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第1部 婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて今はとっても幸せです
一度失ったからこそ
しおりを挟む「リサ、がっかりしないで。徳のあるところには徳が集まるというわ。
真心を持つあなたがいれば、美徳を備えた家がきっと新しく生まれるはずよ」
「あなたを見習ってがんばってみるわ。手紙を書くわね、三日に一回。……必ず返してくれるわね?」
「なんだか子ども時代を思い出すわね」
私とリサは固く長い抱擁を交わした。
これからは互いの国を行き来するのに障害はない。
手紙はもちろん、会いたいときには会いに行ける。
ラルフ陛下が私の前にやってきた。
「詫びの言葉は言い尽くせぬが、別れの時が来てしまった。
ミラ、どうか息災でいてくれ。
いつか我が国の地に再び足を踏み入れるときが来たら、そのときは君がかつてのような笑顔を見せてくれるように、精一杯努めていく。
同じ過ちは二度と繰り返さないと誓う」
「はい。ラルフ陛下もどうかお元気で。リサをよろしくお願いいたします」
メゾシニシスタ王国はセントライト王国の復興を支援することを約束して、ふたりは帰路についた。
「ミラ、私は二日に一度は手紙を書くことにしますわ!」
「アルベルティーナったら、どうせ続かないでしょ。いつまでリサ王妃陛下に張り合っているのよ」
「だって一番の親友はこの私よ」
「あら、それをいうなら私のほうが……! ――でもどっちでもいいわ! ミラが残ってくれて本当にうれしいんだもの!」
「私も~! 」
いつものように、ふたりがぎゅっと私の腕をそれぞれに抱いた。
ふたりの笑顔に、ホッと心が安らぐ……。
今の私にとって、この瞬間が本当にかけがえのないものなの。
バルトロメーオとカロージェロも笑い顔。
「ラルフ陛下に『誓い』を捧げるとなったときは、正直もう駄目かと思った。冷や汗でまだ背中が冷たいよ」
「そうだよ……、ヴァレンティーノ様に捧げるならそうといってくれればよかったのに」
「ごめんなさい。みなさん、心配させて。でも、リサに再会したことで、改めてよくわかったの。
私にとってここで出会えたこの四人が、私にとって本当に今大切にしたい人たちなんだって。
本当に、みなさんには心から感謝しているの……!
我が一族が大切に守り継いできた真心を、今世では心から大切に思える、相応しいと思える人に捧げることができましたわ。
私はこれからもメゾシニシスタ王国の国民のひとりとして、みんなと一緒に生きていきたい。この人生を全うしていきたいの……!」
アルベルティーナとバルトロメーオが目を潤ませている。
「もう、そんなの、私だって同じですわ」
「俺もこんな奇跡みたいな出会い、一生のうちには二度とないと思う。みんなが俺の誇りだ!」
カロージェロとジュスティーナも鼻をすすりながらうなづく。
「僕も……、この五人でヴァレンティーノ様をお支え出来るなんて、本当に幸せだよ」
「んふっ、ミラったら本当に謙虚ね。国民のひとりだなんて、あなたは未来の王妃様じゃないの!」
そ、そういわれると、なんだか今さら急に、恥ずかしさが……。
ヴァ、ヴァレンティーノ様が、あんなところで堂々とキスなさるから……。
「あらっ、ミラが赤くなった!」
「珍しいわ!」
「ヴァレンティーノ様の情熱は、ちょっと目に余りすぎだけど……。でも良かったな、ミラ!」
「心から尊敬できて側にいたいと思える人がいるって、素晴らしいことだよ」
「ええ、ありがとう」
「ねぇ、私たちもこれからヴァレンティーノ様に『誓い』を捧げるってことよね?」
「ああ、最近前よりもずっとしっかりしてきたしな」
「そうね、私もこのところいろんな本を薦めているけれど、ちゃんと全部読んでいらっしゃるわ」
「僕も『誓い』を捧げてもいいかなって思うことがあったんだ。この前……」
「おい、俺のいないところでまた俺の悪口か!?」
あら、ヴァレンティーノ様……!
いつの間に見送りから戻ってらしたの……?
「お前たち、いつも好き勝手言ってくれるがな、俺はもう既にミラから『誓い』を頂いた絶対王なんだぞ!」
「まだ五分の一ですわ、気がお早いこと」
「それにまだ絶対王 ( 予定 ) ですわよ」
「む、むぅっ……!」
「ヴァレンティーノ様、今言ってたのは悪口じゃないですよ」
「そうですよ、みんな褒めていたんです」
「本当か……? また四人で俺をからかっているんじゃないだろうな?」
「あら、私たち褒めるときには誉め言葉を惜しむような人間じゃありませんわ」
「んふっ、疑うことを覚えましたわね。王としては必須の素養ですわ」
「本当ですって。今日だって、ラルフ陛下への鋭い質問、良かったですよ!」
「僕もヴァレンティーノ様に『誓い』を捧げてもいいって話していたんです」
「ほ、本当か!?」
ヴァレンティーノ様の耳が赤く……。
ふふっ、心から喜んでいらっしゃるのね。
ああ……。
なんて幸せな光景かしら。
これは前世の私が、ずっと見たかった光景。
みなさんがいるから、その夢がかなったのだわ……。
「ミラ、どうしたんだ、黙りこくって……?」
ヴァレンティーノ様がいうと、四人がそれぞれに視線を向けてくる。
目の前の五人が、今、輝いて見えますわ……。
黄金よりもダイヤモンドよりもまぶしい宝物みたいに。
一度失ったから、余計にそう感じるのかもしれない。
今ここにあるこの幸せ、未来への希望、手を伸ばせば触れられる距離にいる大切な人たち。
この愛おしさ……。
「……胸がいっぱいで、言葉にならないんですわ……!」
涙ぐむ私を、五人が花のように包んでくれた。
私は、ここでみなさんと一緒に生きていく。
二度目の人生、悔いを残さないように、心を尽くしますわ。
大切に、精一杯……!
アルベルティーナ、ジュスティーナ。
バルトロメーオ、カロージェロ。
ヴァレンティーノ様。
ありがとう……。
本当に、大好きですわ……!
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