子を確認した。青ざめ、頬まで鳥肌が立っていたが怪我がないことがわかり、ホッと息をついた。

「あれが現れたのは、ついさっき?」
「わ、わかんない……、急にあの水のゼリーみたいなのが飛んできて……。最初エコロかと思ったけど、色が違うし、全然いうこと聞かないし、離れてくれないし、気持ち悪いし……」
「多分あれはスライムだよ!」
「スラ……?」

 銀河にはすぐにピンと来ていたが、美怜は目の前で見た動く水のゼリーとスライムという言葉がつながらなくて、しばらく固まった。

 美怜にとってスライムといえば、あの超人気ゲームのくりっとした目ののほほん顔をした水色の可愛いキャラクターだ。ぶよぶよして、捨てられたガムのようにべたっとして剥がれない、透明なでっかいナメクジみたいな、あんな気持ち悪い奴ではない……!

「あ、あれが……?」
「うん、そうだよ……!」
「そういえば、あれ、昨日もいた……。ユリタンが昨日見つけてすごく警戒してたの。そのときは全然動いてなくて、ただの水のゼリーの塊みたいだと思ったんだけど……」
「み、みれちゃん……! なんで教えてくれなかったの?」

 思わず責める口調になってしまった。美怜は美怜でアワアワとしている。

「ご、ごめん! 小屋のことが嬉しくて、ついいいそびれてた……。ていうか、なんだったのかよくわかってなかったの……」
「そ、そうか……。それじゃあしかたないね……。でも、次からは普通じゃないものを見かけたら必ず報告して!」
「う、うん……!」

 美怜を庇うようにして、ブーンズみんなでひとまとまりになった。美怜が襲われたとなると、カラコマ瓢箪があるとはいえ、すぐにここを去ったほうがいいだろう。

「とにかく荷物をまとめよう。あれっ、タンズは?」
「ごめん、水と食料の採集を頼んじゃった……!」
「と、とにかく、戻って来たらすぐ出発できる準備をしよう! あれっ、この木の食器は……!?」
「あ……、それ、昨日見つけた木のブロックからつくったの……。実は集中し過ぎて徹夜しちゃった……」
「ええっ、すごい……っ!!」

 状況が状況でなければこの感動をもっと力いっぱい表現したい。だが、今はそれどころではない。
 美怜のリュックに食器と残った木のブロックを入れるのを手伝った。まるでほとんどなにも入っていないかのように軽いリュックを背負って美怜がいった。

「銀ちゃんから、タンズに戻って来るようにコールすることはできないの?」
「あ、そうか……! ちょっと待って」

 眼鏡に命じて離れているブーンズに呼びかける通信機能のようなものがないかを探した。

GBジービーアプリのコールは、タブレットから現実へ呼び出すだけみたいだ……。せめて、みんなの位置がわかれば迎えに行けるんだけど……」
「サーチ機能を開始します」
「えっ!」

 眼鏡にそのポップアップウィンドウが出たあとすぐ、方向指示の矢印表示が出た。

 タブレットも確認してみると、現在地を中心に、タンズがそれぞれどこにいるのかが簡易的な東西南北の指標とレーダーで示されている。レーダーに反応を示す黄色のピンには、それぞれヒトエタン、クラウンタン、ユリタンのアイコンが紐付いていた。銀河がタブレットと眼鏡の画面を確認して南東、西、北西の順に指をさす。

「あっちにユリタン、ヒトエタン、クラウンタンだ。一番近いのは……あっ、ちょっと待って!」

 タブレットの画面にレーダー検知されたなにかが、一瞬にして赤いピンで表示された。それも一度に無数に……! 同時にEmergencyエマージェンシー:緊急事態を知らせるポップアップが黄色と黒の警告色の枠で表示され、アラート音と点滅を繰り返す。

「こ、この赤い点、もしかして……モンスター……!?」

「ひぇっ……」

 一瞬にして凍り付いた美怜の短い悲鳴を聞きつつ、画面を注視している間に、赤いピンがどんどん増えていく。しかも、四方八方からはっきりと、銀河と美怜のいるこの場所に向かって来ている! ざっと見ただけでもその数、五十……!

「ぎ、銀ちゃん……っ」
「なんで急に……」
「ど、どう、どうしよう、どこに、逃げ……」
(これだけ囲まれていたら逃げられるかどうか……、隠れるにしてもこのあばら家じゃ無理だ。立ち向かうしかない……!)

 銀河は美怜の強張った手を右手で掴み、左手にカラコマを握って力強くいった。

「みれちゃん、戦おう! 僕らにはこのカラコマがある! さあ、しっかり武器を持って!」
「……ぎ、ぎんちゃ……あ……うぅ……、うん……」

 唇を震わせながら美怜がうなずいた。
 自分もなにか武器になる枝をと思い、視線を森に向けたとき、銀河の体は一瞬にして固まった。草陰から音もなく、いつの間にか無数の透明な水のゼリーの塊……スライムモンスターがぞろぞろと迫って来ていた。その数の多さと異様さに、ぞっと背筋が震える。

(うっ、うわ……!)
 
 スライムなんてザコキャラだ。そう思っていたのに、ゲームと違って可愛げもなければ生命感もないただの水の塊が、じわじわと一斉に距離を詰めてくる。その様子をいざ目の前にすると、未知への恐怖が否応なくせき立てられた。肌の上をザワザワが走る。
 銀河は重苦しい胸を張って、思い切り息を吸った。

「いでよヒシャラ!」

 カッと銀河の手元が光ると、瓢箪の口からシュンッとなにかが飛び出した。【※32】
 ――ザッ!
 スライムたちと銀河たちの間に現れたのは、銀河がはじめに美怜に描いて見せたキャラクター。竜にもトカゲにも似た顔つきで、頭には角のようなものがツンツンと生えている。高さは銀河の三分の一ほどだが、力強い二足立ちで、どことなくカンフー風の服も威圧感がある。銀河が描いたキャラクターよりもややダークな緑色をしているのは、取り込んだのがあの黒や青の入ったまだら模様の蛇だったせいだろうか。【※33】
 素早くヒシャラに命じた。
 
「ヒシャラ、モンスターをやっつけてくれ!」

 突然現れた、いかにも戦闘力の高そうな存在にスライムたちがひるんで前進を止めた。今なら闘う意志を見せるだけで、恐れをなして逃げ帰ってくれるかもしれない。銀河は恐怖と興奮が入り混じった気持ちで、期待を込めてヒシャラを見つめた。
 ところが、ヒシャラはちらりと銀河を見ただけで、ツーンと横を向いてしまった。まるで知らない人のようなそぶりだ。

「えっ……? ……ヒシャラ、わかるだろ! スライムを倒すんだよ!」

 ツーン……。銀河に命じられても、ヒシャラは見向きもせずにそこに立っているだけ。銀河は目を白黒させ、美怜は枝を握りしめたまま、銀河とヒシャラとスライムの大軍をせわしなく目で追う。

「なっ、なんで無視するんだよ!? お前を生み出したのは、この僕だぞ! ヒシャラ、戦うんだ!」

 ツーン。

「おいっ! 聞いてるのか!? 僕の命令が聞けないのか!?」

 ツーン。

「おっ……、おいっ……! ヒシャラ、こっちを見ろ!」

 さらにツーン……。
 いよいよどうかおかしいと、その場にいたスライムたちも気づいたようだ。ヒシャラが全く戦うそぶりを見せないせいで、またじりじりとにじり寄ってくる。しかも後から来たスライムが合流して、さっきのよりも二倍、いや三倍に増えている。美怜が震える息をか細く吐き、ブーンズのみんながオロオロと小刻みに揺れたり、フラフラとうろついている。

「たっ、頼むよ、ヒシャラ!」
「きゃっ!?」

 そのとき、小屋の壁を背にして後ろにいたはずの美怜が悲鳴を上げた。いつの間にか壁の裏側から迫ってきていたのだ。一匹目のスライムが美怜に飛びかかると、続けざまに次々と襲いかかりだした。

「きゃあぁっ、来ないでぇっ!」

 枝を振り回しながら素早く逃げ回る美怜。ヒシャラがその声に反応を示した。銀河はすばやく石かまどの石を掴んで、美怜に付きまとうスライムに叩きつけた。
 ――バチャッ!
 まるで水風船のように破裂した。やはりザコ、と銀河がホッとしたそのとき、無数のスライムに取り囲まれた美怜がパニックを起こしていた。

「ひゃあっ、……ぃぃいっ!」

 ひいひいいいながらも、枝をスライムに向けて、なんとかポコポコ振り下ろしている。だが、その枝には力も入っていないし、見たところ一発も当たっていない。狙いが定まっておらず、スライムにきひょいひょいと余裕で避けられているのだ。
 自分の周りも見て、銀河は気が付いた。

(えっ、なんで、みれちゃんだけが狙われている……!?)
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