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1/Train of Thought
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◇
生徒会室から抜け出して、そうして向かった先の物理室に伊万里はいなかった。
別に、彼女がいることに対して期待をしていたわけではない。いてもいなくても俺の心境が変わるわけでもないし、俺がこれから摂る食事の味が変わるわけでもない。
だから、どうでもいい。
どうでもいい。
どうでもいい。
俺は、入り口近くの座席に腰を下ろして、手元に持っていたポスター、合わせて作ってもらった弁当を置く。手に持っていた時は軽い感触だったのに、置いてみると重さをより実感して、腕に入っていた力が抜ける。
溜息を吐きたくなる。でも、ため息を吐くのは憚られた。
俺はどうしてため息を憚るのだろう。ここには誰もいないはずなのに。俺はそれを認識していたはずなのに。
俺は、ルトの言葉に絆されている。何を絆されているのだろう。大して何も考えなくていい事柄なのに。
自己犠牲をする理由。俺はそもそも自己犠牲をしているのだろうか。俺にそれをしている自覚はあるか。それは存在していないように思う。だが、結局俺は行動をしている。何のために? 彼女のために? よくわからない。俺はどうして行動をしているんだろう。もう家に遅く帰る理由はない。それでも遅く帰る理由とはなんだろう。時間感覚が引き伸ばされたからだろうか。それだけが本当に所以しているのだろうか。それだけを言い訳として並べ立てても論理は成立するのだろうか。俺は彼女について、伊万里について何も思っていないはずなのに、どうして、俺は行動しているのだろう。その気持ちが自分自身で分からない。自分自身ではかることのできないおかしさがもどかしくてしようがない。どういうことなんだろう。俺はどうして行動をしている。自己犠牲をしている? 意味が、わからなかった。
チャイムが鳴り響いていた。でも、動く気にはならない。
俺は、屋上に昇った。
◇
屋上には誰もいなかった。
それもそのはずだ。今は授業が行われているはずなのだから、ここに生徒がいる理由は存在しない。存在してはならない。自分でさえも。
思考回路が虚をさまよっている。虚をさまよい続けている。屋上に来てまでやることはないのに、俺はそれでも屋上にでている。
あらゆることに理由をつけなければいけない。それなのに、行動の所以が見つからない。
俺は、携帯をポケットから引っ張り出した。
昨日目を逸らした携帯の通知欄。その文言を今に至るまで確認することができていない。
何を億劫にしているのだろう。その億劫はどこから所以しているのだろう。よくわからない。
俺は、力を入れたくはないものの、指を動かす。画面のメッセージを開いた。
『どっか出かけようよ』
そんな文言が、書いてあった。
◇
物理室にはいかなかった。今日は行く気分にはならなかった。
どことなく後ろめたさが背中に這いよって来る。別に、彼女は何もしていないし、俺も彼女に何もしていないのに。
俺は、携帯の画面を見つめながら、校外に出る。目的地へと歩き出した。
◇
「遅刻しないなんて意外」
開口一番、愛莉はそう言った。
「俺でもまともに来ることはある」
「中学の時、毎朝起こされていたのは誰でしょうね?」
からかうような声、顔で俺をとらえる彼女の視線はくすぐったさがある。
懐かしい感覚がする。数か月ほど前までは、ずっとこんな空気だったのだ。
それから逃避したのは、俺だ。そんな行動を選択したのは俺だ。
そんな後ろめたさがわだかまるのに、彼女はそんなことなど気にしないように振舞う。
「さて、どこにデートに行きましょうかね」
「……デート、なのか?」
「同年代。男女、一緒にお出かけ。そんなんデートですよ」
そう言われると、そんな感じがしないでもない。
彼女は未だに見慣れない高校の学生服を着こなしている。その彼女にどきまぎする感覚は覚えないものの、新鮮な感覚がある。
「それじゃあ、とりあえず行くか」
俺は彼女と一緒に待ち合わせ場所から歩きだした。
生徒会室から抜け出して、そうして向かった先の物理室に伊万里はいなかった。
別に、彼女がいることに対して期待をしていたわけではない。いてもいなくても俺の心境が変わるわけでもないし、俺がこれから摂る食事の味が変わるわけでもない。
だから、どうでもいい。
どうでもいい。
どうでもいい。
俺は、入り口近くの座席に腰を下ろして、手元に持っていたポスター、合わせて作ってもらった弁当を置く。手に持っていた時は軽い感触だったのに、置いてみると重さをより実感して、腕に入っていた力が抜ける。
溜息を吐きたくなる。でも、ため息を吐くのは憚られた。
俺はどうしてため息を憚るのだろう。ここには誰もいないはずなのに。俺はそれを認識していたはずなのに。
俺は、ルトの言葉に絆されている。何を絆されているのだろう。大して何も考えなくていい事柄なのに。
自己犠牲をする理由。俺はそもそも自己犠牲をしているのだろうか。俺にそれをしている自覚はあるか。それは存在していないように思う。だが、結局俺は行動をしている。何のために? 彼女のために? よくわからない。俺はどうして行動をしているんだろう。もう家に遅く帰る理由はない。それでも遅く帰る理由とはなんだろう。時間感覚が引き伸ばされたからだろうか。それだけが本当に所以しているのだろうか。それだけを言い訳として並べ立てても論理は成立するのだろうか。俺は彼女について、伊万里について何も思っていないはずなのに、どうして、俺は行動しているのだろう。その気持ちが自分自身で分からない。自分自身ではかることのできないおかしさがもどかしくてしようがない。どういうことなんだろう。俺はどうして行動をしている。自己犠牲をしている? 意味が、わからなかった。
チャイムが鳴り響いていた。でも、動く気にはならない。
俺は、屋上に昇った。
◇
屋上には誰もいなかった。
それもそのはずだ。今は授業が行われているはずなのだから、ここに生徒がいる理由は存在しない。存在してはならない。自分でさえも。
思考回路が虚をさまよっている。虚をさまよい続けている。屋上に来てまでやることはないのに、俺はそれでも屋上にでている。
あらゆることに理由をつけなければいけない。それなのに、行動の所以が見つからない。
俺は、携帯をポケットから引っ張り出した。
昨日目を逸らした携帯の通知欄。その文言を今に至るまで確認することができていない。
何を億劫にしているのだろう。その億劫はどこから所以しているのだろう。よくわからない。
俺は、力を入れたくはないものの、指を動かす。画面のメッセージを開いた。
『どっか出かけようよ』
そんな文言が、書いてあった。
◇
物理室にはいかなかった。今日は行く気分にはならなかった。
どことなく後ろめたさが背中に這いよって来る。別に、彼女は何もしていないし、俺も彼女に何もしていないのに。
俺は、携帯の画面を見つめながら、校外に出る。目的地へと歩き出した。
◇
「遅刻しないなんて意外」
開口一番、愛莉はそう言った。
「俺でもまともに来ることはある」
「中学の時、毎朝起こされていたのは誰でしょうね?」
からかうような声、顔で俺をとらえる彼女の視線はくすぐったさがある。
懐かしい感覚がする。数か月ほど前までは、ずっとこんな空気だったのだ。
それから逃避したのは、俺だ。そんな行動を選択したのは俺だ。
そんな後ろめたさがわだかまるのに、彼女はそんなことなど気にしないように振舞う。
「さて、どこにデートに行きましょうかね」
「……デート、なのか?」
「同年代。男女、一緒にお出かけ。そんなんデートですよ」
そう言われると、そんな感じがしないでもない。
彼女は未だに見慣れない高校の学生服を着こなしている。その彼女にどきまぎする感覚は覚えないものの、新鮮な感覚がある。
「それじゃあ、とりあえず行くか」
俺は彼女と一緒に待ち合わせ場所から歩きだした。
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