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■第1章 突然の異世界サバイバル!
0050 シェルターづくり
しおりを挟む食事が済んだあと、銀河は検証でわかったことを一通り美怜に説明した。
「……ってことみたいなんだ。だから、僕は引き続きサバイバルに役立つブーンズを生み出していこうと思ってるよ」
「うん、わかった。私は辺りを散策しながら、タブレットに出てた薬草も集めてみるね。本当に効くのかどうかわからないけど、怪我したとき、なにもないよりいいよね」
「あと寝床なんだけど……」
「さっき、良さそうな大きな枝があったの。ここで泊まるなら、あとで一緒に取りに行こうよ」
「み、みれちゃん、いつの間に……」
銀河が驚いて見つめた。
「近場をぐるぐる回って目星をつけておいたの。でもひとりじゃ運べなくて」
「う、うん」
「あとね、方位磁針で見てみたんだけど。あっちが南で海があるみたい。あっちは木の実が採れる木がたくさんあって、魚が取れるのは向こうの川」
「え……っ、みれちゃんなんでそこまで知ってるの……?」
「タンズのみんながそういってる気がするの」
「……」
もはや驚くまいとする銀河だった……。美怜を守らなくてはと思っていた銀河だったが、はるかに高い生活力と異種との優れた相互理解力により、守られているのは自分のほうかもしれない。
「……どう思う、銀ちゃん?」
「えっ?」
「だから、どっちの方向に進むか。人が近くに住んでいればいいけど……」
「そ、そうだね……。でも、ひとまずは川伝いに移動したほうがいいんじゃないかな?」
「じゃあ南東、あっちだね」
美怜がアマノジャックマキジャックの方位磁針を確認して指をさした。
しばらくの間、平たい画面だけにじっと目を凝らしていた銀河は、美怜の現実的な行動力と判断力に感嘆した。火おこしや食事にしたってそうだ。銀河ひとりだったら、たとえ同じ道具を持っていたとしても、サバイバル活動がこんなにスムーズにいっただろうか。
「みれちゃん、本当にすごいよ。ありがとう! この串も箸も、すごく使いやすいよ」
「えへへ~、褒められた~! でも銀ちゃんがつくり出してくれたブーンズのおかげだよ。タンズのみんなが手伝ってくれるし、イコたちはいるだけでなんかほっこりするし。あっ、そうだ! リクエストしてもいいかな?」
「うん、どんなこと?」
「あの~……」
珍しく美怜がいいにくそうな雰囲気をまとう。それですぐ銀河も悟った。
「うん、僕も思ってた……。トイレだよね?」
「そ、そうなの……。い、一応、あっち側をトイレにしてるんだけど……」
「そうだよね、臭いで獣が寄って来るかもしれないし、いい道具がないから穴を掘るのも大変だしね……。今、衛生的なことを任せられるブーンズを考えてるよ」
「本当!? よかった~っ!」
「確か、サバイバルではトイレは水源から六十メートルくらい離れていたほうがいいんだよ。水の衛生は健康に直結するから」
「そうなんだ!」
美怜は素直に感心する。もともと探求好きな銀河が物知りなことを、美怜は子どもの頃から知っているのだ。
「じゃあ、今日はここにシェルターをつくろう」
「うん! ロープと雨よけに使えそうな材料はもう集めてあるよ」
「わっ、なにからなにまでありがとう……っ、次からは僕も一緒にやるから!」
「ちなみに、シェルターになるようなブーンズはいないの? マントを持ってるとか、大っきい傘の妖怪みたいなのとか?」
「実はシェルターやテントの絵も描いてみたんだけど、ブーンズみたいにギブバースのコマンドが有効にならないんだ……。う~ん、生き物じゃないからなのかも……。それに、僕らの身を囲えるほど大きいブーンズはそれに応じてBPをたくさん消費するみたいなんだ」
「そっか、じゃあやっぱり、寝床は自分たちでがんばらないとだね」
「うん、今からその枝を取りに行こうよ」
タンズと二体のイコを従えて、目当ての大きな枝を取りに行った。
今日の寝床の場所を決めて、床を調え、枝を縦に末広がりのAの形に組んでいく。蔓草で固定したら、雨よけの大きい葉っぱを枝と組み合わせて壁をつくっていく。【※12】
「うん、初めてにしてはうまくいった気がする」
「はあ……、ふう……、ふう……。そう、だね……」
「大丈夫? 銀ちゃん」
「う、うん……平気だよ」
強がってみたが、慣れない作業にへとへとだった。それなのに、美怜はそれほど疲弊もなく、LPもまだ半分以上残っている。これが先天的LPの差かと思うと複雑だ……。
「私たちふたりが並ぶと足がちょっと出ちゃうし、タンズが入るスペースまでは確保できなかったね。抱っこしてぎゅうぎゅうに詰める?」
「あ、ブーンズはこのポートフォリオに戻すことができるんだよ」
「えっ!?」
「ほら」
銀河が『save:保存』のコマンドをタップすると、一体のイコがすうっと消えた。
「なっ、なんで!? し、死んじゃったの!?」
「生み出したことはなくならないよ。ほら見て、ポートフォリオ上にちゃんと、二体目のイコがいるでしょ? それに、試してみたんだけど、ステータスもちゃんとセーブされるみたいなんだ」
「そうなんだ……。なんか、変な感じ……」
「タンズは攻撃型じゃないから、外敵に襲われたら逃げることしかできない。だから夜はポートフォリオに戻したほうが安全だと思うんだ」
「そっか……、でもちょっと寂しいな……」
「……じゃあ、もう一体のイコだけでも残しておく? イコなら場所は取らないし」
「うん、じゃあ三人で寝よう」
サバイバル一日目の夜が来た。
森は陰りが早く、日中は感じなかった冷気がやってくる。動物除けに火を絶やさないようにしながらシェルターの中でふたり肩を並べた。
「銀ちゃんのいう通り、地面に葉っぱを敷いといてよかったね。夜の森の中ってこんなに湿気が多いんだね」
「うん、体験してみて初めてわかることばっかりだ。あっ、そうだ。イコ、お前の唯一の得意技を出すときが来たよ!」
「え?」
「イコ、あったかくしてくれ」
銀河がそういうと、イコがすいっとふたりの間に入って、頬にほのかなぬくもりを感じさせてくれた。
「わあ、イコこんなことができたの!? すごい!」
「あと、少し涼しくすることもできるよ」
「へ~っ!」
「イコは空気の温度に少しだけ作用できるんだ。といっても、そもそもは魔素みたいな目に見えない形のないもの……ブーンズが働く力の塊だから、あんまり荷が重いことは無理だろうけど……」
「ブーンズパワーの塊かぁ……。例えばどのくらいになるともう無理?」
「北極で温めてとか、砂漠で涼しくしてとか」
「なるほど~。じゃあ私たち運がいいのかもね」
「え?」
「こんなところにいきなり連れて来られちゃったけど、真夏でも真冬でもなく、北極でも砂漠でもない。それにひとりじゃなくて銀ちゃんがいるもん」
「み、みれちゃん……」
それをいうなら、僕のほうこそ……、と喉まで出かかって出ないのが銀河というシャイボーイなのだった。だが、中身は既に大人なのだ。ことさらに残念。
「本当に今日は長い一日だったね……。今朝家を出るときは、こうなると思ってなかったなぁ。硬化中のジオラマうまく固まってるかなぁ……」
「僕も……。ビースタのゲームが現実になる前に、僕の描いたデザインを………ブーンズをこの目で見ることになるなんて思ってもみなかったよ……」
「目が覚めたら日常に戻ってるのかな?」
「どうかな……。それより僕は寝て起きたらBPが回復してるかどうかが気になるよ。それに、早くレベルを上げてLPを上げたい」
「すっかりゲームをしてるときの銀ちゃんだね」
そういわれて内心ギクリとした。
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