【新作】悪役令嬢の厄落とし! 一年契約の婚約者に妬かれても、推しのライブがあるので帰りたい! ~ご令嬢はいつでもオムニバス5~【1〜4完】

丹斗大巴

文字の大きさ
上 下
19 / 89
第1部 婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて今はとっても幸せです

一度失ったからこそ

しおりを挟む


「リサ、がっかりしないで。徳のあるところには徳が集まるというわ。

 真心を持つあなたがいれば、美徳を備えた家がきっと新しく生まれるはずよ」

「あなたを見習ってがんばってみるわ。手紙を書くわね、三日に一回。……必ず返してくれるわね?」

「なんだか子ども時代を思い出すわね」



 私とリサは固く長い抱擁を交わした。

 これからは互いの国を行き来するのに障害はない。

 手紙はもちろん、会いたいときには会いに行ける。

 ラルフ陛下が私の前にやってきた。



「詫びの言葉は言い尽くせぬが、別れの時が来てしまった。

 ミラ、どうか息災でいてくれ。

 いつか我が国の地に再び足を踏み入れるときが来たら、そのときは君がかつてのような笑顔を見せてくれるように、精一杯努めていく。

 同じ過ちは二度と繰り返さないと誓う」

「はい。ラルフ陛下もどうかお元気で。リサをよろしくお願いいたします」



 メゾシニシスタ王国はセントライト王国の復興を支援することを約束して、ふたりは帰路についた。



「ミラ、私は二日に一度は手紙を書くことにしますわ!」

「アルベルティーナったら、どうせ続かないでしょ。いつまでリサ王妃陛下に張り合っているのよ」

「だって一番の親友はこの私よ」

「あら、それをいうなら私のほうが……! ――でもどっちでもいいわ! ミラが残ってくれて本当にうれしいんだもの!」

「私も~! 」



 いつものように、ふたりがぎゅっと私の腕をそれぞれに抱いた。

 ふたりの笑顔に、ホッと心が安らぐ……。

 今の私にとって、この瞬間が本当にかけがえのないものなの。

 バルトロメーオとカロージェロも笑い顔。


「ラルフ陛下に『誓い』を捧げるとなったときは、正直もう駄目かと思った。冷や汗でまだ背中が冷たいよ」

「そうだよ……、ヴァレンティーノ様に捧げるならそうといってくれればよかったのに」

「ごめんなさい。みなさん、心配させて。でも、リサに再会したことで、改めてよくわかったの。

 私にとってここで出会えたこの四人が、私にとって本当に今大切にしたい人たちなんだって。

 本当に、みなさんには心から感謝しているの……!

 我が一族が大切に守り継いできた真心を、今世では心から大切に思える、相応しいと思える人に捧げることができましたわ。

 私はこれからもメゾシニシスタ王国の国民のひとりとして、みんなと一緒に生きていきたい。この人生を全うしていきたいの……!」



 アルベルティーナとバルトロメーオが目を潤ませている。



「もう、そんなの、私だって同じですわ」

「俺もこんな奇跡みたいな出会い、一生のうちには二度とないと思う。みんなが俺の誇りだ!」



 カロージェロとジュスティーナも鼻をすすりながらうなづく。



「僕も……、この五人でヴァレンティーノ様をお支え出来るなんて、本当に幸せだよ」

「んふっ、ミラったら本当に謙虚ね。国民のひとりだなんて、あなたは未来の王妃様じゃないの!」



 そ、そういわれると、なんだか今さら急に、恥ずかしさが……。

 ヴァ、ヴァレンティーノ様が、あんなところで堂々とキスなさるから……。



「あらっ、ミラが赤くなった!」

「珍しいわ!」

「ヴァレンティーノ様の情熱は、ちょっと目に余りすぎだけど……。でも良かったな、ミラ!」

「心から尊敬できて側にいたいと思える人がいるって、素晴らしいことだよ」

「ええ、ありがとう」

「ねぇ、私たちもこれからヴァレンティーノ様に『誓い』を捧げるってことよね?」

「ああ、最近前よりもずっとしっかりしてきたしな」

「そうね、私もこのところいろんな本を薦めているけれど、ちゃんと全部読んでいらっしゃるわ」

「僕も『誓い』を捧げてもいいかなって思うことがあったんだ。この前……」

「おい、俺のいないところでまた俺の悪口か!?」



 あら、ヴァレンティーノ様……!

 いつの間に見送りから戻ってらしたの……?



「お前たち、いつも好き勝手言ってくれるがな、俺はもう既にミラから『誓い』を頂いた絶対王なんだぞ!」

「まだ五分の一ですわ、気がお早いこと」

「それにまだ絶対王 ( かっこ予定 ) かっことじるですわよ」

「む、むぅっ……!」

「ヴァレンティーノ様、今言ってたのは悪口じゃないですよ」

「そうですよ、みんな褒めていたんです」

「本当か……? また四人で俺をからかっているんじゃないだろうな?」

「あら、私たち褒めるときには誉め言葉を惜しむような人間じゃありませんわ」

「んふっ、疑うことを覚えましたわね。王としては必須の素養ですわ」

「本当ですって。今日だって、ラルフ陛下への鋭い質問、良かったですよ!」

「僕もヴァレンティーノ様に『誓い』を捧げてもいいって話していたんです」

「ほ、本当か!?」



 ヴァレンティーノ様の耳が赤く……。

 ふふっ、心から喜んでいらっしゃるのね。

 ああ……。

 なんて幸せな光景かしら。

 これは前世の私が、ずっと見たかった光景。

 みなさんがいるから、その夢がかなったのだわ……。




「ミラ、どうしたんだ、黙りこくって……?」



 ヴァレンティーノ様がいうと、四人がそれぞれに視線を向けてくる。

 目の前の五人が、今、輝いて見えますわ……。

 黄金よりもダイヤモンドよりもまぶしい宝物みたいに。

 一度失ったから、余計にそう感じるのかもしれない。

 今ここにあるこの幸せ、未来への希望、手を伸ばせば触れられる距離にいる大切な人たち。

 この愛おしさ……。



「……胸がいっぱいで、言葉にならないんですわ……!」



 涙ぐむ私を、五人が花のように包んでくれた。

 私は、ここでみなさんと一緒に生きていく。

 二度目の人生、悔いを残さないように、心を尽くしますわ。

 大切に、精一杯……!

 アルベルティーナ、ジュスティーナ。

 バルトロメーオ、カロージェロ。

 ヴァレンティーノ様。

 ありがとう……。

 本当に、大好きですわ……!



* お知らせ * こちらも公開中! ぜひお楽しみください!





しおりを挟む








感想 7

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

【短編】お姉さまは愚弟を赦さない

宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。 そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。 すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。 そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか? 短編にしては長めになってしまいました。 西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

処理中です...