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第3部 変人令嬢のお陰で辺境編成は大激変! 周辺に生息しているメルヘンなもふもふたちよりも可愛いがすぎる新妻に、辺境伯の偏愛が大変です!
だんさんのことしか見えへん聞こえへん
しおりを挟む「一緒に行こう、マーガレット」
「け、けど、うち人が大勢のいるんは苦手や。人の声がざわざわして落ち着かへん。
王宮にも王都にもいい思い出あらへんし……」
タルカット連邦の魔物鎮圧が上手ういって、だんさんはまた褒章を戴くことになったんはええんやけど……、クラークネス辺境伯がうちのことまで話してしもうたせいで、うちまで呼ばれてしもうた……。
王都でのお茶会やら編み物会やら音楽会やら、とにかくうちはことごとくつまはじきものやった。
言いたいことも言えへんで、端っこで静かにしとるだけならまだええ。
チラチラ見られて、クスクス笑われて、息するんも苦しい……。
お母様もエリスお姉様もベアトリスもすぐに離れて行ってまうし、話しかけられても扇子の裏に書いてあること以外はなんも答えられへんさかい、毎回相手を困らせるか怒らせるかのどっちかや……。
社交界に出る日はいっつも、いっつも逃げ出したかった……。
「うちにとっては、だんさんの隣におれることがいっちゃんの褒章や。そやさかい、早うおかえりやす」
「今回は大々的な式典を行うそうだ。晩餐会や舞踏会もある。それには夫婦同伴でなくてはならんのだが……」
「ほ、ほな……、お義母はん……」
「妻がいるのに私なんかが出張っていたら笑われてしまうわ。
あなたがどうしても出たくないとなると、誰か程よいお嬢さんを誘わなければいけなくなるけれど、それでもいいの?
あなたが一番好きなクリスチャンの隣に他の誰かが座るのよ」
「あっ……」
「あなた以外の女性が夫の腕を取る、あなたそれでもいいの?」
そっ、そんなん、いやや……!
お義母はんの言葉で、一瞬にしてうちの頭に悲しい絵が広がった。
うちより綺麗でお喋りが上手うて、誰が見てもお似合いや言うお嬢はんが、だんさんの隣で笑っとった。
こ、こんなん、いやや、絶対いやや……!
考えただけで目が熱うなってしもた。
「あなたが一番大切にしているものを……」
「は、母上……! それ以上はもう……!
マーガレットが目をうるうるさせて黙り込んでいます……」
「……う、うち、が、頑張る……!」
「えっ……!」
「そうこなくっちゃ! あなたならそう言うと思ったわ、マーガレット!」
「だ、だんさんの隣はうちの席どす……! うち、行きます……!」
「マーガレット……! ほ、本当に大丈夫か?」
大きく頷いたら、勢いで涙の粒が下に落ちていった。
だんさんが来て、温ったか指で、優しゅう涙を掬ってくれはった。
その手をすかさず取った。
この手、だんさんの温ったかい手、離したない。
「よかった……、嬉しいよマーガレット! この機会に私の素晴らしい妻を、国王陛下にご紹介差し上げたいと思っていたのだ。
本当は君を世界中に自慢したいとさえ思っていたんだよ」
「……ほ、ほな、が、頑張るさかい……」
そない言われてしもたら、かなわんわぁ……。
うちはだんさんだけにわかってもらえたら、それでええのに。
そやけど、言うたからには、頑張らな……!
***
「あのマーガレットがねぇ、我が子ながら信じられませんわ……!」
「我が一族からこのような名誉ある褒章を受ける者が現れるとはな!
人生とはまことに奇なるものとはよくいったものよ」
「きっと、デコラム辺境伯がマーガレットを導いてくださったのね。あの二人、見た目は親子みたいだけど、お似合いでしたもの!
あら、ベアトリスどうしたの、そっぽなんか向いて……」
「放っておいて下さいませ!」
幸せな結婚の次は、国王陛下から直々の褒章授与、ですって~~~っ!?
わ、私なんて、まだお相手も決まっていないのに……っ!
どうして、どうして、マーガレットお姉様ばっかり……!
こんなのつまらない、許せない!
私よりも下でウロウロじとじとしているはずのお姉様なのに!
なんで私が観衆のひとりで、お姉様が主役なのっ!?
こうなったら、観衆の前で大恥かかせてやりますわ!
でも、どうしたらいいのかしら?
下手なことをすればこちらが非をこうむりますわ。
なにかいい知恵はないのかしら!
んんん~~~っ!!
「クリスチャン・デコラム辺境伯、そして妻マーガレット。そなたたちの功労を称え、褒章を与えると共に、この名誉を王国の歴史に残すこととする。
本日よりクリスチャン・デコラムは準男爵から子爵を名乗ることを許そう。
さらに、国土広域警備を目的として、私の直下に辺境警備相談役を配し、その任を命じる。
今後も我が国の安全と発展のために、存分に力を発揮して欲しい」
「はっ、拝命謹んで承ります」
ちょ、ちょっと待ってぇ~っ!?
子爵ってうちと同じ家格じゃないの!
しかもデコラム辺境伯が国王陛下直々の官職を拝命したってこと……?
なっ、なんなのよぅ! 今回の魔物鎮圧ってそんなすごいことだったの?
そ、そんなの聞いてないわー!
「さて、森林伐採が魔物発生の諸悪の根源であると見抜いたという、類まれな観察眼を持つ細君に話を聞こう。
報告はすでに受けているが、タルカット連邦はどういう状況であったのだ?」
ええっ、こ、国王陛下がマーガレットお姉様に直々にお声がけされた!
ちょっと、どうする気?
まさか、お姉様に喋らせるつもりなの、デコラム辺境伯?
お父様とお母様を見たら、二人とも焦ってる!
あら、エリスお姉様は心配そうね。ふん、いつの間にやら随分とお優しくなって……!
ちょっとちょっと、これはどうなるか、見物じゃないの。
「……申し上げます……。うちは、このような言葉やさかい、よう聞きなれへん思います。
もし何言うてるんかわからへんようやったら、クリスチャン様が通訳してくれますさかい、そう言うて頂きとうございます」
――ざわっ、ざわっ。
あはっ、おかしい! 謁見の間にそろい踏みしたお偉い皆さんの顔!
あらあら、これは一大事だわね!
お父様が蒼白! お母様は今にも倒れそう。
さあ、荒れるといいわ!
「タルカット連邦は大小様々な山が連なり、そのぶん陰日向がいろいろで、標高の高低、日照時間の違いが様々に生まれます。
これは素晴らしいことで、多様な動植物が住まうことのできる豊かな土地なんどす。
動植物が多様や言うことは、生き物はそれだけお互いを頼り、助け合いながら生きてはります。
降った雨を木々が蓄え、土に染みこんで川となり、水が小さな命を育みます。
小さな命は大きな命の糧となり、その命が絶えたときには、土に戻ってまた新し命をつないでいきます。
人からしたら木は、家になったり家具になったり薪にしたり、役に立つ便利な材料どす。
そやけど、そうした森の動植物にとっては食料庫であり、家であり、休息場であり、貯水槽であり、いろんな役割を担ってはります。
そやさかい、人と森の住人とで、木々を上手う分け合って生きて行かななりまへん」
キャハッ! 陛下のお顔!
面食らって言葉を失ってるわ!
あの変な言葉じゃ、言ってることの半分も伝わるわけがないもの!
デコラム伯爵も存外におばかなのね!
マーガレットにこんな大式典で喋らせたら、顰蹙を買うに決まってるじゃないの!
あらあら、観衆がみんな顔をしかめて口々に噂してる。
お父様、噛み締めた唇まで真っ白!
お姉様は倒れそうなお母様を必死に支えている。
ああ、やっばりお姉様はこうでなくっちゃ!
そのとき、陛下が観衆たちに向かって声を上げた。
「静まれ!」
くふふふっ、さあ、どんなお言葉が出てくるかしら!
「マーガレット、そなたの言葉は……。……いや……。
そうであるか、自然への深い理解、感銘したぞ。
これからも、デコラム辺境伯と共に、我が国に尽くしてくれることを切に願う」
「へえ、承知致しました」
……え……。
そ、それだけ……?
な、なんで……?
陛下の言葉で静まり返った空間。
デコラム辺境伯とマーガレットお姉様が静々と下がっていった。
な、なによ……こんなの、つまらないじゃないの……!
お前は変人だーって騒がれて、観衆から笑い者にされて、ウルウルぐすぐすするお姉様を見たかったのに。
くう~~~っ! なんなのよ!
でもいいわ、どっちにしろ聴衆達はみんなお姉様の変人ぶりがこれでわかったはず。
この後開かれる舞踏会でなんとか恥をかかせてやりますわ!
こういうのは最初が肝心。
一度笑い者にすることができれば、みんなそうするはずですわ。
だって、お姉様の言葉が変だということは、みんな思っていることだもの。
ああ、この子をいじめてもいいのねって言う空気になれば、みんなその流れに乗って、一斉に攻撃し出す。
それが人の心と言うものですわ!
よしっ、ここはいつもと代わり映えのしない手だけど、お姉様にジュースにぶち撒いてあげる。
あの白いドレスをお姉様の好きなスグリのジュースで真っ赤に染めて差し上げるわ!
あ~ら、ごめんなさい、ベアトリスのいつものおっちょこちょい。
お姉様許してぇ~、てへぺろっ!
……ですわ!
***
「さすがは国王陛下だ! 夫人の言葉に動揺なさったんだろうが、あのように毅然と聴衆を黙らせた。それだけ、夫人とデコラム伯爵のご功労をお認めだということだ! なあ、エバン、そう思うだろ?」
「そりゃそうだよ。盛大な式典に、この豪華な舞踏会。晩餐会は山海の珍味が勢ぞろいだっていうんだ。あっ、見ろよ、ジェイド! デコラム伯爵と夫人がいらしたぞ。挨拶に行こう!」
「だっ、だめだよ! 父上には大人しくしていろって言われただろう!
ほら、もう人だかりじゃないか。もう少し待てば、俺たちにも挨拶できる機会がきっとくるよ」
「そ、そうだな……」
伯父上に必死に頼み込んで連れてきてもらった式典。
ジェイドはともかく、俺は甥の一人だ。
ちぇっ。
俺の方がデコラム伯爵と働いた時間は長いはずだけどな……!
まあしょうがない、酒でも飲みながら人が引くのを待つか。
「――おっと!」
「きゃっ!?」
デコラム伯爵と夫人の方を見ながら、ワインテーブルに手を伸ばしたら、何かとぶつかった。
ジェイドとそう変わらない年頃の令嬢が、手に赤い飲み物を持っていた。
えっと……、誰だ?
「失礼しました。私はエバン・クラークネス。御召し物はご無事でしょうか、お嬢さん」
「え、ええ……! 危ない所でしたけれど。ベアトリス・ヴィリーバですわ」
「えっ! ということは、デコラム子爵夫人の御親類ですか」
「ええ、まあ……。マーガレットは姉ですわ」
「そうでしたか! 夫人には大変お世話になり……」
「お姉様のことは聞きたくありませんわ! お話しなら直接本人とお話なさって」
「え……」
「まあ、その時間があればですけど……!」
……なんだ、この妙な笑い顔は?
夫人の妹だと言うのに、なぜ姉のことを悪いように言うんだ?
やたらと化粧が濃いな。妹と言うより姉に見えるぞ。
そう言えば……。
夫人は結婚するまで変人扱いされていて家族にも冷遇されていたと、誰かが噂していたな。
つまり、それがこの妹と言う事か。
この娘、何かおかしな予感がする……。
「失礼」
「ベアトリス嬢! ……ええと、その」
「なんですの? 私忙しいんですわ」
「……そ、そのワインは女性が飲むには少し重たいかと。よかったら、今、別の飲み物を。
もうしばらく私とお話でもしませんか?」
「スグリジュースを探していたんですけれど、別にいいんですの。私が飲むわけじゃありませんもの。では失礼」
「えっ、あ……!」
さっと背を向けて歩き出す背中を追おうとしたが、ジェイドに肩を掴まれた。
「なんだよ、振られたのか?」
「違う! あれは……っ」
ベアトリス嬢がすいすいと人波を縫って行ってしまう。
いつの間にか、デコラム伯爵と夫人を取り囲む輪の中に滑り込み、夫人の隣に立っていた。
次の瞬間、女性たちの悲鳴がその輪からいくつも上がった。
見れば、夫人の白いドレスにワインの赤々とした染みが広がっていた。
や、やっぱり――!
なにかすると思ったが、実の姉の栄誉の日に、あんなことをするなんて!
なんて女だ!
「べッ、ベアトリス、なんてことを……!」
「ごめんなさいお母様! マーガレットお姉様、ごめんなさいね!
お姉様に飲み物を差し上げたかったのに、おっちょこちょいなの私……!
許してぇ、お姉様……!」
頭にかあっと血が上る。
自分でも信じられないくらい、腹が立った。
「おいっ、エ、エバン! どこへ行く!」
ジェイドの声も遠く、俺は騒ぎの渦中に飛び込んでいた。
「来いっ!」
「きゃあっ、なにするの!」
ベアトリスの手首をつかむと、俺は会場の出口へ向かって歩き出した。
引きずられるようにしてヨタヨタしながらも強気にベアトリスが叫んでいたが、構うものか。
休憩室のドアを乱暴に開けると、ベアトリスを中に投げ込んだ。
「きゃあっ! ちょ、ちょっと、何するんですの!?」
「お前のしたことは、最低だ!」
部屋には先客がいたが、俺の大声に慄いて、そそくさと部屋を出て行った。
一瞬はひるんだベアトリス。
だが、意思を変えないとばかりに、俺を睨みつけてきた。
「なんなのよ、あなた関係ないでしょ!」
「血のつながった姉妹にどうしてあんなひどいことができるんだ!」
「うるさあぁいっ! お姉様ばっかりが幸せそうにしているから悪いのよ!」
「なぜ一緒に喜んでやれないんだ!」
「気に入らないのよっ! お姉様が私より幸せなのが腹立たしいの!
悪い? そうだとしても、あなたに何か関係ある!?」
こいつ、なんて女だ……!
一瞬拳を固め、腕を振り上げそうになったが、なんとか堪えた。
これ以上騒ぎを大きくしたら、デコラム辺境伯夫妻を困らせそうだ。
俺は魔物を射殺すつもりで、ベアトリスを見下ろした。
「見下げたやつだ。お前のような女、俺だったら神に頭を下げられてもごめん被る」
吐き捨てて、休憩室を出た。
この胸の悪さを、今すぐ酒で洗い流したい。
舞踏会の会場へ戻ると、すでにデコラム伯爵夫妻は退場した後だった。
遅れてやってきたらしい陛下や、周りの全員も、呆然として立ち尽くしていた。
ひとりグラスにワイン瓶を傾けていたら、目ざとくジェイドか俺を見つけて駆け寄ってきた。
「エ、エバン……! とんでもないことになったよ……!」
「……ああ……」
伯父上の大説教間違いなしだな……。
気つけに一杯やらなきゃまともに聞いてられない。
「い、今、すごいものを見たんだ! デコラム子爵と夫人が……っ!」
……えっ、なにを見たって?
***
……まずい……っ!
白のドレスが赤く染まり、マーガレットが蒼白になって固まってしまった。
「べッ、ベアトリス、何てことを……!」
「ごめんなさいお母様! マーガレットお姉様、ごめんなさいね!
お姉様に飲み物を差し上げたかったのに、おっちょこちょいなの私……!
許してぇ、お姉様……!」
ワイングラスを持って現れたときから何やら嫌な気配がしていたが、まさかここまでするとは。
口からちろっと舌を出した半笑い顔。完全に故意にやったのだ……!
くそ、こんなにそばにいながら、マーガレットを守り切れないとは!
そのとき、人だかりの間を勢いよく突進してきたのは、エバン・クラークネスだった。
「来いっ!」
「きゃあっ、なにするの!」
エバンはベアトリスの手首をつかむと、有無を言わさず引きずるようにして叫ぶベアトリスを連れ去っていった。
それと入れ替わるように、国王陛下が入場されてきた。
しまった……!
退出するタイミングを完全に逸してしまった。
マーガレットが赤く染まったドレスをつまみ、青ざめた顔で礼をする。
ああ、あんなに震えている……!
早くここから出してやらなければ!
しかし、陛下は我々の前にやってきた。
「舞踏会を楽しんでおるか、デコラム辺境伯、マーガレット……そのドレスは、どうした……?」
陛下がお声がけ下さったのはむしろ幸いか。
私はすかさず口を開いた。
「妻の気分が優れませぬゆえ、これにて退場させていただきとう存じます」
「……それがよかろう」
許しを得て、私はすかさずマーガレットを抱き上げた。
腕の中に抱くと、マーガレットは私の胸に顔を押し付けるようにして小さくなった。
そのときだ。
会場のどこからか心無い声がさざめいた。
「やはりの変人と言う噂は本当だったか」
「デコラム辺境伯も変なのを押し付けられてかわいそうですわねぇ」
「伐採が原因だったっていうのもたまたまだろ」
「木や魔物がしゃべるわけでもあるまいし」
腹の底がじりじりと熱くなった。
ここにいる者たちは誰一人知らないのだ!
マーガレットこそが、聖獣の声を聞き、荒ぶる魔物たちを治めてくれたことを。
本当に賞されるべき真の功労者は、今ここで、人の悪意の震え中傷に耐えていると言うのに!
このようなことが、どうして許されようか!
今ここで、本当のことを公にすれば、ここに居る全員は、国王陛下でさえも、マーガレットを下に置くことはできないというのに!
いつしか私は怒りでわなないていた。
ぎりっ、ぎりっと歯が鳴る。
そうだ、今ここではっきり言ってやればいい!
大声を張り上げようと息を吸った。
そのとき、マーガレットの小さな手が、私の頬に触れた。
はっとして見ると、今にも泣きだしそうな顔で小さく首を振っていた。
「いわんといて、なんもいわんといて……」
マーガレット……!
ああ……っ!
胸がつぶれそうだ。
マーガレットをこんなにつらい目に遭わせておきながら……っ!
私は、私は、今何もできないのか……っ!
血が上って忘れかけていた約束。
やり場のない怒りを抑えるのに何度も吸っては息を吐いた。
悔しい……!
力が足りず、マーガレットを守ることができなかった。
だが、私にはマーガレットとの守るべき約束がある……!
腕の中の小さな体をぎゅっと強く抱きしめた。
「マーガレット、私の最愛の人よ。私をだけ見ていなさい。私のこの胸の鼓動だけを聞いていなさい」
「……うち、だんさんのことしか見えへんし、聞こえへん……」
マーガレットがぎゅっと私に体を押し付けた。
その時だ。
マーガレットの白金の髪が、白いドレスが、輝き出した……?
見間違いかと思った光は、あっという間にマーガレットを包んだ。
マーガレット、き、君は……?
「こ、この、光は……!?」
「か、輝いてる……!」
「デコラム伯爵と夫人が、二人とも、輝いているぞ!」
わ、私も……!?
自分ではよく見えないが、確かに、私の腕や肩からも光が立ち上るように輝いて見えた。
なんなんだこれは……!
訳が変わらぬまま、光は次第に落ち着いて、しばらくするとマーガレットはもとに戻っていた。
呆然とする会場で、ぽつぽつと人が口を開きだす。
「な、なんだ、あの光は、まるで……」
「いや、そんな、まさか」
「あれは、絶対王への……?」
「まさか!」
「――静まれ!」
陛下の鶴の一声で、会場が再び沈黙した。
「……デコラム辺境伯、早く夫人を休ませてやるがいい」
「はっ……」
こうして私とマーガレットはこの場を後にした。
あのまばゆい光……。
突如輝きだしたその理由。
きっとそれは、あの聖獣たちなら、知っているのだろうか……。
マーガレット、君は、知っているのか……?
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