〈はじめて〉の話。~片思いしていた同級生が深夜に訪ねてきた、からはじまる初体験の話~

カノカヤオ

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第4話

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「よいしょっと」
「うわっ」

灰谷がオレの腰を持ち上げて、膝の上に座らせた。
正面からガッチリ向かい合う。

いやいやちょっと…近いって。

灰谷はオレの腕をとり、自分の首に回させた。

ぎゃあっ、なんだコレなんだコレ。

灰谷はオレの腰に手を回す。

うわ~なんだコレ。
こ…恋人同士みたいなんだけど…。

「緊張すんなよ」
「…するよ」

灰谷はオレの方を見てニヤニヤ笑っている。
顔見れねえ~。
でもなんかスッゲエ嬉しそうなのは…わかる。

「つうか真島、オマエはじめてだよな」
「え?何が」
「こういうこと」
「…うん」
「女とも?」
「うん」
「そっか」

灰谷は嬉しそうな顔をした。

「灰谷…は?」
「ワリぃ。女とヤったことある」
「そっか…」

そりゃそうだよな。灰谷カッコいいし。
そっか…。

「でも、男ははじめてだし」
「うん」

灰谷がオレを見つめた。

「真島、これからのオレの全部、オマエにやるよ」
「全部?」
「うん」
「……それってこれからはオレとしかしないってこと?」
「うん」
「ホントに?」
「ああ」
「ホントにホント?」
「うん」

これからはオレとしかしない?そんなことあるのかな。
でも、のぞきこんだ灰谷の目に嘘はないように見えた。
少なくとも今この瞬間はそう思ってくれてるってこと。
灰谷がこんなこと言ってくれるなんて。
夢みたいだ。

「だからオマエも…真島のはじめてと全部、オレにくれよ」
「いいよ。灰谷にやるよ。オレなんかでよかったら、全部やるよ」
「…ホントにいいのか、あとでイヤだっていっても取り消しきかねえぞ」

オレは灰谷の顔を見つめた。
チャカすような言葉の中にどこか、真摯なものがあった。
オレは灰谷の目を見て答える。

「いいよ」

灰谷の目がちょっと潤んだように見えた。


「…約束な。じゃあ、口開けて」

え?口を開ける?なんで?と思っていたら、灰谷の長い指、親指と中指がオレの口の脇をキュッとはさんだ。

ん?

唇が少し開いたと思ったら舌が入ってきた。
ヌルリ、熱くてなめらかな灰谷の舌の感触。
オレの舌に絡みつく。

「んっっ…んっっ…」

オレの舌の表を裏を灰谷の舌が熱く舐めまわす。
口を塞がれて息ができない。
心臓がバクバクする。
鼻で…鼻で息しなきゃ。

グチャグチャと口の中をかき回される。
声にならない声がモレる。

「んふっ……んっ……」

灰谷の激しい舌の愛撫は続く。
ごくりごくりと喉の奥が鳴る。
唾液が…唾液が…灰谷の…オレの…。


ヤバイ……気持ちいい。キスってこんななの?
それとも灰谷がウマイだけなの?

「んっっ…んっっ…ふわ……」

トケる。トケるよ。
灰谷の首にしがみつく。
灰谷の髪の毛。灰谷のカラダ。灰谷の舌。

息継ぎするみたいに唇が離れた。
ハアハアと息が上がる。

気がつくとまた閉じてしまっていた目をゆっくりと開けばオレを見つめる灰谷。
その顔。
ゾクゾクする…オスの眼。
オレもこんな眼をしてるんだろうか。
オレが…オレがそんなに欲しいの?

灰谷の頭を引き寄せ、自分から唇を合わせる。
チュッと唇を吸うと開いた口に舌を入れる。
灰谷の舌先が小刻みに震えてオレの舌に応える。

「ん…んっ…」

鼻にかかった声がモレてしまう。
夢中になる。
夢中で灰谷の舌を吸う。吸われる。

心臓が踊る。カラダの中心が熱い。熱い。
頭がふっとぶ。

ふいにオレに熱く応えてくれていた灰谷の舌の動きが止まった。

ん?どうした灰谷。

唇に何度もキスをするが、応えてくれない。
腰に回されていた手がゆるんだ。
灰谷が顔を歪めるのが見えた、と思ったら、突然カラダを離し、顔をそむけた。

「…灰谷?」

オレの方を見ない。
突然甘い熱が消えてオレは戸惑う。

あれ…オレ…ヘタだった?
ガッツキすぎた?
で、引いちゃった?


「…いいよ、オレ。ダメだったんなら、これで充分だから」
「違う。オレ…」

何か言いたそうな顔をしてオレを見つめる灰谷。
その顔は少し泣きそうだった。

なんだよ。どうしたんだよ。
灰谷の頬にそっと手で触れる。
灰谷がオレの手をつかんで愛おしそうに頬ずりし、手のひらにキスをした。

「いや…ゆっくりしよう、真島。オレ、オマエのすべてを記憶したい」
「灰谷…」

灰谷が微笑んだ。

「もっと呼んでくれよ、オレの名前。あんまり呼んでくれなかったもんな」

「灰谷」

オレは呼ぶ。

「うん」

灰谷が答える。

「灰谷」
「おお」
「灰谷ぃ」
「なんだよ」

灰谷がオレをギュッと抱きしめて嬉しそうな顔をして笑った。

オレが呼べば灰谷が返事してくれるんだ。

「オレの名前も呼んでよ。オレのだって呼んでくれたことあんまりないじゃん」

今度は灰谷がちょっと恥ずかしそうな顔をしてオレの名を呼ぶ。

「真島」

こんなに近くで。

「うん」

オレは答える。灰谷の目を見て。

「真島」
「おお」
「マネすんな」
「マネすんな」
「つうかマネすんな」
「つうかマネすんなのマネすんな」

ククク、二人笑い合って額と額をくっつけた。
灰谷の笑顔。満面の笑顔。こんなに近くで。
嬉しいな。生きててよかったな、オレ。

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