【完】888字物語

丹斗大巴

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短編まとめ

# モナミ林のきつねたち

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 モナミ林には四ひきのきつねが住んでおります。

 毛なみの赤っぽいのがアカマメというきつねで、なんてんのような真っ赤な鼻をしていました。

 とてもひくつな性格でいつも相手を上目づかいに見ては顔色ばかり気にするきつねでした。

 いつも足が泥でよごれているのはクロゴメというきつねです。

 おでこに米つぶのようなほくろがあって、そのせいかいつも怒っているように見えました。

 いつしかほんとうに怒りっぽい性格になってしまいました。

 ひときわつややかな毛をしているのがシロゴマというきつねで、背中にすらりと白くすじがありました。

 からだもほっそりとしていてじぶんはこの林で一番のきつねだとおもっているのでした。

 全身が少し青みがかっているのがアオムギというきつねで、しっぽは麦の穂のようにするどい毛なみをしていました。

 無口でめったにしゃべらないけれど、じつは他人の不幸が大すきなきつねでした。

 四ひきのきつねたちは夜がふけるのを待ってモナミ林のひろばに集まります。

 ごそごそかさこそと夜な夜な集会を開くのです。

 森の住民たちが寝しずまったのをみはからってうわさ話をするのです。

 誰も聞いていないのをいいことにもそもそひそひそうつうつとやるのでした。


 ・
 ・
 ・


 ある夜のことでした。

 広場に集まった四ひきのきつねたちはいつものようにうわさ話をはじめました。

 いつもとおんなじようにもそもそひそひそうつうつと。

 するとその日はなぜかいつものひそひそがしだいに大きくなって、さわさわ、ぞわぞわ、そして、ざわざわと聞こてくるのでした。



「しょくんら、ちょっとだまってみたまえ」



 シロゴマが気どったふうにいいました。

 アカマメは上目づかいでせわしなくあたりを見わたしました。

 クロゴメは腹立たし気に足をかきました。

 アオムギはくびを左右にふりました。

 しかし、四ひきのきつねがもれなくだまったにもかかわらず、ざわざわは静まりません。

 どうやらざわざわとしているのはモナミ林の木々のようでした。

 ふしぎにおもったきつねたちがそろって聞きみみを立ててよおく聞いてみると、



「まったくアカマメというきつねはいやな目つきをしているよ。

 こっちまでひくつな気もちになってくる」

「あのクロゴメというきつねだっていつもなにかに怒っているよ。

 まわりのものの気ぶんを悪くしているのがわからないんだろうね」

「シロゴマというきつねはいつでもじぶん、じぶんという。

 そんなにじぶんがすきならほかに誰もいらないね」

「あのアオムギというきつねのいやらしい笑いかたを見たかい。

 ひとの不幸をよろこぶなんて性格が悪いのなんの」






 木々たちのうわさ話をきいた四ひきのきつねたちはいっせいに青とうがらしのような顔いろにかわりました。



「ほうらごらんよ、あのアカマメの目」

「おやおや、クロゴメが月夜草に八つあたりしているよ」

「シロゴマのやつ、今にもたおれそうじゃないか」

「ますます青くなっているよ、アオムギのひどい顔」



 ざわざわ、ざわざわ…。

 木々たちのうわさ話はとまりません。

 それどころかざわざわという音は、木の葉がこすれあうたびになりつづいて、ひたすら大きくなるいっぽうです。

 たまらず四ひきのきつねはひめいを上げて、てんでばらばらに逃げだしました。



 ざわざわ、ざわざわ…。



 きつねたちがいなくなったモナミ林のひろばはしだいにしずかになりました。

 そして、その夜からずっとモナミ林にはしずかな夜がおとずれるようになりました。




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