夢魔もどきの俺が自分のために人の認知を変えたら結果的にハーレム作れた ~ありふれた夢と世界と架空と何か~

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)

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第一章 夢魔もどきのありふれた生活

1-7 夢魔と人間のハーフ

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 夢、というものがある。

 夢といっても、子どもが心の中で抱くような将来に対する願望や野望、就職したい職業とかそういったものではない。俺は睡眠時に見る夢のことを言っている。

 人は眠るときに必ず夢を見る。まあ、疲労の度合いによりけり、夢の鮮明度は、その記憶についてはまばらではあるものの、それでも睡眠をしていれば、人は確実に夢を見る。他の動物がどうなのかは知らないけれど、とにかく人間は夢を見ることができるのだ。

 ──俺はそんな夢に

 他人の夢を覗いたり、その夢の中の登場人物になることができる。

 ある一定の手順を踏めば、確実に俺は人の夢に入り込むことができるのだ。

 母は俺のこの能力について『潜入眠《ダイブ》』と名付けた。中学生のときにそのことを少し格好いいと思ったのが印象に残っている。

 ……いや、どうでもいいかもしれない。

 というか、そもそも俺の家について説明しなければいけないような気もする。主に俺の母親に関して。

 父については特に言及することはない。少しばかり人よりも性欲が強い人間であり、それ以外に言えることはない。そのあたりで後述する俺の出生についてだいたい察してほしいような気もするが、その代わりに母については言及しなければいけないことがたくさんある。

 夢魔、というものがある。それは概念にしろ、存在にしろ、とにかくそういったものがある。

 夢魔について解説をするのならば、人の夢に入り込み、そうして人の精気を吸い取る悪魔、もしくは小悪魔というもの。今では薄い本や卑猥な漫画、もしくは大抵のフィクションでデフォルメ化をしている超自然的存在。ある程度、世間にも認知はされているように思う。

 そうして結論。俺の母は夢魔サキュバスであり、俺はである。

 サキュバスとは、性行為を通じて男性を誘惑するために、女性の形で夢の中に現れる超自然的存在のことを言う。
(Wikipediaより参照)

 そう、超自然的な存在。いわゆるファンタジーの世界観にありがちな存在。こういった存在が現実にいることを肯定するのは抵抗感があるけれど、実際に存在する限りは呑み込むしかないのだろう。

 ともかくとして、俺は夢魔であるサキュバスと人間のハーフである。俺はその夢魔の性質を半分持っているために、人の夢に入り込むことができる。

 かといって、俺に人の精気を吸い取ることはできない。そもそも本能も素養も俺には存在しない。人間という体を半分持ち合わせているゆえに、精気を摂取せずとも生きることができてしまっている。

 本来であれば接種しなければいけないものではあるのだが、接種しないことによる反動はなので、気にしなくてもいいだろうと思う。

 俺は、そんな夢魔の性質を使うことで、佐城の夢に入り込むことを日中に考えた。入り込んで何をするかと言えば、とりあえず佐城の悩んでいることを具体的に把握し、それを夢の方からアシストして解決をする、そんなことを発想したのだ。

 一定の手順はとても容易い。夢魔であれば、睡眠時に幽体離脱のような形で移動をして、寝ている人間の頭に入り込むらしいが、俺にそんな芸当はできない。

 俺の見る夢はすべて明晰夢という夢であるということを自覚した夢であり、幽体離脱というものに切り替えることはできない。もしかしたら方法はあるのかもしれないけれど、それを俺は知らない。

 それならばどうするか。

 単純に、、ということ。遺伝子を取り込むことで、物理的にその当人の夢を俺は探知することができるのだ。

 今回は髪の毛という選択をしたけれど、実際は体液であっても問題はない。でも、体液を取り込むことには抵抗感しか覚えない。だから、基本は髪の毛。……そもそも数人にしかやったことはないけれど。

 夢に潜るという行為は、言えば認知を変えたり、もしくはアイディアを植え付けたり。さらに言えば、彼女が俺の睡眠に対して寛容である認知を植え付けることができる。できてしまう。

 でも、それは一種の洗脳や催眠に近いのでやらない。やったこともないから試すこともしない。

 俺は人の夢に潜り込むことはできるものの、逆に言えばそれくらいしか行えない。

 入り込む人間の精神的防御が柔ければ、容易に世界観を変えることはできる。

 認知を利用して、そうして書き換えることができる。

 日中に創志と見た夢がその証明だ。

 だが、佐城は俺に対してそこまで精神的な防衛が柔らかいわけではないだろう。だから、容易にコントロールすることは難しい。

 とりあえず、佐城の夢に潜り込んでから、どう対処するべきなのかを考える。

 どうしようもない眠気が、夕方であるというのに俺を寝かそうとするけれど、なんとかテレビを見るなりやゲームなりをして時間を潰す。別に起きていなくてもいいけれど、夢の中での時間は緩やかに進むので、夢の中で途方もない時間を過ごすのは嫌だった。

 ……決行は夜。その時間までは起きていよう。

 そんな決意を胸に、俺はテレビの画面を見つめることにした。

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