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第一章 灰色の現実
1-EX2 尾行しようよ♡
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「いやあ、面白い話になってきたじゃないか」
「立花先生にとっては他人事ですもんね」
僕がそう悪態をつくと、立花先生は「そうでもないさ」と言葉を続ける。
「ほら、クラスメイトの仲を取り持つ、っていうのも教師の仕事として大事だろう?だから、君たちがそうやって仲を育んでくれる分には、こちらとしては嬉しいし面白いって感じなんだよ」
「はあ」
それを言うのならば魔法教室後のアフターケアを気にしてほしいのだけれど、といかそれのせいでそんな事になっているのだけれど。そんな思いを言葉に吐き出すのはやめておいた。というか話すことに体力を持っていきたくはなかった。
「……というか、こんな炎天下の日になんですか?僕、買い物行ったのでさっさと帰りたいんですけど」
「そんな邪険にしてくれるなよ。僕は君たちが仲良くしてくれるのが嬉しいし、面白い。でも、それが更に面白くなれば、それでいいというか、それがいいというか」
「……はあ、そうなんですね」
こんなに暑い日差しだというのに、立花先生はいつも通りに長袖の白衣を着て、そうして佇んでいる。見ているだけでも暑苦しい気分だ。
まともにやりあうだけ無駄だろう。適当な相槌を返してしまう。目上の人ではあるけれど、僕なりにこの人の対処方法についてはわかってきた。そこまで本気に相手をしない。それが、この人と関わる上での大事なことだと、僕はしっかり理解したのだ。
「というわけで、今から天原くん尾行しない?」
「なんで?!」
◇
「ほら、君たち最近会話はしてはいるけれど、それって上辺だけじゃない?相手のことを真に知って仲良くするためには、相手の裏側の方も知っておかなければいけないと思うんだよ。だから、尾行しようよ♡」
「猫撫で声で何を言っているんですか……。僕、もう帰りますから」
これ以上相手にして時間を無駄に、……というか太陽に体力を奪われたくない。
「おいおいおいつれないなぁ。君ならのってくれるものだと僕は信じていたのに」
「のるわけないでしょう……普通に犯罪じゃないですか」
「いいや犯罪なんかじゃないよ。それなら探偵業とか興信所なんか犯罪のオンパレードじゃないか。だから尾行は犯罪じゃない、リピートアフターミー?」
「言いませんよ……」
「……はあ、入校したての君は素直だったのに、どうしてこんなにノリの悪い人間になってしまったんだ……。やっぱり友達がいない人間ってノリが悪いんだな……」
「──なんですって?」
「や っ ぱ り 友 達 が い な い 人 間 っ て ノ リ が 悪 い ん だ な ぁ ! !」
あからさまに、大声で、誰かに聞こえるように、挑発するように。
……なんかだんだんイライラしてきた。
別にあれだから。友達がいないことを馬鹿にされて、それで怒っている訳ではないから。単純にこの人の性格が僕に苛立ちを覚えさせているだけだから。
「──そこまで言うならやってやろうじゃないですか」
「もういいよ。どうせノリ悪いし」
「やるって言ってるでしょ!!」
割と本気の怒声を僕から引き出したところで、立花先生はニヤッと笑う。
クソ、きっとこれは負け以上のなにものでもないのだろうな。
◇
「というかそもそも尾行するには、天原の位置を把握していなければならないのでは?」
僕が当然の疑問を口にすると、先生は指を振りながらちっちっちと声に出して挑発する。実際これを人にやられると、結構イラつく。
「僕に抜かりはないさ」
これを見てみなさい、と立花先生から渡される──スマートフォン。
「……これがどうかしたんですか?」
「……使い方わからないの?」
「持っていないので……」
「……そうかい」
なんでだろう。立花先生は憐れみの目で僕のことを見てくる。気のせいだと思いたい。
先生は手早くスマートフォンを操作して、そして一つの画面を僕に見せつける。地図のようなものと、そして赤い点。
「彼に発信器つけておいたんだ」
「普通にやっていることヤバいでしょ」
「大丈夫!絶対バレないから安心してくれたまえ!」
「僕が言いたいのはそういうことじゃないんですよ……」
……ツッコむのも疲れてきた。
とりあえず促されるままに、その地図の画面を見てみる。
「割と近い位置にいるようだね。行ってみよっか」
このペースに巻き込まれるのは精神的な苦痛を催すけれど仕方がない。僕は我慢しながら先生と一緒に歩いて行った。
「立花先生にとっては他人事ですもんね」
僕がそう悪態をつくと、立花先生は「そうでもないさ」と言葉を続ける。
「ほら、クラスメイトの仲を取り持つ、っていうのも教師の仕事として大事だろう?だから、君たちがそうやって仲を育んでくれる分には、こちらとしては嬉しいし面白いって感じなんだよ」
「はあ」
それを言うのならば魔法教室後のアフターケアを気にしてほしいのだけれど、といかそれのせいでそんな事になっているのだけれど。そんな思いを言葉に吐き出すのはやめておいた。というか話すことに体力を持っていきたくはなかった。
「……というか、こんな炎天下の日になんですか?僕、買い物行ったのでさっさと帰りたいんですけど」
「そんな邪険にしてくれるなよ。僕は君たちが仲良くしてくれるのが嬉しいし、面白い。でも、それが更に面白くなれば、それでいいというか、それがいいというか」
「……はあ、そうなんですね」
こんなに暑い日差しだというのに、立花先生はいつも通りに長袖の白衣を着て、そうして佇んでいる。見ているだけでも暑苦しい気分だ。
まともにやりあうだけ無駄だろう。適当な相槌を返してしまう。目上の人ではあるけれど、僕なりにこの人の対処方法についてはわかってきた。そこまで本気に相手をしない。それが、この人と関わる上での大事なことだと、僕はしっかり理解したのだ。
「というわけで、今から天原くん尾行しない?」
「なんで?!」
◇
「ほら、君たち最近会話はしてはいるけれど、それって上辺だけじゃない?相手のことを真に知って仲良くするためには、相手の裏側の方も知っておかなければいけないと思うんだよ。だから、尾行しようよ♡」
「猫撫で声で何を言っているんですか……。僕、もう帰りますから」
これ以上相手にして時間を無駄に、……というか太陽に体力を奪われたくない。
「おいおいおいつれないなぁ。君ならのってくれるものだと僕は信じていたのに」
「のるわけないでしょう……普通に犯罪じゃないですか」
「いいや犯罪なんかじゃないよ。それなら探偵業とか興信所なんか犯罪のオンパレードじゃないか。だから尾行は犯罪じゃない、リピートアフターミー?」
「言いませんよ……」
「……はあ、入校したての君は素直だったのに、どうしてこんなにノリの悪い人間になってしまったんだ……。やっぱり友達がいない人間ってノリが悪いんだな……」
「──なんですって?」
「や っ ぱ り 友 達 が い な い 人 間 っ て ノ リ が 悪 い ん だ な ぁ ! !」
あからさまに、大声で、誰かに聞こえるように、挑発するように。
……なんかだんだんイライラしてきた。
別にあれだから。友達がいないことを馬鹿にされて、それで怒っている訳ではないから。単純にこの人の性格が僕に苛立ちを覚えさせているだけだから。
「──そこまで言うならやってやろうじゃないですか」
「もういいよ。どうせノリ悪いし」
「やるって言ってるでしょ!!」
割と本気の怒声を僕から引き出したところで、立花先生はニヤッと笑う。
クソ、きっとこれは負け以上のなにものでもないのだろうな。
◇
「というかそもそも尾行するには、天原の位置を把握していなければならないのでは?」
僕が当然の疑問を口にすると、先生は指を振りながらちっちっちと声に出して挑発する。実際これを人にやられると、結構イラつく。
「僕に抜かりはないさ」
これを見てみなさい、と立花先生から渡される──スマートフォン。
「……これがどうかしたんですか?」
「……使い方わからないの?」
「持っていないので……」
「……そうかい」
なんでだろう。立花先生は憐れみの目で僕のことを見てくる。気のせいだと思いたい。
先生は手早くスマートフォンを操作して、そして一つの画面を僕に見せつける。地図のようなものと、そして赤い点。
「彼に発信器つけておいたんだ」
「普通にやっていることヤバいでしょ」
「大丈夫!絶対バレないから安心してくれたまえ!」
「僕が言いたいのはそういうことじゃないんですよ……」
……ツッコむのも疲れてきた。
とりあえず促されるままに、その地図の画面を見てみる。
「割と近い位置にいるようだね。行ってみよっか」
このペースに巻き込まれるのは精神的な苦痛を催すけれど仕方がない。僕は我慢しながら先生と一緒に歩いて行った。
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