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第142話 灰谷の告白
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「真島、ちょっと話さねえ?眠い?」
「ううん」
「うちの母ちゃんなんだけどさ」
灰谷が布団の上であぐらをかいた。
「久子母ちゃん?」
「うん。なんか、急に会社辞めて自分で事業始めるとか言い出してさ」
「お!いいじゃん。仕事できるんだし。そういう道もあるよな」
「ん~。まあ、それは別にいいんだけどさ……」
中々に口が重い。
なんだろう。
「……それでな。結婚するとか言い出して」
「結婚!」
これはきちんと聞かないと、と、オレはベッドの上に起き上がった。
「まあ、パートナーっていうか。そういうのができたのは良いと思うんだけどさ」
「え~いいじゃんいいじゃん。オマエの母ちゃん、カッコイイし。あの母ちゃんが認めた男だろ。間違いないって」
「ん~それがさ……」
なんだか歯切れが悪い。
これはもしかしてのもしかして……。
「何、灰谷、オマエまさか、母ちゃん獲られちゃう、みたいな」
「違えよ」
灰谷は本当にイヤそうな顔をした。
違うんだな。
「じゃあ、いいじゃん」
「それがさ……はあ~」
「なんだよ。もったいぶるなよ」
「相手、会社の後輩とかで」
「おう、年下?やるね~」
「んでさ……」
「おう」
「…んな、なんだよね」
「ん?何?」
「だから、女、なんだよな」
「ほう?」
オレがわからなかったとわかったのだろう。
灰谷はハッキリ言った。
「母ちゃんの相手、女、なんだよ」
「ああ……え~~!マジか」
「マジだ」
え?え?え?
それって……えー?
だから、えー?
「まあ結婚とかなんかは、ゆくゆくはって感じだって言ってたけど。そのぐらいの気持ちってカミングアウト受けた」
「おう~。……スゲエな」
「うん」
「ん~。……ファンキー母ちゃんやるね~」
「いや、ファンキーにも程があるだろ」
ん、でも、あれあれ?灰谷の母ちゃんってそっちの人だったっけ。
いや、でも灰谷がいるし……。
ん?
自分の事もあるし、どっからツッコんでいいかわからなかった。
とりあえず……。
「会ったことあんの?どんな人?美人?」
「一回、酔っ払った母ちゃんを送って来たことがあって。その時に挨拶ぐらい。感じは良かったけど。まあ、美人って言えば美人」
「ほう~。ん~。なんて言っていいやら」
「うん。まあ、オレもだから、そう言ったんだけど」
「なんて言っていいかわからないって?」
「うん」
「まあ、正直なとこだよな」
「うん……」
灰谷は腕を組んで黙った。
オレは灰谷がまた話し始めるのを待った。
「まあその後、おめでとうとは言ったんだけど」
「うん」
「良い人が見つかって良かったって」
「ああ。よく言ったな」
「ん?」
灰谷が顔を上げてオレを見た。
「エライよ灰谷」
「…うん」
灰谷は、ほんの少しテレた顔をした。
「少し話してさ。オレの父親の事とか。普段ほとんどしないんだけどな」
「うん」
「女手一つで苦労してオレを育てて来たんだし、これからは母ちゃんの人生だしなとかも思ってさ」
「うん」
「でもやっぱ多少複雑な気持ちでは、ある。母ちゃんには言えねえけど」
「うん。そりゃあそうだ」
だよな。
……で、そこに持ってきてオレだろ。
なんか、申し訳ない気持ちになって来た。
「でもまあ、母ちゃん、ホントにその人の事好きみたいでさ」
「うん」
「それが一番かなって。……ってまあ、それだけなんだけど」
「うん」
「でもやっぱ。驚いたし」
「うん」
「なのに……真島はいねえしさ」
灰谷はちょっとスネた子供のような顔をした。
「ああ」
「もう…」
「うん。悪かった」
そんな時にそばにいなくて悪かったと思った。
オレたちは見つめ合った。
先に、なぜかちょっとまぶしそうな顔をして目をそらしたのは灰谷の方だった。
なんだ?
「で、母ちゃん、節子にさっそく話してさ」
「え?うちの母ちゃんに?」
「うん。で、節子がごちそう作るから、顔合わせも兼ねてみんなで食事しようって」
「お~。いいじゃん」
「いやいいけど。一人で会うよりはいいけど」
母ちゃん、灰谷とおばさんの事を思って言い出したんだろうな、と思った。
「オレどんな顔してればいいんだよ。母ちゃんとその彼女だぜ」
「あ~わかるわ~」
「それでなくても母ちゃん、頭がお花畑になってて、ミネミネ言ってんのに」
「ミネって言うの?相手」
「ああ。峰岸だからミネなんじゃね?聞かないけど」
「なるほど」
「この間もパスタ作ってやったら、ミネに食べさせた~い、だからな」
「ああ」
「しまいにはミネも料理ウマイから、オレと並んで作ってるのをつまみに飲んだら最高。嫁と息子~とか言ってたしな」
やっぱちょっとスネてるか?灰谷。
自分では気がついてないみたいだけど。
普段は、一人でもオレは平気、みたいな顔してるのに。
「……なんだよ」
マズイ。ニヤけていたのがバレてしまう。
「まあまあ。別に取り繕わなくても。そのまんまでいればいいじゃん」
「そのまんまって」
「いいんだよ。灰谷はそのまんま、いつもの灰谷でいれば。ちゃんと母ちゃんとその人に通じるよ」
「そうかな」
「そうだって」
「……うん」
言って灰谷は小さくうなずいた。
オレの言葉にうなずく灰谷。
うん、だって。うん、だって。
カ~ワイイ~。
あ~なんだこれ。
今まで見えてなかったカワイさが見えてきたぞ。
ヤバイ。
抱きしめてえ~。
けどそうするわけにもいかないんだよな。
まさにニュー地獄。
話変えよう。
「あ~パスタって、ナスとトマトとベーコンのやつ?ニンニクが効いた」
「うん」
「オレも食べたいわ」
「おう。今度つくってやるわ。大葉は多めだろ」
「うん」
このわかってる感…ヤバイ。
「ううん」
「うちの母ちゃんなんだけどさ」
灰谷が布団の上であぐらをかいた。
「久子母ちゃん?」
「うん。なんか、急に会社辞めて自分で事業始めるとか言い出してさ」
「お!いいじゃん。仕事できるんだし。そういう道もあるよな」
「ん~。まあ、それは別にいいんだけどさ……」
中々に口が重い。
なんだろう。
「……それでな。結婚するとか言い出して」
「結婚!」
これはきちんと聞かないと、と、オレはベッドの上に起き上がった。
「まあ、パートナーっていうか。そういうのができたのは良いと思うんだけどさ」
「え~いいじゃんいいじゃん。オマエの母ちゃん、カッコイイし。あの母ちゃんが認めた男だろ。間違いないって」
「ん~それがさ……」
なんだか歯切れが悪い。
これはもしかしてのもしかして……。
「何、灰谷、オマエまさか、母ちゃん獲られちゃう、みたいな」
「違えよ」
灰谷は本当にイヤそうな顔をした。
違うんだな。
「じゃあ、いいじゃん」
「それがさ……はあ~」
「なんだよ。もったいぶるなよ」
「相手、会社の後輩とかで」
「おう、年下?やるね~」
「んでさ……」
「おう」
「…んな、なんだよね」
「ん?何?」
「だから、女、なんだよな」
「ほう?」
オレがわからなかったとわかったのだろう。
灰谷はハッキリ言った。
「母ちゃんの相手、女、なんだよ」
「ああ……え~~!マジか」
「マジだ」
え?え?え?
それって……えー?
だから、えー?
「まあ結婚とかなんかは、ゆくゆくはって感じだって言ってたけど。そのぐらいの気持ちってカミングアウト受けた」
「おう~。……スゲエな」
「うん」
「ん~。……ファンキー母ちゃんやるね~」
「いや、ファンキーにも程があるだろ」
ん、でも、あれあれ?灰谷の母ちゃんってそっちの人だったっけ。
いや、でも灰谷がいるし……。
ん?
自分の事もあるし、どっからツッコんでいいかわからなかった。
とりあえず……。
「会ったことあんの?どんな人?美人?」
「一回、酔っ払った母ちゃんを送って来たことがあって。その時に挨拶ぐらい。感じは良かったけど。まあ、美人って言えば美人」
「ほう~。ん~。なんて言っていいやら」
「うん。まあ、オレもだから、そう言ったんだけど」
「なんて言っていいかわからないって?」
「うん」
「まあ、正直なとこだよな」
「うん……」
灰谷は腕を組んで黙った。
オレは灰谷がまた話し始めるのを待った。
「まあその後、おめでとうとは言ったんだけど」
「うん」
「良い人が見つかって良かったって」
「ああ。よく言ったな」
「ん?」
灰谷が顔を上げてオレを見た。
「エライよ灰谷」
「…うん」
灰谷は、ほんの少しテレた顔をした。
「少し話してさ。オレの父親の事とか。普段ほとんどしないんだけどな」
「うん」
「女手一つで苦労してオレを育てて来たんだし、これからは母ちゃんの人生だしなとかも思ってさ」
「うん」
「でもやっぱ多少複雑な気持ちでは、ある。母ちゃんには言えねえけど」
「うん。そりゃあそうだ」
だよな。
……で、そこに持ってきてオレだろ。
なんか、申し訳ない気持ちになって来た。
「でもまあ、母ちゃん、ホントにその人の事好きみたいでさ」
「うん」
「それが一番かなって。……ってまあ、それだけなんだけど」
「うん」
「でもやっぱ。驚いたし」
「うん」
「なのに……真島はいねえしさ」
灰谷はちょっとスネた子供のような顔をした。
「ああ」
「もう…」
「うん。悪かった」
そんな時にそばにいなくて悪かったと思った。
オレたちは見つめ合った。
先に、なぜかちょっとまぶしそうな顔をして目をそらしたのは灰谷の方だった。
なんだ?
「で、母ちゃん、節子にさっそく話してさ」
「え?うちの母ちゃんに?」
「うん。で、節子がごちそう作るから、顔合わせも兼ねてみんなで食事しようって」
「お~。いいじゃん」
「いやいいけど。一人で会うよりはいいけど」
母ちゃん、灰谷とおばさんの事を思って言い出したんだろうな、と思った。
「オレどんな顔してればいいんだよ。母ちゃんとその彼女だぜ」
「あ~わかるわ~」
「それでなくても母ちゃん、頭がお花畑になってて、ミネミネ言ってんのに」
「ミネって言うの?相手」
「ああ。峰岸だからミネなんじゃね?聞かないけど」
「なるほど」
「この間もパスタ作ってやったら、ミネに食べさせた~い、だからな」
「ああ」
「しまいにはミネも料理ウマイから、オレと並んで作ってるのをつまみに飲んだら最高。嫁と息子~とか言ってたしな」
やっぱちょっとスネてるか?灰谷。
自分では気がついてないみたいだけど。
普段は、一人でもオレは平気、みたいな顔してるのに。
「……なんだよ」
マズイ。ニヤけていたのがバレてしまう。
「まあまあ。別に取り繕わなくても。そのまんまでいればいいじゃん」
「そのまんまって」
「いいんだよ。灰谷はそのまんま、いつもの灰谷でいれば。ちゃんと母ちゃんとその人に通じるよ」
「そうかな」
「そうだって」
「……うん」
言って灰谷は小さくうなずいた。
オレの言葉にうなずく灰谷。
うん、だって。うん、だって。
カ~ワイイ~。
あ~なんだこれ。
今まで見えてなかったカワイさが見えてきたぞ。
ヤバイ。
抱きしめてえ~。
けどそうするわけにもいかないんだよな。
まさにニュー地獄。
話変えよう。
「あ~パスタって、ナスとトマトとベーコンのやつ?ニンニクが効いた」
「うん」
「オレも食べたいわ」
「おう。今度つくってやるわ。大葉は多めだろ」
「うん」
このわかってる感…ヤバイ。
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