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第1部 婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて今はとっても幸せです
五家の誓い(1)
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「ねぇ、どうして行かないの!?」
「そうよ、絶対行くべきですわ!」
すっかり年頃のご令嬢となったアルベルティーナとジュスティーナ。
気を付けて、お茶がこぼれそうですわ……。
そのお向かい。こちらもすっかり若き紳士となったバルトロメーオとカロージェロ。
揺れるテーブルとケーキスタンドをすかさず押さえる。さすがですわ。
「ミラが行かないと決めたんならそれでいいじゃないか、なぜまぜっ返すんだ」
「そうだよ……、なにも皇子妃になることばかりが幸せじゃないよ」
「あなたたちは、皇子妃選びにミラが参加しないほうがうれしいんでしょ?」
「バレバレよ! ふたりともずっと昔からミラに思いを寄せているんだもの」
「ばっ……! だ、だとしても、わざわざ言う事じゃないだろ!」
「そっ、それは、その……」
「は~あ、ばかみたい! 男同士けん制し合っているんだか、遠慮し合っているんだか知らないけれど」
「男ならスバッと言って、サクッと振られちゃいなさいよ!」
「なっ、なんで振られる前提なんだよ……!」
「うっ……」
社交界は今、ヴァレンティーノ皇子殿下の妃選びの話題で花盛り。
年頃のご令嬢のいる貴族にはもれなく次のお茶会の招待状が届いている。
これをご辞退すれば、皇子妃の候補を辞退するという意味。
「あなたになら皇子妃の座を奪われても納得できるのに!」
「私もよ。正々堂々戦いましょうよ!」
「お父様にももうそのようにお願いしているの」
「元孤児だっていう、心無いやっかみのせいね?」
「そんなの気にすることありませんわ! 影口を言うあの令嬢たちよりあなたは遥かに素敵なんですもの」
見渡すと、四人がそれぞれにはっきりと伝えてくれている。
孤児だったなんてことは私たちの友情にはなんの障害にもならないいと。
うれしい……。
私にとっては、みなさんの気持ち、それだけで本当にうれしいの。
でも、こんな日が来るんじゃないかとは思っていた。
今日私は、ずっと四人にはいつか打ち明けようと思っていたことを話すつもり。
カロージェロが遠慮がちな口を開いた。
「ミラ、なにか思いつめているんじゃない……?」
「心配事があるなら話してみろよ。俺たち、なんでも聞くからさ」
バルトロメーオもうなづく。
覚悟を決めて、息を吸った……。
「あのね、私、前世の記憶があるの……」
「えっ……?」
「ぜん……?」
「前世の、記憶……?」
「え、なん……?」
思った通り、訳がわからないという顔つきの四人……。
当たり前ですわよね、こんな突拍子もない話。
私はを包み隠さずすべてを話した。
セントライト王国で終えた一回目の人生……。
次第にみなさんの顔が驚きや混乱、そして最後には惑いを伴う苦悶や同情に変わる。
「そ、それじゃあ、ミラは、本当にミラ・サーフォネス嬢だったのか……?」
「し、信じられない……、横暴すぎるわ……」
「ミラ、つ、辛かったね……」
「話には聞いていたけれど、セントライト王国の失墜って、そういうことだったのね……」
え……?
あ、あら……、みなさん……信じて、くださるの……?
思いもよらず飲み込みのいい反応ですわ……。
「……そうか、なんかいろいろ附に落ちたぞ……」
「許せない、アドルフ皇子、許せないわ……!」
「ミラ……、つ、辛かったよね……、ううっ……」
「ちょっと、カロージェロ、なに泣いているのよ」
「だって……、ううっ……!」
「み、みなさん……、こんな話、本当に信じてくれるの……?」
四人が一斉に私を見た。
「ミラは俺たちの仲間だ、信じるに決まっているだろ!」
「当たり前よ! 私はあなたの親友なんだから!」
「ううぅ、僕も、信じるよ……!」
「ええ、私もよ。だって、このメゾシニシスタ王国における五つの美徳を持つ五大伯爵家として、私たちを引き上げてくれたのは、紛れもなくミラだもの!」
みなさん、ありがとう……!
そう、今や、私たちはこの国での五つの美徳の象徴として注目を浴びるまでになっている。
四人と初めて会ったあの日から、四人はそれぞれに自分たちの長所と短所に目を向けるようになった。
そして、それは各々にいい影響を及ぼしただけでなく、次第に派生していった。
それは、彼らがもともと持っていた徳、そのもの。
アルベルティーナが思ったままに口を開いた。
「でも、それならますますミラは王家に入るべきなんじゃなくて?」
「私の中にあるこの『誓い』の力は、本当にその器のある人に渡さなければならないの。
お父様やお兄様は、アドルフ様にこの真心を受け取っていただけなかったのは、アドルフ様にその器がなかったからだとおっしゃっていたわ。
だから、皇子という立場だけで、私は結婚したくない。同じ間違いを犯したくないの。
今度こそはきっとこの力を捧げるにふさわしい方に、この真心を捧げなければいけないと思うの……」
「そうだったのね、納得したわ……。私、あなたの気持ちを尊重する。あなたなら必ずいい方と巡り合えるわよ……!」
「ヴァレンティーノ皇子殿下のことは、私かジュスティーナに任せておいて!」
「ふふっ、心強いわ。私、ふたりに出会えて本当によかったと思っているのよ。
社交界では私がやっかみや罵詈雑言に囲まれていると、いつも何倍にもして返してくれて……。
私では、言いたいことの半分もいえないんですもの」
「それが私とジュスティーナですもの」
「んふっ、この私を論破できる人間なんて、この国にはそうはいなくてよ!」
「バルトロメーオとカロージェロも、いつも体を張って守ってくれてありがとう。
お父様やお兄様がいないときに限って見知らぬ方からしつこく声をかけられたり絡まれたりすると、本当に困ってしまうの。
ふたりの正義感と友情にはいつも助けられているわ」
「それは単にあなたに他の虫を寄せ付けたくないだけの、浅はかな下心なのよ、ミラ」
「そうそう、巷じゃ黒バラの番犬たちって呼ばれているんだから」
「……よ、余計なことを言うな!」
「僕は役に立ててうれしいよ……!」
バルトロメーオとカロージェロが、それぞれに青年らしい情熱で頬を染めている。
若者らしくてとても素敵。
だけど、出会ったときすでに歳の差があったせいか、ふたりのことはいまだに男性というよりは親友という気持ちが強い。
けれど、この真心を捧げる相手がふたりのうちどちらかでも、私は驚かない。
だって、ここにいる四人が四人とも、素晴らしい人だから……!
ジュスティーナが突然改まった。
「ねぇあの……、ミラ、生まれ変わりという話を聞いて、私どうしても聞いてみたいことがあるんだけど……」
「なんでも聞いて。ここにいる四人にはもうなにひとつ隠し事はないわ」
「本当? じゃあ、その、『誓い』を暗唱すると見える光って、私たちにも見せてくれたり……する?」
「ええ、実はそのことなんだけど……」
実は、今日の打ち明け話はすでにお父様たちに相談済み。
つまり、『誓い』についてお父様たちは可能性を試してみてもいいとおっしゃっているの。
「お父様たちとも話し合ったのだけれど、ここにいる四人に『誓い』の言葉を授けたいと思うの」
「え……っ!?」
「さ、授ける……って?」
「ぼ、僕たちに?」
「えっ……、でも『誓い』はセントライト王国の門外不出じゃ……!?」
『誓い』は絶対王と五大伯爵家のみが知る、国防の秘密。
でも、すでに『誓い』は破られた……。
セントライト王国には今はもう、第二皇子妃のリサの出身であるシンセリティ伯爵家しか残っていない。
その他の伯爵家はすでに王家を見放して国外へ出てしまったのだ。
こうなってしまった以上『誓い』の力はどう使うべきなのか……。
これが、プレモロジータ家の家族みんなで時間をかけて考えに考えた結果。
「ここにいるみなさんなら、きっと『誓い』を正しく引き継いでくれると思うの。
バルトロメーオは正義の心、アルベルティーナは礼儀、ジュスティーナは智慧、カロージェロは誠実な心。
ひとりひとり、我がプレモロジータ家と同じように、それぞれ大切な真心を持っていますわ。
だから、ひょっとしたら、みなさんにも『誓い』の光が灯るかも知れないと、そう思っているの……」
「お、俺たちが……!?」
「私たちにも、そんな力が……?」
「ち、『誓い』を僕らが引き継ぐ……!?」
「そんなことが、本当にできるの……?」
四様に驚きに揺れる。
私にはなぜか、確信のようなものがある……。
理由を問われてもわからない。
ただ、四人といるときの感覚は、リサと一緒にいるときの感覚によく似ているの。
「もし、光が灯らなくても、それは真心がないということではありませんの。
『誓い』は捧げた者が亡くなると、同じ家の誰かの元に戻ってくるものなのです。
だから、自分がだめだったとしても、家族や子孫の誰かに『誓い』の力が巡っていくの。
……どうかしら……? みなさんならきっと受けてくれるんじゃないかと思っているのだけど……」
「お、俺は、やる!」
「わっ、私もよ!」
「僕も!」
「こんな名誉なこと、享けなかったら一生後悔するわ……!」
よかった……! 四人ならきっと、そういってくれると思っていたの!
込み入りすぎた話のお陰で、お茶にふさわしい時間はすっかり過ぎ去っていた。
「それじゃあ、次に集まるのは一週間後、場所はユニコーン邸だな!」
「王宮のお茶会の翌日ね! 次ぎ会うときは、皇子の婚約者様かもしれなくってよ!」
「な、なんか、緊張するなぁ……」
「そうでしょうとも、今のうちに私に恩を売っておくといいわよ、カロージェロ」
「カロージェロは『誓い』を授かることに緊張するって言ったのよ。本当にあなたってば、もっと行間を読みなさいよ」
「わ、わかっていたわよ、それくらい! 冗談でいったのよ!」
「ほんとかしら~」
「本当よ!」
「ほんとかしら~」
「そうかしら~」
バルトロメーオとカロージェロがジュスティーナの声色をまねた。
アルベルティーナが頬を染めて三人をねめつける。
「もうっ、皇子妃に選ばれたら、見てなさいよっ!」
くくく、と低い笑い声を立てる三人。
四人の様子がおかしくて、笑ってしまうわ……!
この四人といると、本当にいつも笑顔でいられる。
そして、心は太陽のように温かいの……。
ヴァレンティーノ皇子殿下に会うことがあったら、進言して差しあげたい。
アルベルティーナと、ジュスティーナ。
どちらも間違いなく、妃に相応しい女性に間違いございません、と。
「そうよ、絶対行くべきですわ!」
すっかり年頃のご令嬢となったアルベルティーナとジュスティーナ。
気を付けて、お茶がこぼれそうですわ……。
そのお向かい。こちらもすっかり若き紳士となったバルトロメーオとカロージェロ。
揺れるテーブルとケーキスタンドをすかさず押さえる。さすがですわ。
「ミラが行かないと決めたんならそれでいいじゃないか、なぜまぜっ返すんだ」
「そうだよ……、なにも皇子妃になることばかりが幸せじゃないよ」
「あなたたちは、皇子妃選びにミラが参加しないほうがうれしいんでしょ?」
「バレバレよ! ふたりともずっと昔からミラに思いを寄せているんだもの」
「ばっ……! だ、だとしても、わざわざ言う事じゃないだろ!」
「そっ、それは、その……」
「は~あ、ばかみたい! 男同士けん制し合っているんだか、遠慮し合っているんだか知らないけれど」
「男ならスバッと言って、サクッと振られちゃいなさいよ!」
「なっ、なんで振られる前提なんだよ……!」
「うっ……」
社交界は今、ヴァレンティーノ皇子殿下の妃選びの話題で花盛り。
年頃のご令嬢のいる貴族にはもれなく次のお茶会の招待状が届いている。
これをご辞退すれば、皇子妃の候補を辞退するという意味。
「あなたになら皇子妃の座を奪われても納得できるのに!」
「私もよ。正々堂々戦いましょうよ!」
「お父様にももうそのようにお願いしているの」
「元孤児だっていう、心無いやっかみのせいね?」
「そんなの気にすることありませんわ! 影口を言うあの令嬢たちよりあなたは遥かに素敵なんですもの」
見渡すと、四人がそれぞれにはっきりと伝えてくれている。
孤児だったなんてことは私たちの友情にはなんの障害にもならないいと。
うれしい……。
私にとっては、みなさんの気持ち、それだけで本当にうれしいの。
でも、こんな日が来るんじゃないかとは思っていた。
今日私は、ずっと四人にはいつか打ち明けようと思っていたことを話すつもり。
カロージェロが遠慮がちな口を開いた。
「ミラ、なにか思いつめているんじゃない……?」
「心配事があるなら話してみろよ。俺たち、なんでも聞くからさ」
バルトロメーオもうなづく。
覚悟を決めて、息を吸った……。
「あのね、私、前世の記憶があるの……」
「えっ……?」
「ぜん……?」
「前世の、記憶……?」
「え、なん……?」
思った通り、訳がわからないという顔つきの四人……。
当たり前ですわよね、こんな突拍子もない話。
私はを包み隠さずすべてを話した。
セントライト王国で終えた一回目の人生……。
次第にみなさんの顔が驚きや混乱、そして最後には惑いを伴う苦悶や同情に変わる。
「そ、それじゃあ、ミラは、本当にミラ・サーフォネス嬢だったのか……?」
「し、信じられない……、横暴すぎるわ……」
「ミラ、つ、辛かったね……」
「話には聞いていたけれど、セントライト王国の失墜って、そういうことだったのね……」
え……?
あ、あら……、みなさん……信じて、くださるの……?
思いもよらず飲み込みのいい反応ですわ……。
「……そうか、なんかいろいろ附に落ちたぞ……」
「許せない、アドルフ皇子、許せないわ……!」
「ミラ……、つ、辛かったよね……、ううっ……」
「ちょっと、カロージェロ、なに泣いているのよ」
「だって……、ううっ……!」
「み、みなさん……、こんな話、本当に信じてくれるの……?」
四人が一斉に私を見た。
「ミラは俺たちの仲間だ、信じるに決まっているだろ!」
「当たり前よ! 私はあなたの親友なんだから!」
「ううぅ、僕も、信じるよ……!」
「ええ、私もよ。だって、このメゾシニシスタ王国における五つの美徳を持つ五大伯爵家として、私たちを引き上げてくれたのは、紛れもなくミラだもの!」
みなさん、ありがとう……!
そう、今や、私たちはこの国での五つの美徳の象徴として注目を浴びるまでになっている。
四人と初めて会ったあの日から、四人はそれぞれに自分たちの長所と短所に目を向けるようになった。
そして、それは各々にいい影響を及ぼしただけでなく、次第に派生していった。
それは、彼らがもともと持っていた徳、そのもの。
アルベルティーナが思ったままに口を開いた。
「でも、それならますますミラは王家に入るべきなんじゃなくて?」
「私の中にあるこの『誓い』の力は、本当にその器のある人に渡さなければならないの。
お父様やお兄様は、アドルフ様にこの真心を受け取っていただけなかったのは、アドルフ様にその器がなかったからだとおっしゃっていたわ。
だから、皇子という立場だけで、私は結婚したくない。同じ間違いを犯したくないの。
今度こそはきっとこの力を捧げるにふさわしい方に、この真心を捧げなければいけないと思うの……」
「そうだったのね、納得したわ……。私、あなたの気持ちを尊重する。あなたなら必ずいい方と巡り合えるわよ……!」
「ヴァレンティーノ皇子殿下のことは、私かジュスティーナに任せておいて!」
「ふふっ、心強いわ。私、ふたりに出会えて本当によかったと思っているのよ。
社交界では私がやっかみや罵詈雑言に囲まれていると、いつも何倍にもして返してくれて……。
私では、言いたいことの半分もいえないんですもの」
「それが私とジュスティーナですもの」
「んふっ、この私を論破できる人間なんて、この国にはそうはいなくてよ!」
「バルトロメーオとカロージェロも、いつも体を張って守ってくれてありがとう。
お父様やお兄様がいないときに限って見知らぬ方からしつこく声をかけられたり絡まれたりすると、本当に困ってしまうの。
ふたりの正義感と友情にはいつも助けられているわ」
「それは単にあなたに他の虫を寄せ付けたくないだけの、浅はかな下心なのよ、ミラ」
「そうそう、巷じゃ黒バラの番犬たちって呼ばれているんだから」
「……よ、余計なことを言うな!」
「僕は役に立ててうれしいよ……!」
バルトロメーオとカロージェロが、それぞれに青年らしい情熱で頬を染めている。
若者らしくてとても素敵。
だけど、出会ったときすでに歳の差があったせいか、ふたりのことはいまだに男性というよりは親友という気持ちが強い。
けれど、この真心を捧げる相手がふたりのうちどちらかでも、私は驚かない。
だって、ここにいる四人が四人とも、素晴らしい人だから……!
ジュスティーナが突然改まった。
「ねぇあの……、ミラ、生まれ変わりという話を聞いて、私どうしても聞いてみたいことがあるんだけど……」
「なんでも聞いて。ここにいる四人にはもうなにひとつ隠し事はないわ」
「本当? じゃあ、その、『誓い』を暗唱すると見える光って、私たちにも見せてくれたり……する?」
「ええ、実はそのことなんだけど……」
実は、今日の打ち明け話はすでにお父様たちに相談済み。
つまり、『誓い』についてお父様たちは可能性を試してみてもいいとおっしゃっているの。
「お父様たちとも話し合ったのだけれど、ここにいる四人に『誓い』の言葉を授けたいと思うの」
「え……っ!?」
「さ、授ける……って?」
「ぼ、僕たちに?」
「えっ……、でも『誓い』はセントライト王国の門外不出じゃ……!?」
『誓い』は絶対王と五大伯爵家のみが知る、国防の秘密。
でも、すでに『誓い』は破られた……。
セントライト王国には今はもう、第二皇子妃のリサの出身であるシンセリティ伯爵家しか残っていない。
その他の伯爵家はすでに王家を見放して国外へ出てしまったのだ。
こうなってしまった以上『誓い』の力はどう使うべきなのか……。
これが、プレモロジータ家の家族みんなで時間をかけて考えに考えた結果。
「ここにいるみなさんなら、きっと『誓い』を正しく引き継いでくれると思うの。
バルトロメーオは正義の心、アルベルティーナは礼儀、ジュスティーナは智慧、カロージェロは誠実な心。
ひとりひとり、我がプレモロジータ家と同じように、それぞれ大切な真心を持っていますわ。
だから、ひょっとしたら、みなさんにも『誓い』の光が灯るかも知れないと、そう思っているの……」
「お、俺たちが……!?」
「私たちにも、そんな力が……?」
「ち、『誓い』を僕らが引き継ぐ……!?」
「そんなことが、本当にできるの……?」
四様に驚きに揺れる。
私にはなぜか、確信のようなものがある……。
理由を問われてもわからない。
ただ、四人といるときの感覚は、リサと一緒にいるときの感覚によく似ているの。
「もし、光が灯らなくても、それは真心がないということではありませんの。
『誓い』は捧げた者が亡くなると、同じ家の誰かの元に戻ってくるものなのです。
だから、自分がだめだったとしても、家族や子孫の誰かに『誓い』の力が巡っていくの。
……どうかしら……? みなさんならきっと受けてくれるんじゃないかと思っているのだけど……」
「お、俺は、やる!」
「わっ、私もよ!」
「僕も!」
「こんな名誉なこと、享けなかったら一生後悔するわ……!」
よかった……! 四人ならきっと、そういってくれると思っていたの!
込み入りすぎた話のお陰で、お茶にふさわしい時間はすっかり過ぎ去っていた。
「それじゃあ、次に集まるのは一週間後、場所はユニコーン邸だな!」
「王宮のお茶会の翌日ね! 次ぎ会うときは、皇子の婚約者様かもしれなくってよ!」
「な、なんか、緊張するなぁ……」
「そうでしょうとも、今のうちに私に恩を売っておくといいわよ、カロージェロ」
「カロージェロは『誓い』を授かることに緊張するって言ったのよ。本当にあなたってば、もっと行間を読みなさいよ」
「わ、わかっていたわよ、それくらい! 冗談でいったのよ!」
「ほんとかしら~」
「本当よ!」
「ほんとかしら~」
「そうかしら~」
バルトロメーオとカロージェロがジュスティーナの声色をまねた。
アルベルティーナが頬を染めて三人をねめつける。
「もうっ、皇子妃に選ばれたら、見てなさいよっ!」
くくく、と低い笑い声を立てる三人。
四人の様子がおかしくて、笑ってしまうわ……!
この四人といると、本当にいつも笑顔でいられる。
そして、心は太陽のように温かいの……。
ヴァレンティーノ皇子殿下に会うことがあったら、進言して差しあげたい。
アルベルティーナと、ジュスティーナ。
どちらも間違いなく、妃に相応しい女性に間違いございません、と。
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