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仁ある所に全ての徳集まる(9)
しおりを挟むいつの間にか集まって人の輪で、サジェッツア伯爵とシンチェリタ伯爵が、我が子に向かって神妙な顔つきを見せている。
気が付くと、お父様とお母様、お兄様とお姉様が私のそばに来ていた。
「ミラ、その手首はどうしたんだい?」
「あ、これは……」
「も、申し訳ありません! わ、私のせいですわ!」
「私も……、本当に申し訳ありませんでした!」
アルベルティーナとジュスティーナ様が謝ると、続いてコルテジア伯爵とサジェッツア伯爵が頭を下げに来た。
気にしていないので大げさにしないで下さいと言うと、伯爵たちがそれぞれにホッと息をつく。
周りに向かってコルテジア伯爵が声をかけた。
「みなさん、お騒がせして申し訳ありませんでした……。お気を取り直して、どうぞご歓談ください」
やれやれとばかりに人の波が去っていく。
後に残ったのは、メゾシニシスタ王国に現存する五つの伯爵家と、その子たち……。
親同士が申し合わせたようなため息。
「いつもながら申し訳ない、ジュスティッツィア伯……」
「いえ、こちらも目を離した隙を突かれて……。バルトロメーオは今帰らせる」
伯爵に背中を押されたバルトロメーオ・ジュスティッツィア様にすかさず寄り添ったカロージェロ・シンチェリタ様。
その唇が、僕も一緒に帰るよ、と。
そうなのね……。
このふたりは強い友情で結ばれているのだわ……。
わたしはふたりを見送りにいった。
「バルトロメーオ・ジュスティッツィア様、カロージェロ・シンチェリタ様。
今日はありがとうございました。お会いできて光栄でしたわ」
「いいんだ……。別に気を使ってくれなくても。俺はなぜかいつもこうなんだ。ジュスティッツィア家の問題児だから……」
「ぼ、僕もいつも影みたいに思われて、誰の目にも止まらないような存在だから……」
「……あら、私にはそんなふうには見えませんでしたわ。
バルトロメーオ・ジュスティッツィア様は勇敢な義の徳を持っていらっしゃるし、カロージェロ・シンチェリタ様はさりげない信の徳を備えていらっしゃるわ。
どちらも得難い素晴らしい美徳ですのに、どうしてご自身でそれを認めて差し上げないのですか?」
バルトロメーオ・ジュスティッツィア様とカロージェロ・シンチェリタ様が目を丸くして、一瞬にして固まった。
アルベルティーナとジュスティーナ様は、びっくりしたように顔を見合わせている。
大人たちも顔を見合わせる。
あら……、皆さん気付いていなかったのかしら……?
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